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All Seasons

Season 1

  • SPECIAL 0x1 Unknown

    • March 23, 2012
    • YTV (JP)
  • S01E01 弟ヒビトと兄ムッタ

    • April 1, 2012
    • YTV (JP)

     2006年7月9日。星空の下、録音機を持って調査遊びをしていた南波六太(12歳)と日々人(9歳)の兄弟は、偶然にも月へ向かうUFOを目撃し、その感動から、『二人で宇宙飛行士になる』と、約束を交わした。  そして2025年。成長した弟・日々人(28歳)は、約束を守って宇宙飛行士になり、日本人初の月面着陸者として有名になっていた。しかし兄・六太(31歳)は、自動車メーカーに勤めてはいたものの、日々人の悪口を言った上司に頭突きをしてしまい、クビになって落ち込んでいた。  「兄とは常に弟の先を行ってなければならない」 子どもの頃からそう誓ってきた六太にとって、弟が先を行く現状は本意ではなかった。心から弟の成功を喜びつつ、自分は何がやりたかったのかを見失っていた。  そんなとき、母に事情を聞いた日々人から、一通のメールが来る。 『2006年の7月9日。ムッちゃんが録ってたテープを聴いてみろよ。』 テープを探し出して聴くと、そこにはあの時に見たUFOのノイズ音が、しっかりと録音されていた。驚く六太だが、テープに記録されていたのはそれだけではなかった。そのあとには、ハッキリとした言葉で、子どもの頃の『約束』が残されていたのだ。 「お前が月に行くんなら、兄ちゃんはその先へ行くに決まってる――約束だ、俺らは一緒に宇宙飛行士になるぞ!」  1カ月後。六太は日増しに強まる宇宙への想いを抱えてはいたものの、進むべき道を見つけられず、次への一歩を踏み出せないでいた。日々人との約束も守れず、申し訳ない気持ちでバイトから帰宅すると、なぜか自分あ

  • S01E02 俺の金ピカ

    • April 8, 2012
    • YTV (JP)

    日々人と母のおかげでJAXAの新規宇宙飛行士の選抜試験に書類合格した六太。しかし二人の気持ちには感謝しながらも、「兄が弟に引っ張られるわけにはいかない」と、このまま一次審査に進むべきか迷っていた。  悩んだ末、六太は子ども頃から世話になっている、天体観測所で働くシャロンに会いに行く。その心中に気づいたシャロンは、六太が子どもの頃、はじめて楽器を選んだ日のことを語りだした。六太が選んだ楽器は、一番音が出しづらい金ピカなトランペット。どんな難しいことにも進んで挑む子どもだったと言うのだ。  「今のあなたにとって、一番金ピカな事はなに?」 シャロンのその言葉で六太はようやく気づく、自分はいつの間にか日々人の前で失敗することを恥じるようになり、本当に大事な気持ちを忘れていたということに。 「俺は……宇宙へ行きたい!」  数週間後。新たな気持ちで一次審査に臨んだ六太は、筆記試験を見事合格。続く二次審査へと進んでいたが、試験会場へ着いて早々、トイレの便器に携帯電話を落っことしてしまった。だが六太は、こんな時こそと前向きに考えようとする。 「失う物はなにもない!」  そして緊張した面持ちで二次試験最初の面接を受ける六太。しかしまたもやアクシデントが起きる。座った椅子のネジがゆるゆるで、質疑応答にまったく集中できないのだ。ネジを締めようと変な姿勢をし続けてしまった六太は、前向きな心などすっかり忘れ、不合格にされるのではと肩を落とす。実は面接官である星加が受験者を試すため、わざと緩ませておいたとも知らずに。  昼食時間。

  • S01E03 有利な男と走る女医

    • April 15, 2012
    • YTV (JP)

    晴れてJAXAの一次審査・筆記試験を合格した六太は、宇宙飛行士になるため、続く二次審査に挑んでいた。  体力測定がはじまると、六太は同じ受験者である沢木と溝口から思いもよらない言葉を浴びせられてしまう。それは、『宇宙飛行士の弟から、試験内容を聞いているのではないか?』というもの。唖然とした六太はすぐさま心の中で叫ぶ。 「し……しまったー! その手があったんだ!」  どうやらほかの受験者は、そんな『有利に見える六太』を倒すため、何倍も猛勉強し身体を鍛えて努力してきている様子。しかし六太は、試験の内容などまったく聞いてこなかった。 「ってことはある意味……俺が一番不利じゃん……!」 「このままじゃ落とされる……全部一番になるくらいじゃないと――!」  そう思い焦っていたところ、今度は肺活量の試験がはじまった。子どもの頃から肺活量には自信があった六太は、ここぞとばかりに一番を目指す。早々に受験者がギブアップする中、六太と伊藤せりかだけが残る。どちらが勝ってもおかしくない状況だったが、せりかの奮闘に思わず見惚れてしまい、六太は惜しいところで負けてしまった。  負けて消沈する六太を、フォローするケンジ。この試験は一番になることより、平均的に水準を超えた能力があるかを見られており、たとえ一番をとっても、精神的に問題があればダメだと言うのだ。せっかくの言葉にも六太は不安な表情を浮かべる。 「俺はその精神面が、一番自信ない!」  宇宙が遠のいたことにさらに落ち込み、展示された宇宙服を前にため息をつく六太。そしてせめ

  • S01E04 日々人の隣

    • April 22, 2012
    • YTV (JP)

     一週間続いたJAXAの二次審査も、残すは最終面接だけとなっていた。これまでなにかと宇宙飛行士である弟・日々人と比べられ、はた迷惑な注目を浴びていた六太も、ここぞとばかりに気合を入れる。力を尽くしてきた六太にとって、次の三次審査に進めるかどうかは、この面接次第なのだ。  なんとか最終面接を終え、六太が廊下で見たものは、歴代の宇宙飛行士たちの肖像写真パネルだった。日々人のパネルを見つけた六太は、まだ空いているその隣に手をあて、宇宙服姿でにやけ笑いをしている自分を想像する。 「弟の隣に兄がいなくてどうするんだよなぁ。――ここは、俺の場所だ!」 六太はキョロキョロあたりを見回すと、指をなめて壁に押し付けた。 「唾つけとこ」  その夜。試験を終了し、ほっと一息ついた受験者たちは、居酒屋で打ち上げをしていた。ほろ酔いになった六太もご機嫌に語り、最終面接でされた突飛な質問を振り返る。 『最近、自分のことでなにか発見したことは?』  ほかの受験者たちは真面目な回答をしていたようだが、六太の答えはまったく違っていた。 「みんなより……シャンプーがよく泡立ちます!」  一気に酔いがさめ、わざわざ面接で言うことじゃなかったと後悔する六太。そこにさらに追い打ちがかかる。憧れのせりかにアドレスを交換しようと言われたが、携帯電話を失ったままだったのだ。豪快に落ち込む六太を救ったのは、ケンジの一言。 「みんなのアドレス、メモったから」 ケンジが神様のように見えた瞬間だった。  後日。携帯電話を再購入した六太のもとに、日々

