頼みの輸出では新興国のライバルとの激しいコスト競争にさらされ、人口の減少によって国内消費も冷え込む日本経済。この閉塞感を打ち破り、企業や社会を活気づける大きなカギになると熱い注目を集めているのが、働く女性たちの活躍=“ウーマノミクス”(女性経済)だ。他の先進国に比べて、結婚や出産を機に仕事を辞めてしまう女性が非常に多く、“埋もれた資源”とも言われる日本の女性たち。女性の就労が拡大すれば、生活者の視点から斬新で多様なサービスや商品を生み出して企業に活力を与え、さらに手にした収入で消費をけん引するという“ウーマノミクス旋風”を巻き起こすと期待されている。ヨーロッパでは、女性が働きやすい職場作りに真剣に取り組むことによって、男性もワークライフ・バランスが取れるようになり、さらに出生率も上昇するという好循環が生まれている。日本でも始まった“ウーマノミクス”の最前線に迫り、その可能性を探る。
東日本大震災から2週間以上たった今も、現地には支援の手が十分に届かず、被災者は厳しい避難生活を強いられている。こうした状況の背景には、“超広域災害”の深刻な影響がある。今回の震災では、多くの自治体で役所が被災。道路や通信の寸断も加わって、総合調整役の県が市町村をバックアップする仕組みも機能不全に陥った。また、阪神淡路大震災以降、大きな力となってきたボランティアの活動も壁に直面した。従来フットワークの軽さが売りだったが、被災地があまりにも広く、交通手段や現地の情報も不足し、活動が困難になっている。私たちは超広域災害にどう向き合っていけばよいのか、自治体とボランティアへの密着取材から探る。
被災地の外で暮らす多くの人たちが「自分も何かの役に立ちたい!」と思いながら、「被災地に行っても邪魔になるだけではないか」と無力感を募らせる。そんな中、注目されているのが、ツイッターやフェイスブックなどの「ソーシャルメディア」を使った、これまでにない新たな支援だ。ツイッターでの安否情報、聴覚障害者へのインターネットでの手話放送、被災地への救援物資の運搬プロジェクト、節電の大規模な呼びかけ運動など、様々な取り組みが被災地の外にいる人たちによって自主的に生み出され、輪を広げている。国や行政・大手企業を批判したり任せっきりにしたりするのではなく、自らの発想で自分たちにできることをやろうというのだ。番組では、被災地の外側ではじまったソーシャル支援の最前線を追う。
史上最大規模の震災からおよそ3週間。浮き彫りになってきたのが被災地の企業活動の壊滅的打撃だ。電気・自動車など、大手メーカーの工場の多くが、電力や水に恵まれた東北地方に集中していたが、宮城県や福島県などでは、操業再開をめざしてメーカーが作業を進めている。一方、東北・関東以外の企業にも深刻な陰を落とし始めているのが計画停電だ。連続運転を基本とする工場が多い日本の物作りの現場では、停電準備や立ち上げにそれぞれ時間がかかるため、数時間の停電でも操業に大きな支障をきたしてしまうのだ。まだ本格的に報じられていない企業活動のダメージについて、現状を伝えるとともに、今後を展望する。
長引く避難生活のストレスと親族を亡くした悲しみ。そして、離れない大津波への恐怖心…。東日本大震災をかろうじて生き延びた人々が今、新たな危機に直面している。阪神大震災以降、研究が進んできた「災害時の心のケア」。専門家は、地震から半月が過ぎた今こそ、対策が必要だと訴えている。災害当時の興奮状態から現実に帰った被災者は、被災時の恐怖や将来への不安に襲われるという。避難の時間のほとんどない地震とは違い、今回の大津波では、避難行動によって生死が分かれた。「助けられたのに…」「一人で逃げたことを後悔している」。今回の災害、生き残った人たちに特徴的なのが、自責の言葉だ。番組では、動き出した専門家のカウンセリングに同行。被災者の心の傷の手当てにはどのような取り組みが必要なのか考える。
