昭和58年(1983)春、83歳のおしんは自ら築き上げたスーパーマーケットの社長の座を息子に譲って失そうします。行き先は故郷の山形、おしんがこれまでの人生を振り返る形でドラマが始まります。明治の終わり頃、雪深い山形の山奥の農家に生まれたおしんは、両親の愛に包まれながらも毎日が極貧との闘いでした。明治から大正、そして昭和へ、時代とともにたくましく、しなやかに生きた女の一生を描く物語のプロローグです
加賀屋に奉公に来て7年、おしんは立派な女中頭に成長しました。16歳になったおしんに縁談が持ち上がり、酒田の女学校に通う加代は「好きでもない男と結婚するのは間違い」と猛反対。ある日、おしんと加代は刑事に追われる浩太に出会います。加代が先に好意を示しましたが、おしんもまた、小作を救う農民運動に奔走する浩太にひかれていきます。そして、浩太からおしんに来た手紙を手にした加代が、おしんに絶交を言い渡します。
おしんは父・作造の最期を看取り、結婚の報告をしようと酒田の加賀屋に寄りました。そこで、加代の不幸な結婚生活を見て、改めて竜三との暮らしを大切にしようと決意します。帰京すると、染子をはじめカフェの女給たちが結婚パーティを開いてくれました。初めて竜三とダンスを踊ったおしんは、この幸福が一生続いてほしいと願います。しかし、世界大戦のあとの不景気が、田倉商会とおしん夫婦にも、暗い影を投げかけていました。
おしんは二度目の出産を控えて黙々と働き続けていましたが、東京へ戻ろうとしていたことが竜三の母・清に知れ、「出て行け!」と激しい剣幕に会います。思いがけなく竜三がおしんをかばい、おしんは夫の思いやりさえあれば我慢できると心を強くしました。ところが、竜三の妹・篤子が出産で里帰りし、「ひとつ家の中にお産が二つあると、どちらかが欠ける」という迷信を持ち出して、清はおしんを家から追い出そうとしていたのです。
加賀屋の倒産以来、消息不明だった加代は東京のカフェで働いていました。加代の両親が死んだと聞き、おしんは加代と息子の希望(のぞみ)を伊勢に連れ帰ろうとします。しかし、加代の身うけ金千円がなく、せめて希望だけでもと再びカフェを訪ねると、加代は血を吐いて死んでいました。おしんは希望を引き取り、伊勢の海の見える丘に、加賀屋の三人の墓を作りました。半年後、浩太は、加代の墓前で特高に捕まってしまいます。
昭和25年(1950)、おしんはひさの援助で魚の行商を再び始め、小さな店を持つまでになりました。おしんの戦争は、家出した養女・初子の幸せを見届けるまで終わりません。露天商の親分・健や髪結いの師匠・たかの協力で東京にある外人相手のカフェで働き、おしんに毎月送金していた初子を見つけ伊勢に連れ戻し、家族で新しい店を盛り立てようとします。しかし養子の希望(のぞみ)まで陶工になりたいと言い出します。
仁の後輩の辰則は、アメリカのスーパーマーケットで店員をした経験があり、役に立ちたいと言うのです。その言葉通り、辰則は陰ひなたなく働く勤勉な青年でした。仁は妹の禎と辰則の結婚話を持ち出します。禎は憤慨して大学に戻ったものの、まぶたに浮かぶのは懸命に働く母や辰則の姿でした。禎は母を助けようと退学して家に戻り、自分から辰則にプロポーズしますが…。一方、道子が長男・剛を産みました。おしんにとって初孫です。