  • S01E05 足りない日々

    • April 29, 2012
    • YTV (JP)

    JAXAの二次審査を終えた六太は、日々人に呼ばれ、NASAの家族支援プログラムを使ってタダでアメリカ・ヒューストンへ来ていた。  待ち合わせ場所で日々人の飼い犬・アポに追いかけられるも、ようやく日々人と再会を果たした六太。しかしその夜、いまだ兄弟一緒に宇宙へ行くと信じて疑わない日々人に、六太は言いづらい言葉を放った。 「……俺に行けるわけねぇだろ」  今の自分は常に宇宙飛行士である弟と比べ続けられる存在。誰も『南波六太』とは呼んでくれない。認めたくはなかったが、『自分が宇宙へ行くのは無理』とはっきり伝えたのだ。しかし日々人は無理だとは思っていない様子。 「今と昔で違うもんがあるとすりゃ、それはムッちゃんが俺と張り合わなくなったってことだ。もっと張り合えよ……つまんねえよ」  翌日。日々人からの手紙でNASAの見学に誘われた六太。だが昨日言われた言葉が頭から離れず、なかなか出かけることができないでいた。そこにアポを連れた散歩帰りのスミス夫妻がやってくる。 「君、ムッタか? そうだろ?」 「そうよ、ムッタよ、ムッタ」  なぜか六太を見て笑いだすスミス夫妻。いつも日々人から六太のことを聞いており、はじめて会った気がしないと言うのだ。スミス夫妻が日々人に六太のことを聞くと、いつもこう答えるらしい。 『ムッちゃんは今頃日本で、宇宙飛行士になる準備をしているはずだよ、ムッタは準備中!』  必ず六太が宇宙飛行士になってくると思っていた日々人にとって、自分だけが進んでいる毎日は『足りない日々』だったようなのだ。

  • S01E06 頭にまつわるエトセトラ

    • May 6, 2012
    • YTV (JP)

    日々人の招きで、ついに宇宙の本場、NASA・ジョンソン宇宙センターを訪れた六太。月面基地や火星探査のジオラマ展示に子どものようにはしゃいでいたが、案内役であるジェニファーに日々人のトレーニング姿を見せられ、その心境は一変する。日々人は誰よりも激しいトレーニングをこなし、『サムライボーイ』と呼ばれる人気者だったのだ。  その夜六太は、テレビ出演する日々人を、自室でぼんやりと眺めていた。 「日々人がサムライなら、俺はなんなんだ?」  努力家で人気者の弟と、兄でありながらふがいない自分を比べる六太。 「俺は……引き立て役。柿ピーの中のピーナッツくらいのもんか」  しかし日々人はそう思ってはいない。出演中、全米に向かって『自慢の兄・六太』を堂々と褒め称えたのだ。  「ほめんなよ~! ピーナッツ兄を……!」 毛布をかぶって悶えていたところ、かつて勤めていた会社の元後輩から電話がかかってくる。その内容は、『元上司が六太の悪口をあることないことJAXAにぶちまけた』というもの。さらに『宇宙飛行士に向いてない』とまで言ったというのだ……。  翌日。アトラクションコーナーでバンジージャンプをしながら、六太は子どもの頃に聞いたJAXA職員の言葉を思い出していた。 『宇宙飛行士になるには強い運が必要――私にはその運がなかった』  シャロンや日々人との約束を思い、辛い表情で宙を舞う六太。 「俺にもどうやら運がなかった――ちくしょー!」  そしてJAXAでは、やはり六太が不合格にされそうになっていた。元上司の発言のせいで、『暴力沙汰を起こした

  • S01E07 拝啓日々人

    • May 13, 2012
    • YTV (JP)

    元後輩からの電話で、『元上司が六太の悪口をあることないことJAXAにぶちまけた』と聞いた六太は、興味のないゴミ情報やゴミ知識を一心不乱に集める『コロコロムッタ』へと変身してしまっていた。『六太は嫌なことがあると変身することがある』、それを知っていた日々人は、なにかあったのかと問い詰める。最初は受け流す六太だったが、どうせこの先わかることだからと覚悟を決め、重い口を開いた。 「――92%、俺、落ちた」 さらに六太は続ける。ドーハの悲劇生まれの自分には運がなく、次の試験だっていつあるかわからない、宇宙飛行士の夢は諦め、別の仕事を探す――子どもの頃にJAXAの職員が言っていた言葉、『宇宙飛行士になるには強い運も必要なのだ』と。それを聞いた日々人は言い放った。 「諦めんなよ。もし諦められるんなら、そんなの夢じゃねえ」 ズキリ! ……胸が痛む六太。日々人に言われた言葉は、兄として自分が言ってやりたかったものだったのだ。  翌朝、六太はオジー夫妻とレストランに来ていた。日々人が行っている『目隠し訓練』を実際にやってみせるため、六太は両手で目を覆い隠し、店にいる客の様子を瞬時に細かく言い当てた。おおはしゃぎするオジー夫妻だが、六太は悲観的だ。 「こんなことが出来たって宇宙飛行士になれるわけじゃない。俺には運がないから……」  六太がため息をついた直後、突然店内が慌てふためいた。なんと六太たちがいるレストランが、いま巷を騒がせている『強盗犯・消火器男』に襲われてしまったのだ。モクモクと白い煙が立ち込める中、六太は強く確信し

  • S01E08 白煙天国

    • May 20, 2012
    • YTV (JP)

    消火器男に襲われピンチを迎えた六太だったが、結果、市民を救ったヒーローとして人気者になってしまっていた。六太を称賛する声は一斉に広がり、全国ネットのテレビにも出演。一緒にいたオジーも『ムッタが我々を助けてくれたんだ!』と熱弁をふるった。司会者もあとに続く、『六太が犯人を倒すことができたのは、弟・日々人と同じ宇宙飛行士を目指しており、目が見えない場所でも動けるよう日頃から訓練をしていた成果なのだ』と。ますます盛り上がる観客の中、六太だけは冷や汗を浮かべていた。 「違うんだよみんな、本当は全然違うのよ。――あの時、俺は……」  司会者からマイクが渡され、ついに六太のヒーローインタビューがはじまる。その心中は、『本当は転んだだけなんだ……本当のことを言った方がいい』と葛藤していた。だが観客の中に美女を見つけてしまい、美女の前でいい格好をしたかった六太は、思わず、『正義の前でウソがつけない』と大ぼらを吹いてしまっていた。  テレビ出演が終わり、トイレでオジーに本当のことを話す六太。実は犯人を倒したのは日々人の飼い犬・アポであり、転んだとき偶然犯人に頭突きをくらわしてしまっただけなのだと。しかしオジーは笑う。『全部知っていた』と言うのだ。オジーは六太がアポを助けに行った姿を見ており、その勇気に六太がうまくいく方に賭けたのだと。さらにオジーは続けたる。『運も実力のうちだ!』と。  数日後、両親からのビデオメールで、JAXAの2次審査に無事通過したことを知る六太。消火器男の一件は日本でもテレビ放送されており、それがJAXA