自らをどじょうにたとえ泥臭く政治を動かすと宣言した野田総理大臣。最初の試金石となっているのが震災復興を柱とした今年度の第3次補正予算案と復興増税を含めた関連法案。民主党は自民・公明両党との協議を進めているが、意見の隔たりがあり、先行きは見えない。政治の停滞に厳しい目が向けられる中、与野党協力の足がかりは築けるのか。番組では復興増税をめぐる駆け引きの最前線を追うとともに、スタジオでは民主・自民両党のキーマンにインタビュー。野田政権の発足から2か月、政治の先行きを展望する。
黒毛和牛のオーナーを募り、高利の配当をアピールして7万人を超える市民から出資金を集めたまま倒産した『安愚楽牧場』(栃木・那須塩原)。負債額は4300億円にのぼり、出資金が戻ってくる目処もたっていない。今、全国12カ所で被害対策弁護団が結成。弁護団は、徹底的に返済を求めていく構えだ。被害は消費者だけでなく、畜産農家にも広がっている。14万頭の黒毛和牛を保有するという安愚楽牧場。牛を預かって育ててきた300軒余りの畜産農家が「廃業せざるを得ない」と窮状を訴える。7万人の消費者に被害が及んでいる「黒毛和牛オーナー制度」はなぜ成り立ってきたのか、日本の黒毛和牛のシェア20%を占めるとされる「安愚楽牧場」の破たんの深層に迫る。
福島県内の農家たちが、国や自治体に頼らず、自ら放射能汚染の測定と農地の除染に取り組み、農業再生を図ろうと立ち上がった。カリウムやゼオライト、ホタテ貝の粉末など「除染」に効果があるとされる五種類の試験資材を土に散布し、綿密にデータを取り続ける須賀川市の農業生産法人。研究者チームと組んで、土の成分の構成による汚染の実態を明らかにし、水の浄化や土壌改良で、安全な作物が作れる農地にしようとする二本松市の農家たち。国は、飯舘村など高濃度汚染地域で表土を削り取るなどの除染の研究を行っている。しかしこうした農家たちは、汚染元年である今、指示を待つのではなく、自分たちで自分たちの土地に適した「除染」法を見出さなければ手遅れになるのではないかという強い危機感を持っているのだ。何十年もかけて丹精こめて作り上げてきた土を手放さずに、いかに放射能の汚染を取り除き、安全な農作物を消費者に届けることができるのか。日本人は放射能汚染にどう立ち向かっていくべきなのか。動き出した農家たちの格闘を通して探る。
わずか3分程で津波の高さを予測する気象庁の警報システムが、東日本大震災では、実際よりも遙かに小さな予測値を伝え、多くの人々を危機にさらした。検証からは、巨大地震の際には、迅速さと正確さを両立させようとする事が、かえって危険につながるという限界が見えてきた。気象庁では、今、M8以上の地震では、科学的な根拠が薄くても、「巨大」などの表現を使い、警報を出す事を検討している。「警報の信用性が失われる」という慎重論もある中での、大きな方針の転換である。また、気象庁の警報をもとに、防災無線で住民に避難を呼びかけてきた自治体でも、“逃げる気になる”呼びかけ方とは何かを模索し始めている。新たな警報や呼びかけは、人々の命を救えるのか。一人でも多くの命を救う『情報』とは何かを考える。
TPP(=環太平洋パートナーシップ協定)交渉参加はどうなるのか。国論を二分したこの問題にまもなく政治決断が下される。関税原則撤廃で「地域の存続」や「食の安全保障」に広がる懸念。一方で、野田総理大臣の背中を押す「経済界」そして、「アメリカ政府」。TPPは日本再生の礎になるのか?それともアメリカの国家戦略に巻き込まれることなのか?TPP問題と日本のあるべき未来像を考える。
ギリシャからイタリアへ拡大の様相を見せるヨーロッパの信用不安。危機をなんとか制御し、出口を模索しているのがIMF・国際通貨基金のラガルド専務理事だ。フランス出身のラガルドさんは独仏のリーダーと交渉を重ねるなど重要な役割を果たしている。11月12日には、中国訪問の後、APECが開かれるハワイへと移動する合間を縫って来日。国谷キャスターが、重大な局面を迎えている欧州信用不安の実態や収束へ向けての処方箋について徹底インタビューする。