  • S01E09 それぞれの覚悟

    • May 27, 2012
    • YTV (JP)

    JAXAの3次審査を受けるため日本へ帰国することとなった六太。しかし嬉しいはずのその表情は硬く、飛行機の中でも悪夢にうなされてしまっていた。それは帰国前、部屋で偶然みつけてしまった日々人の『遺書』が理由だった。宇宙でも事故は起こりうる。そのことは知っていた六太だが、実際に自分の弟が死を覚悟しているというのはショックだったのだ。  心に重い荷物を抱え実家に帰ってきた六太は、ノンキに出迎える父と母の様子に、つい苛立ってしまう。 「そんなノンキでいいのかよ、日々人は言書まで書いてんだぞ!」 父も母も一瞬表情を曇らせるが、すぐにいつもの調子に戻る。『あんたも飛行士になったらいずれ書くのよ! 死んでから恥かかないように、今のうちにきれいな字を練習しときなさい』と、六太に書道をすすめるほどだ。六太が圧倒されているところ、ちょうど携帯のアラーム音が鳴る。もうすぐ日本の夜空にISS(国際宇宙ステーション)が通るのだ。  子どもの頃と同じように、丘にISSを見に来た六太。ISSはもうボロい宇宙船。にも関わらず、それぞれの覚悟を乗せ、まだ現役で働いている。六太はこれまで、その姿が見える1~2分間に何度も救われてきたという。父も母もノンキに見えるが、実はあれでもう覚悟ができているのだ。決意の瞳で空を見上げる六太。 「俺にも、その時が来た!」  数日後。六太はケンジと合流し、合格祝賀会へと向かっていた。せりかも合格しており、それぞれ宇宙への希望を語りはじめる。ケンジは火星へ、せりかはISSに搭乗したいのだという。しかしISSは

  • S01E10 バスバス走る

    • June 3, 2012
    • YTV (JP)

    ケンジもせりかも、強い覚悟や動機があって宇宙を目指していると知った六太。しかし自分はただ宇宙への憧れだけ。ほかの受験者と比べ、自分にはなにがあるのかと、憧れだけで宇宙飛行士を目指してよいのかと迷っていた。  三次審査当日、六太はシャロンに会いに来ていた。子どもの頃を知り、宇宙への想いの強さを知っているシャロンは、六太の気持ちを優しくほぐす。 「好奇心だったり、憧れだったり。入口は夢見る少年少女よ。ムッタと同じ。――迷うなら、なってから迷いなさい」  三次審査は2週間の泊まり込みで行われるという。合格者人数は前回の3倍、15人が残っていた。理事長・茄子田のかけ声で、さっそく外へ移動するよう指示される六太たち。そこで待っていたのは、窓という窓を鉄板で塞がれた、異様なバスだった。  受験者たちは携帯電話や腕時計を預け乗車。座席に座ってすぐ、違和感に気づいたケンジが六太に同意を求めた。 「なぁ、ムッ君……気づいた?」 「あぁ……乗った瞬間ピンと来たよ」  注意深いケンジは、車内の全席がカメラで監視されていることに気づいたのだ。しかし六太が気づいたところはまったく違っており――。 『このバスの運転手は――ヅラだ!』  車内からは景色は見えず、行き先も極秘。しばらくすると、JAXA職員の指示で受験者たち同士の『交流会』が始まった。隣り合った人と10分間きっちり話し合い、合計140分間しゃべり続けろというのだ。何人かが動揺する中、六太だけは『せりかさんと二人きりで話せる!』と意気揚々。  140分が過ぎ、それぞれ

  • S01E11 閉じ込められたライバル達

    • June 10, 2012
    • YTV (JP)

    六太たち受験者を乗せた閉鎖バスは、ようやくその目的地へと到着していた。そこはまたしても、外の様子が見えない不気味な場所。しかも出発から何時間たったのかまったくわからない状況に、一部の受験者たちは不安を募らせていた。  やがてJAXA職員・鶴見に先導され、『最後の部屋』と呼ばれる空間にたどり着く六太たち。そこで見せられたのは、月面から帰還するブライアンら宇宙飛行士3人が事故に遭い、亡くなるまでの衝撃的な映像だった。受験者たちは『宇宙飛行士にとって事故に遭う可能性はゼロではないこと』、『彼らのように死を受け入れ、行動し続ける覚悟があるかということ』を再認識・再確認する。 六太も決意を固め、配られた免責書に『南波六太』と署名した。 「俺は……死にたくはない! だけど……もうやることは決まっている。死ぬのは嫌だが――死ぬまでに宇宙へ行けないって言うのは、もっと嫌だ。」  全員が署名し、今度は5人一組、A・B・C、3班に分かれることになった。これから班ごとに別の閉鎖環境ボックスに入り、そこで2週間、管制から与えられる様々な課題に取り組んでいくのだ。そして最終日には、各班互いに話し合いをして、全員意見一致のもと、5人の中から2人だけ宇宙飛行士にふさわしい者を選ぶのである。  六太のいるA班のメンバーは、せりか、福田、新田、古谷。閉鎖ボックスの中へ入ると、早速、最初の課題が出された。それは、『5人で話し合い、現在の時刻を推測して時計を合わせろ』というもの。制限時間が10分ということもあり、さっそく各々の答えを発表したのだ

  • S01E12 私の名前は伊東せりかです

    • June 17, 2012
    • YTV (JP)

    5人ごとにA・B・C班に分かれ、閉鎖ボックス内で課題をこなしながら2週間を過ごすことになった六太たち。管制から出された最初の課題は、『いま何時でしょう?』というクイズなのだが、A班のメンバーは早々に意見が分かれてしまう。福田・せりか・新田・古谷の4人がAM6時頃と答える中、六太だけはAM3時と答えたのだ。六太は、なにか勝算がある様子で発言する。 「実は俺、みんなの知らない数字を知っているんだよね。」

  • S01E13 3次元アリ

    • June 24, 2012
    • YTV (JP)

    せりかに下の名前で呼んでもいいと言われ浮かれる六太。さっそく呼ぼうとした瞬間――遮るように現れたのは、今までトイレに入っていた新田だった。 「ちょっとそこ通してよ、……お兄ちゃん。」  自分を『お兄ちゃん』と呼ぶ新田に対し、ムッとする六太。しかしすぐにニッと親指で自分を指すと、軽やかな笑顔を浮かべた。 「おい、新田君! 俺のこと……下の名前で呼んでくれていいんだぜ? 別に気に入ってないけど。」  少しの間、無言で六太を見る新田だったが――。 「わかった――次の課題で俺に勝てたら……呼んであげるよ、……お兄ちゃん。」  次の課題は、ランニングマシンで走りながら5分間で計算問題を何問解けるかという『計算ランニング』だった。この課題で新田に勝ち、下の名前を呼ばせたい六太は、唯一の特技・エアそろばんで挑む。しかし結果は惨敗。そろばんをリアルに再現しすぎてしまい、走っている最中動いてまったく使い物にならなかったのだ。 「普通に計算した方が早かった……」  うなだれる六太に対し、新田は余裕の表情。 「残念だな、お兄ちゃん。……また明日、勝負してあげるよ。」  何も言い返せない六太、悔しげな表情で――。 「くそう……負けねえぞ新田……! この2週間以内に絶対……『ムッちゃん』と呼ばせてやる!」  さらに続く課題は――難題だった。『多額の予算がかかる宇宙開発事業を非難する辛口キャスターを納得させられるような文章をつくれ。』というものだったのだ。みんなが悩み考える中、六太は白紙にスッと一本の線を引くと、その線をじっと見つ

  • S01E14 壊れたメガネと足の裏

    • July 1, 2012
    • YTV (JP)

    閉鎖ボックス内の合宿が5日目ともなると、各班にも性格が現れてきた。C班は穏やか、六太がいるA班はにぎやか、しかしケンジのいるB班だけは、微妙に険悪なムードが漂っていた。頭脳明晰なメンバーが集まっているB班は、互いのプライドが邪魔をしてしまい、心に壁ができてしまっていたのだ。だが、楽しげに過ごしていた六太たちA班にも問題が起きる。福田の眼鏡を古谷が誤って壊してしまったのだ。しかし福田は笑顔を見せる。 「いや……大丈夫だよ。なくても大して影響はない。」  福田は眼鏡がないまま、必死に課題をこなしていた。最年長である自分が宇宙飛行士に選ばれるためには、若い受験者よりも同等以上であることが最低条件だと思っていたからだ。隠れて息を整え、子どもの頃からの夢を想う福田。有人ロケットを作って、それに乗って宇宙へ行くという大きな夢は、いまも福田の中で輝いていたのだ。 「胸を張れ! ここまで来たんだ。自分の年なんて忘れよう! ――私の夢は、年を取っていない!」  一人頑張り続ける福田を六太たちは心配し続けていた。そして古谷も、福田に謝れないでいた。素直になれない古谷は、福田がロケット開発に携わっていたことを有利だと言い放つ。 「俺はあの人別に不利だとは思わへん。ハンデつけてようやく今水平ラインや。」  しかし、せりかは異論を唱える。福田は今回の宇宙飛行士の募集が発表された時、すぐに会社を辞めたと聞いていたからだ。今の地位も捨てられるほど、今回の選抜試験にかけているのだと。  その夜、古谷は監視カメラの前で紙を広げた。その紙には

  • S01E15 宇宙の話をしよう

    • July 8, 2012
    • YTV (JP)

    閉鎖ボックス内の合宿も後半をむかえる。六太たち受験者は、交代でボックス内にあるテレビ電話ルームへと入っていた。テレビモニターの前には医師がおり、一日に一回、個人問診を受けることになっているのだ。福田の番になると、医師は『古谷からプレゼントがある』と伝える。パスボックスを開けると、そこにはケースに入った眼鏡が置いてあった。古谷の気持ちを尊重した管制が、用意してくれたのである。  その夜、ケンジのいるB班では――。真夜中だというのに、寝室にはけたたましいアラーム音が鳴り響いていた。みんなで解決策を探そうとするケンジ。だが、メンバー内で主導権を握ろうとする溝口は、犯人捜しに躍起になってしまう。意見がわかれB班の雰囲気は悪くなる一方。最終日に自分が選ばれるため、互いに争う形になってきてしまっていたのだ。  翌朝。事件は六太のいるA班でも起きていた。唯一の時計がなくなっていたのだ。管制に聞いてみるも、『中で起こった問題は、自分たちで解決するように。』としか言われない。そしてようやく見つけるも、その時計はめちゃくちゃに壊されていたのだった。  そんな中、真っ白なピースのジグソーパズルを3時間作業しろという課題が出される。時間もわからずなかなか進まない作業状況。イライラを募らせた古谷が口を開いた。 「誰やねん、時計壊したやつ。」  犯人は名乗り出るはずもなく、空気は険悪なものになってしまう。しかし、それを打破するように六太が立ち上がった。 「宇宙の話をしよう――もっと宇宙飛行士気分でいこうぜ。」  六太はさらに続ける。も

  • S01E16 アラームアリ時計ナシ

    • July 15, 2012
    • YTV (JP)

    三次試験も後半。真っ白なパズルを組み立てながら、六太の心はモヤモヤしていた。 「分からない……このパズルみてーに、頭ん中が真っ白になりそうだ!」  A班では、閉鎖ボックス内唯一の時計が、何者かの手によって壊される事件が起きていた。そしてその犯人が、みんなから慕われるリーダー・福田だということを、六太は目撃してしまったのだ。  時間もわからず、班内の疑心暗鬼は強まるばかり。六太にも疑惑の目が向けられてしまう。 『チクショー…こうなったら、暴露してやるか……! 福田さんが犯人だって!』  しかし――。福田が理由もなくそんなことをするだろうか?『いや……何か……ひっかかる……』そうこうしているうちに終了ブザーが鳴り、課題の時間が終わってしまった。  課題後、六太は意を決し、福田を呼び出す。誰もいないところを見計らい、時計を壊した理由を福田に問い詰める。しかし福田は――。 「さあ……なんでだろうね。――もし君がその理由に気づいたら、その時は握手でもしよう」  そんな風に答えを濁す福田の言動に、六太のモヤモヤは膨らむばかり。  一方、ケンジのいるB班では――。連夜鳴り響くアラーム問題を解決するため、ケンジは一人通路で寝ていた。娘のことを想いながら課題の続きのパズルをはめていると――例のアラーム音が鳴り始める。飛び起きて、必死に音の出どころを探すケンジ。しかし見つけられない上に、ケンジを犯人と決めつけようとする溝口との仲が、険悪なものになってしまう。さらに、班内で新たな問題が勃発。なんとA班と同じように、唯一の時計が