日本を代表する光学機器メーカーである「オリンパス」。有価証券の投資など、財テクの失敗で生じた損失を長年に渡り隠し続けていたことが明らかになった。その穴埋めに企業買収の偽装工作で生み出した巨額の資金を充てていたと見られている。コーポレイトガバナンス(企業統治)が厳しく問われるようになって既に久しいにも関わらず、なぜ、20年近くもバブルの傷は隠蔽されたのか。海外からは「日本の企業風土を問う」厳しい視線が注がれている。番組では、関係者の取材から、巨額の損失を代々引き継ぎながら先送りしつつけてきた企業体質を浮き彫りにするとともに、海外の反応なども伝えていく。
国としての戦略がなく企業の撤退も相次ぐ中低迷してきた日本のトップスポーツ。今年6月、国はスポーツ基本法を制定。抜本的なトップアスリート強化に乗り出した。キーワードは「女子力」。世界の水準を分析した結果、それまで男性に比べ支援が手薄だった女性選手に資金やマンパワーを投入し強化を図る戦略を採用したのだ。トライアスロン、サッカー、カヌーなど、来年のロンドン五輪でのメダル量産を目指し、国から派遣されたスタッフや研究機関が女子トレーニングの一大改革を開始している。一方、企業のスポーツ支援でも新たな動きが登場。2016年から五輪正式種目に決定している女子ラグビーに新興企業が続々サポーターとして名乗りを挙げるなど、従来の広告スポンサーや地域クラブ制度に囚われないビジネスモデルで「なでしこブーム」の再来を狙う。新たにはじまった女性アスリート育成の最前線を追う。
各国政府や大手企業などを次々と標的にし、日本でも脅威が高まっている「サイバー攻撃」。その数は、世界で年間30億件を超えると見られているが、攻撃を行うハッカーの実態は、ほとんど明らかになっていない。こうした中、注目を集めているのが、国際ハッカー集団の「アノニマス」だ。ネット上の「自由」を守るために立ち上がったが、その活動は過激さを増し、軍事機密を盗み出したり、個人情報を流出したりして、社会を脅かしている。NHKでは、アメリカに住む中心メンバーを独自に取材。仲間たちと標的を決め、大規模攻撃を行う手口を明かした。暴走するサイバー攻撃の実態と、対策の最前線を伝える。
今月、多くの自治体で本格化した来年度の保育所の入所申請。保育所に入れない待機児童は25000人を超え、不況で共働きの人が増える中、対策はまったなしだ。国は25年度の導入を目指す育児支援策「子ども・子育て新システム」の中間案で、株式会社など多様な事業主体の参入促進を図るとの方針を掲げた。不動産のデベロッパーと組んで用地確保を進める企業や、国の方針を追い風に大幅な新設を目指す企業。一方、自治体は企業をどうチェックするか模索を始めている。保育システムの大きな転換点に立つ中、量の確保と質の維持をどう両立させるのか?子どもを産んだ後も働きたい女性を支える新たな仕組みについて考える。
今、これまでの概念では捉えきれない「うつ病」が増加している。不眠に悩む、職場で激しく落ち込むといった「うつ」の症状を示す一方で、自分を責めるのではなく上司のせいにする、休職中にも関わらず旅行には出かける…。いわゆる”現代型うつ”だ。20~30代の若者を中心に増え続けているとされ、従来の治療法が効きにくいことから医療現場は混乱している。さらに企業では休職者が増え、経営を圧迫。中には「怠け」と判断し、解雇したところ裁判で訴えられるケースも出ている。現代型うつに翻弄される医療現場と企業の実態に加え、最新の治療法も取材、対応策を考える。
「日本沈没」で知られるSF作家小松左京さんが7月に亡くなった。星新一や筒井康隆とともにSF御三家といわれ、膨大な知識と教養から未来を描く「未来学者」でもあった小松さん。戦後、高度成長期のなかで「バラ色の未来」を期待する風潮を批判し、常に科学と人間のあり方に警鐘を鳴らしてきた。死後、見つかった原稿や構想メモから浮かび上がってきたのは、世間に受け入れられず精神を病みながらも、研究分野や立場を越えて、未来を「想像」して築いていこうと格闘する姿だった。震災後のいま、日本社会が進むべき未来予想図をどう描くか、研究者や作家のなかで、小松さんたちSF作家の未来を描く「姿勢」が見直されはじめている。「人間は未来を見ることができる唯一の動物である」。小松さんが最後まで信じた“SFの力”=未来を描く「想像力」の意味を考える。