  • S01E17 犯人はこの中にいる

    • July 22, 2012
    • YTV (JP)

    閉鎖ボックス内・10日目の深夜。A班メンバーが寝静まる寝室に、突然けたたましいアラーム音が鳴り響いた。時計が壊される事件に引き続き、また問題が起きたのだ。古谷の明らかにおかしい行動にいち早く気づいた六太は、思考をめぐらせる。管制の見ている前で、福田や古谷が自らの夢を壊すような行為をするとは思えなかったのだ。そして、二人を信じた六太は、一つの考えにたどり着いた。 『となると、やっぱりこれは、JAXAの演出……』  六太は思い出していた、NASAの施設内で知った『グリーンカード』のことを。グリーンカードとは、仲間のミスによるストレスをどうコントロールし、不測の事態をどう切り抜けるか、それを調べるために、チーム内で極秘にトラブルを起こさせるものだった。  六太は、こっそりと古谷に質問する。 「正直者のやっさんに、1個質問――グリーンカードもらった?」 「……そ、それだけは答えられへん!」  古谷が答えられないということは、紛れもなくグリーンカードをもらったということ。その答えを知るなり、六太はまっすぐ福田のもとに歩み寄った。「福田さん――よかった!」晴れやかな顔で硬い握手をする六太と福田。福田の行動は、すべてグリーンカードによる指示だったのだ。  そんな中、新田はまだアラームを探していた。グリーンカードの存在をまだ知らず、一人モヤモヤする新田に、六太は言う。 「これだけははっきり言えるよ。この中には……悪い奴は一人もいない!」  そんな六太の言葉のおかげか、A班はグリーンカードを乗り越え、楽しげな雰囲気が戻った

  • S01E18 かぺ!けんじ!

    • July 29, 2012
    • YTV (JP)

    閉鎖ボックスでの試験もあと数日。A班はグリーンカードの存在に気づくことができた六太のおかげで、もと通り和気あいあいとした雰囲気に戻っていた。だが食料不足という問題は続いており、ジャンケンで食事を取り合うことに。 「ジャンケンを超える公平な方法はあらへん。負けても文句言うなよ!」 古谷はそうハッキリとした口調で言うのだった。  そして、ついに六太もグリーンカードデビューをすることになる。それは『唐突に叫びをあげ、ほかのメンバーを驚かせなさい』というもの。初のグリーンカードに張り切っていただけに、その内容にガッカリする六太。 「なんか俺のだけ方向性が違う……」  一方B班では、――また新たな問題が起きていた。パソコンに記録していたテストの点数データが、すべて消えてしまったのだ。溝口はここぞとばかりに、ライバル視しているケンジを犯人扱いする。しかしケンジは、冷静に自分の意見を伝えた。 『2人選んでくださいとは言われたが、選ばれた2人が宇宙飛行士です、とは誰も言っていない――JAXAが見たいのは、誰かが選ばれた結果ではなく、どんなふうに受験者たちが選ぶのかっていうことだ』 と。その言葉に同じ班のメンバー・手島も賛同するが、溝口だけは違った。手島とケンジに、選ばれても辞退するよう迫ったのだ。  溝口の横暴とも取れる言動に、険しい表情を浮かべるケンジは、ひとりバスルームにこもり、心を落ち着かせようと耐えていた。 『帰りたいって思うのは……俺だけか……?』 ケンジは、娘・風佳が自分を送り出す時に発した、『かぺー!』という

  • S01E19 さらばの前の日

    • August 5, 2012
    • YTV (JP)

    閉鎖ボックスでの生活も残り2日。B班では、それぞれ自分の好きなものについて談話していた。手島は異星の海洋生物を想像したデッサン、北村は今読んでいるSF小説、そしていつの間にか富井も加わり、みんな楽しげな表情を浮かべていた。 ケンジがうまくきっかけを作ったことにより、ギスギスしていた雰囲気が、ようやく改善されたのである。 『これでよかったんだ――最初から。終わる前に気づけてよかった』 そんなB班の様子を見ていた管制では――。 星加が満足気な言葉を漏らしていた。「これが、見たかった」星加は、ケンジか溝口、どちらがリーダーとしてB班の雰囲気を作り出すか、敢えて2人にはグリーンカードを出さずに待っていたというのだ。 「種明かしをしてやろう。2人にとっては――救いのグリーンカードだ」 一方、A班では。 「良いニュースと、悪いニュースと、あと、微妙なニュースがあります――どれから聞きたい?」 六太がみんなを集め、重大なことを発表しようとしていた。悪いニュースは、明日の食料がないこと。良いニュースは、六太が小麦粉と調味料を発見したということだった。 「これで明日はうどんが食えるぜ、みんな!」 楽しげにうどん作りをはじめるA班のメンバー。六太が、『作り方は天文学者・シャロンに教えてもらった』と明かすと、シャロンと親しいことに一同羨ましげな声をあげた。六太は感動した。なぜなら、子どもの頃天文台に友達を誘っても誰も興味を示さず、誰もついて来てくれなかったのだ。 様々な宇宙の話をしながら、六太は目頭を熱くする。 『ここにいたんだ

  • S01E20 一番酷い仕打ち

    • August 12, 2012
    • YTV (JP)

    閉鎖環境での生活も、ついに最終日。日記を書く者、成績表を見つめる者、受験者たちはそれぞれの想いを胸に、最後の朝を過ごしていた。 六太は、『宇宙飛行士にふさわしい2人』の選出方法について、ずっと考えていた。 『どーやって決めればいいんだ?』誰だって自分が一番宇宙飛行士になりたいと思っているに決まっている。5人の中からその2人を自分たちに決めさせることは、グリーンカードより何より一番酷い仕打ちだ、と。 そんな思考から逃れるように、六太はまた『コロコロ六太』へと変身する。六太が出した成績は、ダントツの最高記録だった。 時間は刻一刻と過ぎ、管制からいよいよ指示が出された。 『どんな方法でも構いません。2時間以内に2人を選んでください』 六太は結論が出せず迷い悩んでいた。非情に切り捨てるのではなく、運に任せるべきなのか、と。 『どっちが正しいんだ……? 正しい方法は……?』 ふいに、六太はシャロンの言葉を思い出す。 『迷った時はね――どっちが楽しいかで決めなさい』 「――ジャンケンで決めようか」 六太が提案した方法は、ジャンケンだった。一同が驚く中、いち早く古谷が反対する。古谷はこれまでやった全課題の成績を記録しており、ジャンケンには納得できないというのだ。そして、歯を食いしばって続けた。 「俺は……最下位や――最下位やったわ 俺……」 古谷の中で、もう2人は決まっていた。その名前を言おうとした時、六太が口を開く。 「やっさん、前にスルドイこと言ってただろ――ジャンケンを超える公平な方法はない――って」 この5人はジャンケンみたい

  • S01E21 久しぶりの空

    • August 19, 2012
    • YTV (JP)

    『迷った時はね――どっちが楽しいかで決めなさい』 3次試験の最終日、シャロンの言葉を思い出した六太は、ジャンケンで宇宙飛行士にふさわしい2人を選ぶことを提案した。 その理由は、楽しかったこの2週間を、楽しい5人のままで終わりたいと思ったからであった。 そして、A班のみんなはこれに賛同してくれ、勝負はたった1回で決まることとなる。 2人が勝って、六太を含む3人が負けたのだ――。 全課題を終え、閉鎖ボックスから出た受験者たち。 そんな彼らに、茄子田JAXA理事長はこのまま外に出てもいいと許可を出した。 極秘施設にも関わらずシャッターが上がると、外には本物の太陽がさんさんと照っており――。 「まっぶっしー!」 思わず感激の言葉を発し、外へと出ていく六太たち。 しかし辺りをよく見ると――。 「あれ……? ここって……」 そこは極秘施設ではなく、バスの出発地であるJAXAの敷地内だった。 茄子田がドヤ顔で言い放つ。 「ガッカリした!? 残念ながら極秘施設なんて建てる資金はありません!」 数日後――。 古谷は、宇宙服の開発をしている職員・馬場広人に会うため、JAXAへと来ていた。 『身長が足りなくてスタートラインにすら立てない』 実は古谷は、自分の背が低いせいで、ずっと宇宙飛行士にはなれないと思っていた。 宇宙服は1着作るのに10数億円かかり、使用頻度の少ない小さいサイズは、これまで作られることはなかったからである。 だが、背が低くて宇宙飛行士になれないという悔しい気持ちは、馬場も同じだった。 そのため研究を重ね、身長150センチから対応できる

  • S01E22 夢の途中

    • September 2, 2012
    • YTV (JP)

    人生を賭けたジャンケンで勝ったのは、新田とせりかだった。 数日後、宇宙に近づいた2人を祝うべく、打ち上げに集まったA班のメンバー。 その様子は実に仲が良さげで楽しげで、別れ際も福田と古谷の表情は軽いものだった。 だが、六太の心境は少し違っていた。 各班で選ばれた計6人は、これからJAXAが選ぶ数人とともに、ヒューストンへ行くという。今回選ばれなかった者にもまだチャンスはあり、六太は、そのチャンスに賭けていたのだ。 そしてJAXAでは――JAXA側が選ぶ候補生を決めようとしていた。 過去の選抜を振り返ると、閉鎖ボックス内で過ごしたメンバーは必ずと言っていいほど仲良くなって出てきた。 しかし、今回初めて『自分たちで2人選ばせる』という最大の課題を与えたところ、予想以上に各班の和を乱したという。 「ジャンケンが正当だったかどうかは知りませんが、一つだけはっきりしたことがあります。2人を選び終えたあと、すぐにあの中で次に会う打ち上げの約束を交わしたのは――A班だけです」 当初、ジャンケンを提案した六太の評価は良いものではなかったが、星加の言葉で一変した。 JAXAの発表があった後――六太は福田に誘われ、スカイツリーへ来ていた。 日本初の有人宇宙ロケットの開発に携わることとなった福田は、一度ゆっくり六太と話し、礼を言いたかったという。 『時計を壊した犯人を知っていたのに、秘密にしてくれたこと』 『最後に2人を選ぶ時に、自分にもチャンスをくれたこと……』 六太には本当に感謝しており、こういう人が選ばれるのかもしれないと思っていたという。 そして、JAXAが選ん

  • S01E23 親父と息子とムッタクロース

    • September 9, 2012
    • YTV (JP)

    最終試験のためにヒューストンに行くのは、8人だと発表された。 男性枠の最後の1人に滑り込んだ六太だが、日程が決まらないのかJAXAからは連絡がなく、選考に落とされたケンジのことも気になっていた。 そして、若干だがほかにも気になることがあった。 六太の合格祝いのはずなのに、なぜか六太のケーキだけ角度が薄いのだ。 「ケーキの角度は日頃の働きに比例する。男なら、親父より稼げ」 「重いわ~お父さんの言葉!」 ヒューストンへ行くまで、バイトをしようと決意する六太だった。 季節は冬。 六太が雇われたのは、サンタクロースの格好をして子どもと記念写真を撮るアルバイト。 バイト終了後、JAXAの鶴見から、最終選考は2カ月後と電話がある。 日々人たちCES-51クルーの打ち上げをみんなで見るというのだ。 六太は鶴見に、ずっと気になっていたことを尋ねた。 「ケンジは……真壁君は何で選ばれなかったんですか? 僕が残されたのに彼が残らないっていうのはなんかこう不自然で……」 しかし電話口から聞こえたのは、意外にも鶴見の笑い声。 『真壁君も君と全く同じことを訊いてきたよ』 男性枠は1つのはずだが、ちゃんとケンジも受かっているという。 実は9人選ばれるはずだったが、辞退した男性がいたのだ。 それは、B班で一番優秀だった男、手島有利だった。 『僕は――自分の父には逆らえますが、自分のやりたいことには逆らえません』 手島の父は宇宙飛行士になりたくて3回も試験を受けた人だという。 宇宙飛行士になることは父の強い意志だったが、手島自身のやりたいことは違ってい

  • S01E24 最悪の審査員

    • September 16, 2012
    • YTV (JP)

    2か月後に行われる最終試験を前に、六太はヒューストンへと来ていた。 「俺も早く訓練とかして格好いい汗かきてー!」 日々人はNASAで宇宙飛行士の訓練だが、自分はオジーのところで芝刈り作業なのだ。 六太はまたしても、弟と兄である自分を比べてしまっていた。 NASA・ジョンソン宇宙センターでは――。 職員が日々人たちに月面任務について説明をしていた。 月面での長期滞在で問題は、太陽風や宇宙線などの放射線と小隕石である。 むき出しの住居モジュールでは被ばく量を抑えきれないので、これを大量にカットするために、モジュールをレゴリスと呼ばれる月の砂で、覆い隠す作業が必要になるのだ。 その時に使用するのが、レゴリス散布ローバー『スパイダー』と、月面用の『ショベルカーアームストロング』。 CES-51のクルーである、フレディ、バディ、日々人は、分厚い説明書を渡され、ローバーの操縦を6時間でマスターするよう言われたのだが――。 日々人は説明書を読まず、いきなりローバーに乗り込もうとしていた。 「やった方が早い!」 一方、六太も月面ローバーに近いものに乗っていた。高度なテクニックを要する芝刈り機である。 経験があるオジーでさえ、横転しそうになるくらいの難度が高い乗り物だが、六太も説明書を読まずに運転をはじめた。 「こーいうのは……やった方が早い!」 昼食時、六太はジェニファーに、日本好きの宇宙飛行士、ローリー・クモオを紹介される。 六太が最終試験まで残ったことを祝う2人だが、1つ気になることがあるという。 選考者の1人である吾妻滝生が、日々人のことを良