27日に行われる大阪のダブル選挙。大阪維新の会を率いる、橋下徹氏が、大阪府の「知事」を任期途中で辞め「市長」の座を狙うという異例の展開となり大きな注目を集めている。平成20年、知事に就任すると、財政再建のための徹底したコスト削減、国に対する地方分権の要求など、その大胆な行政手腕が、注目を集めた。今回、橋下氏は、府と市などの再編をめざす『大阪都構想』を打ち出し、現職の平松邦夫市長に戦いを挑む。他にも学校間の競争を促すことで学力向上につなげる事を目指す教育基本条例案を打ち出した大阪維新の会。その手法を、大阪の市民はどう受け止めたのかを見ていく。
今日、25年前の殺人事件で犯人とされ服役した男性の再審=裁判のやり直しが認められた。検察の手元にあった“男性の無実を示す証拠”が裁判所の勧告で開示されたことがきっかけとなった。足利事件、布川事件など相次ぐ再審・無罪判決。背景にあるのが被告に有利な証拠は開示しない“検察の証拠隠し”だ。日本では検察が証拠を独占し弁護側にはどんな証拠があるのか分からない不平等な実態がある。一方、アメリカでは、90年代に相次いで冤罪が発覚したことを受け、検察に全ての証拠の開示を義務付けるなど改革を進めている州もある。証拠は誰のものか…きょう再審が認められた事件の検証とアメリカの取り組みを通して、日本の刑事裁判の課題を考える。
10月中旬に撮影された福島第一原発から5キロにある病院の映像。病院の外に大量のベッドが放置されている様子が映し出されている。運びだされたのは、自力で動くことのできない高齢者たち。この病院では、200人の寝たきりの高齢者がマイクロバスでの長距離移動を余儀なくされ、50人が亡くなった。事態を重く見た全国老人福祉施設協議会は、東北の被災三県を対象に、寝たきりの高齢者の避難に関する実態調査に乗り出している。これまで明らかになっただけでも200人以上が避難の際に犠牲になっていた。番組では、“寝たきりの高齢者”を救うために何が必要なのか検証していく。
独裁政権が次々と崩壊に追い込まれた“アラブの春”。激動の中東はどこへ向かうのか――3夜連続のシリーズで展望する。第一回は、民主化を求めて集結した民衆デモによってムバラク政権が崩壊に追い込まれたエジプト。11月に始まった初の民主的な選挙で、人々は自らの意思で国を率いるリーダーを選出することになる。旧政権下で蔓延してきた汚職や腐敗を取り除き、国民が主導する政治体制を築くことはできるのか。そして、イスラム勢力が急速に台頭しつつあるこの国で、民主主義は本当に実現するのか。中東全体にも大きな影響を与えかねないエジプトの国づくりの行方を探る。
シリーズ第2夜は、近隣諸国で地殻変動が起きる中、安全保障上の重大な危機に直面しているイスラエルに焦点を当てる。平和条約を結ぶ隣国エジプトでは、イスラエルに対して敵対してきたムスリム同胞団系の政党が躍進する勢いを見せ、パレスチナ側も国連で事実上の国家承認を求めるなど、対イスラエル圧力が急速に高まっている。一方、イスラエル国民の中には、かつてあった和平への機運・関心がしだいに薄れていっているのが現状だ。長年、パレスチナとの和平を推進し、ノーベル平和賞も受賞したペレス大統領に国谷キャスターがロングインタビュー。中東和平の行方を探る。
シリーズ3夜目は、中東に新たな影響力を及ぼし始めたトルコを取り上げる。2002年、トルコはイスラム系政党AKPが政権を獲得、欧米中心だった政策を中東寄りの路線に転換した。イスラム化への内外の懸念をよそに、次々と経済の規制改革や社会制度改革を実施。この10年、経済成長は年8%と国内政治の安定を実現している。イスラム色と民主国家としての近代性をどうバランスさせるか。トルコの好調は、民主革命を経た中東諸国から「先行モデル」として注目が高まっている。また高い支持を背景に積極的な多元外交にも乗り出し、EUと中東、アメリカ、アジアなどとのバランスをとりながら、独自の発言力を増している。トルコが目指す新たな中東の未来、そして世界像を明らかにする。