  • S01E25 マッハの弟 筋トレ兄

    • September 23, 2012
    • YTV (JP)

    宇宙飛行士を選ぶ最終試験を前に、六太は日々人の住むヒューストンへやってきていた。 だがその審査について、ジェニファーから不安な話を聞いてしまう。 ジェニファーいわく、六太の最終面接の審査員である吾妻が、日本人初の月面着陸者に選ばれた日々人のことを妬んでいるというのだ――。 日々人にとって吾妻は憧れの人だった。 数年前、テレビの記者会見で吾妻を見ていた日々人は、その言葉に感動していたのだ。 そんな日々人に、六太は久しぶりに兄らしいアドバイスを言う。 「ほかの宇宙飛行士たちとは仲良くな。きっかけはなんだっていい、日々人なりのやり方でいい――」 打ち上げまで残り20日――。 『L-20』という日を前に、六太と日々人はスケジュール確認をしていた。 『L』とは打ち上げの頭文字で、日々人の打ち上げまで残り20日という意味である。 明日、L-19からの4日間を使い、日々人たちはL-3から打ち上げ当日までの4日間をリアルに再現する、TCDTと呼ばれるリハーサル訓練(最終秒読み段階の訓練)を行う。 そのため、クルーは打ち上げ台のあるフロリダ州のケネディ宇宙センターへ向かい、そこで本番当日と同じ食事を摂り、同じ服を着て、同じタイムスケジュールで分刻みに行動するのだ。 日々人は月に向け、厳しい訓練を頑張っている。 それを間近で見ている六太も、面接に備えてなにかしたいと思っていた。 自分はいま何をすべきで、何ができるのか、焦るばかりで何も浮かばないのだ。 翌日――L19。 いまだ自問自答する六太の頭の上を、日々人が颯爽と駆けぬけていった。

  • S01E26 痛みを伴う面接

    • September 30, 2012
    • YTV (JP)

    日本人初の月面着陸者となる日々人の打ち上げまで、あと7日。 日々人たち宇宙飛行士は、ウイルス感染などを起こさないよう、NASAの隔離施設に入っていた。 一方六太は、ジョンソン宇宙センターの一室で、宇宙飛行士を選抜する最終試験を受けようとしていた。 審査員の中には日々人を妬んでいるという吾妻もおり、不安がよぎるのだが……六太の一番の心配はそのことではなかった。 先日のスクワットが原因で筋肉痛になり、座れなくなってしまっていたのだ。 六太は確信していた。 最大のポイントは面接ではなく、終わってイスから立ちあがる瞬間だと――! 面接トップバッターである六太が会場へ入ると、そこには日本人宇宙飛行士たちが勢ぞろいしていた。 痛みをこらえ、なんとかイスに腰かけたまではよかったが――ガキンッ! とイスのネジがはずれ、六太は後ろに倒れてしまう。 本当は六太の実力を試したかった紫三世(むらさき さんせい)のイタズラだったが、そんなことは知る由もなく、六太はひたすら笑顔をキープするのだった。 あっさり終わった最終面接の翌日、六太たちはJAXA主催の親睦会に参加していた。 受験者たちは知らないが、実はNASAでの面接はフェイクで、この親睦会こそが受かるか否かを決める場だったのだ。 一緒に宇宙で生活を送っていけそうか、自分の命を預けることができるかどうか、 肩の荷を下ろし素に近くなった受験者たちを、現役の飛行士たちが感覚に従って観察するのである。 そんな中、紫も六太に近づき、『みんなのことをどう思っているか』の質問をしていた。 正直に、新田は携帯の待ち受け画

  • S01E27 一つの質問

    • October 7, 2012
    • YTV (JP)

    打ち上げ6日前。 先日行われたジョンソン宇宙センターでの最終面接は、実はフェイクだった。 すべての選考が終わったと思い込み、肩の荷が下りきった「素」に近い受験者たちを、現役の飛行士たちが事細かにチェックするためである。 このことを知らない受験者たちは、親睦会でそれぞれ思い思いの時間を過ごしていた。 その会場で、紫から『吾妻にはむやみに話しかけないほうがいい』とアドバイスを受ける六太。 だが六太は、吾妻には一番に挨拶すべきと思っており――。 『ビビることはない……! オレはもうすでに、一度死んでいる!』と、挨拶しに行ってしまう。 しかしいざ吾妻に挨拶をしようにも、まったく会話が続かない。 焦る六太に、吾妻は一つの質問を投げかけた。 「死ぬ覚悟はあるか――?」 六太は『当然ある』と答えたが――しばしの沈黙後、言い直した。 「本当は死ぬ覚悟、できてないです。多分、こりゃもう死ぬなって瞬間が来たとしても、ギリギリまで生きたいと思いそうです」 かつて、吾妻もブライアンに同じことを質問され、『死ぬ覚悟はなく、考えるなら生きることを考える』と答えていた。 ブラインはその解答に満足し、『死ぬ覚悟なんていらない、必要なのは生きる覚悟だ。NOといえるヤツがいたら、そいつは信じていい』と吾妻に言ったのである。 吾妻は日々人にも同じ質問をし、同じ解答をしたことを思い出していた。 兄弟そろって『信じていい者』と、感じられたようだった。 打ち上げ4日前。 六太たち家族は、月へ行く飛行士たちと最後の食事をするため、ケネディ宇宙センターへ来ていた。

  • S01E28 ドーハのきせき

    • October 14, 2012
    • YTV (JP)