今年10月、長崎県鷹島沖の海底から日本の水中考古学史上、最大の発見があった。鎌倉時代、2度にわたって日本を襲ったモンゴル帝国軍の船、“元寇船”が、原型をとどめた状態で初めて発掘されたのだ。歴史の授業でもおなじみの元寇。しかしその実態は謎に包まれ、強大な元軍になぜ勝てたのか?実はよく分かっていない。その解明に繋がる今回の成果は、琉球大学の池田栄史教授が率いる研究チームが、5年の歳月と試行錯誤の末、厚さ1メートル近い砂泥の中から見つけ出した。“元寇船”はどのように発見され、何が明らかになるのか?730年前の元寇の謎に迫る。
東日本大震災から9か月。いま首都圏各地で、高い放射線量が計測される「新たなホットスポット」が次々に見つかっている。茨城県では、避難の目安、毎時3.8マイクロシーベルトに匹敵する場所が見つかり、住民の間に不安が広がっている。原因は都市そのものにあった。道をアスファルトで覆い、人工河川で排水性を高めたことで、都市特有の、放射性物質の「濃縮」が起きたと考えられている。首都圏の家庭から毎日出されるゴミに含まれる放射性物質も「都市濃縮」されている。千葉県柏市では、ごみを100分の1に減らせる最新の焼却施設で、焼却灰から高濃度の放射性物質が検出された。こうした焼却灰の一部は、すでに全国各地の埋め立て処分場に運ばれていた。事態の深刻さに気付いた秋田県の自治体では、これまで運ばれてきた200トンを超える焼却灰の返却を指示した。国は、焼却灰をコンクリートで固めて埋め立てるよう方針を示したが、首都圏でこうした施設や技術を持つ自治体はない。行き場のない焼却灰がたまり続けると、ゴミ処理そのものが止まる恐れも出ている。効率を追い求めてきた都市。その結果、新たな放射能の脅威と向き合うことになっている。番組では、「都市特有の放射能濃縮」をリポート。解決策を探っていく。
過激な取材手法とスクープ合戦で知られるイギリスのメディア。そのあり方を根本から問い直す異例の公聴会が、先月末から始まった。証言台に立っているのは、有名俳優のヒュー・グラントや「ハリー・ポッター」の作者のJK・ローリング、そして、事件報道で注目された犯罪の被害者などだ。特ダネ記者が、電話を密かに盗聴し、数々の違法行為を通してスクープ記事を書き立ててきたと訴え、「メディアの規制が必要だ」と立ち上がった。一方、メディア側は、「権力の不正を暴くためには違法な取材も必要だ」と反論し、国を2分する論争になっている。報道の自由をめぐって大きく揺れる英国メディアの実態を追う。
勉強が出来て、しつけも行き届いた自慢の子が、突然、学校に通わなくなったり、自室に閉じこもってしまう、いわゆる“よい子の破綻”。原因が分からずに苦しむ親が多い中、研究者がその多くに共通する問題として注目しているのが、親による「やさしい虐待」だ。一般的な児童虐待は、暴力や暴言などで直接子どもを傷つけるものだが、一見こどもにはプラスに思える教育やしつけも過度に押しつけるとこどもをがんじがらめにし、虐待と同様に心を蝕んでいくという。「やさしい虐待」によって損なわれたこどもの心や親子関係をどうすれば修復できるか?その模索を見つめる。
「天才」、「鬼才」、「反逆児」。様々な異名をとり、毒舌や破天荒な行動で注目された落語家・立川談志さん(享年75歳)。その真骨頂は、生涯をかけて究めようとした古典落語にある。「落語とは人間の業の肯定である」という持論のもと、登場人物の心理に独自の解釈を加え、晩年まで新たな境地を目指した。得意とした人情噺「芝浜」は、何度もストーリーや主人公の性格を違えて表現し、人間の本質を描こうと模索を続けていた。最後まで独自の芸を追及した談志さんの“生き様としての落語”から、現代人へのメッセージを読み解く。