    打ち上げ4日前。 六太たち家族は、月へ向かう日々人と最後の食事をするため、ケネディ宇宙センターに来ていた。そこで六太は、日々人に一枚のDVD―Rを渡す。 ケースに張られたラベルには、『2006年ドーハのきせき さつえい 南波日々人』と書かれており、なんとそれには、UFOの映像がしっかり記録されているようなのだ。 2006年の夏――少年時代。 六太と日々人は、学校で『UFOを見た』と言っても誰も信じてくれないことに、大きな不満を感じていた。 『証拠があれば信じるはず!』と思った六太たちは、UFOを撮影するため、毎晩高台へ足を運ぶことを決める。だが、待てどもまったくUFOは現れなかった。 そしてある日、六太が日増しにキズを作ってくることに日々人が気づく。 六太は『電柱にぶつかっただけ』と言うが、本当はUFOの証拠を見せろと、いじめっ子グループに絡まれていたのだ。 UFOを見た日から3カ月後。 日々人は六太の13歳の誕生日に、一枚のDVD―Rを渡した。 タイトルは『ドーハのきせき』。 早速その映像を見ると、映し出されたのは、釣り糸にぶらさがった作り物のUFOの姿だった。 呆れる六太と対照的に、日々人は自信満々な顔で言った。 「これでもういじめに遭ったり、電柱にぶつかったりしなくなるよ」 日々人は、六太がUFOの証拠が原因で殴られていると知っており、自ら作ったUFOを真剣に撮影したのである。 その後日――。 今度は日々人がいじめっ子グループに絡まれていた。 六太は日々人の作った映像を見せておらず、いじめっ子たちは早くそのUF

  • S01E29 打ち上げ前夜

    • October 21, 2012
    • YTV (JP)

    打ち上げ2日前。 この日、月に着陸するための宇宙船アルテミスが、史上最大の無人ロケット・マルスファイブによって、先に打ち上げられようとしていた。 アルテミスは宇宙空間で日々人たちが乗るオリオンと合体してから、月へと向かうのである。 多くのギャラリーが見守る中、発射準備が行われようとしていた。 この打ち上げが成功すれば、次は日々人たちの乗る宇宙舟オリオンが、マルスワンによって打ち上げられるのだ。 打ち上げ1日前。 マルスファイブの打ち上げは無事成功、明日はいよいよ日々人たちが宇宙へ行く番である。 その頃六太は、ココビーチでせりかとたわむれるアポを羨みながら、日々人のことを思っていた。 これまで六太は、現実的に宇宙飛行士なんてムリと諦め、日々人のことをちゃんと応援してやったことがなかった。 しかしその日々人は、いままさに夢を叶えようとしており……複雑にも六太は、弟に先を越されている悔しさと同時に、子どもの時のようなワクワクがよみがえるのを感じていたのである。 打ち上げ当日。 広場には大勢のギャラリーが集まっており、大変賑わっていた。 露店では最年少ムーンウォーカーとして人気者な、サムライボーイ・日々人の関連グッズが飛ぶように売れており、ここでも優秀な弟と自分を比べてしまう六太だった――が……それよりも、もっと大きな問題のことを心配していた。 空には黒い雷雲が立ち込め、打ち上げが中止になるかもしれなかったのだ。 速報だと、打ち上げ続行か中止か、現時点での確立は5対5。 さらにもっと詳しい情報を得るため、六太とケンジとアポはニ

  • S01E30 犬とじじいとアレクサンダー

    • October 28, 2012
    • YTV (JP)

    打ち上げ直前。 いまだ空にかかった雷雲は晴れず、打ち上げが行われるか否かは、保留状態となっていた。 そんな中、よりにもよって犬・アポがいなくなってしまう。 みんなで手分けして捜すも、多くの人が賑わう広場で小さなアポを見つけるのは困難。 だが六太は偶然にも、視線の先に今まさに車に乗せられようとしているところアポを発見する。 走り出した車を止めるため、六太は必死に走って追いかけた。 走り出してしばらく、ようやく追いかけてくる六太に気づき、車が停車した。 車内から出てきたのは、杖をついた体格のよい老人・デニール。 六太のことをなぜか『アレクサンダー』と呼び、大きな声で笑うのだった。 その後六太とアポは、怪しくもNASAの職員と名乗る明るい老人・デニールの車に乗せられていた。 舗装の荒れた道を猛スピードで運転するデニール。 アポはデニールのホットドッグに夢中だが、目的地がわからない六太の心配は募るばかり。 そんな六太にデニールは『旅は道連れだ』とまた笑い、さらに荒い運転で目的地まで走り続けていた。 やがてデニールは、車をある場所に止める。 そこはもう20年以上使っていないシャトル時代初期の訓練施設だった。 今は引退したものの、デニールは親子2代でロケットやシャトルに携わってきたNASAのツワモノだったのだ。 六太が棟に上がると、そこには息を呑むほど見事に、発射台に設置されたマルスワンの姿があった。 一方、見学広場は最高に盛り上がっていた。 ようやく雷雲が散り、打ち上げが確定したのだ。 大勢の人が見守る中、マルスワンのオリオン

  • S01E31 ロケットロード

    • November 4, 2012
    • YTV (JP)

    大勢の観客が見守る中、日々人たちが乗ったマルスワンは、噴射炎と白煙をあげながら一気に発射された。 「あいつ……本当に宇宙に行きやがったな」 打ち上げ場所から遠く離れた旧管制塔で見ていた六太は、子どもの頃日々人と一緒に、ISS(国際宇宙ステーション)に滞在中の星出飛行士と通信したことを思い出していた。 六太たちが子どもの頃、JAXAでは『ISSと通信しよう』というイベントが開催された。 集まった子どもたちは、ISSにいる星出宇宙飛行士とモニターごしに質問することができ、そのとき日々人が「自分は絶対宇宙へ行く!」と宣言したのである。 しかしこの頃から六太は、『世の中には絶対なんてない』と考えていた。 そのため、いつも軽く『絶対、絶対』と口にする日々人を、よく思ってはいなかった。 だが日々人は、『大丈夫、俺の中に絶対はあるから』と努力し続け、本当に宇宙へ行ってしまったのである。 空に残ったロケットの軌跡に、六太は日々人を重ねていた。 『――ロケットロードは寄り道をしない。後戻りもしない。ただ一直線に宇宙へ伸びる道。まんまお前みたいだな――』 打ち上げ後、ホットドックを食べながら、六太はデニールに質問されていた。 「自分の弟が宇宙へ行くってのはどんな気分だ、お?」 『ほとんど今日の空のようだった』と六太が答えると、デニールは笑いながら空と人生との違いを語りはじめた。 「空は誰の物でもない。人生は自分のもんだ。人生はコントロールがきく」 言い終えた後、デニールは自分の名刺をよく見るよう六太に促した。 そこにはなんと、『

  • S01E32 入ってはいけない場所

    • November 11, 2012
    • YTV (JP)

    テキサスのレストランで行われた、日々人の打ち上げ成功祝い会。 そこで受験者たちは、今後の合格発表までの流れを知らされることになる。 合否の結果発表は、日々人が月面に着陸してから一週間後の日を予定しており、JAXAから直接自宅に電話がかかってくるということだった。 両親やほかの受験者たちは日本へと帰ったが、六太だけはアメリカに残り、日々人の月面着陸を待っていた。 着陸まであと2日。 管制室が見えるNASAの見学コーナーに入りびたっていた六太は、その食堂で偶然にも吾妻とその家族をみかけた。 そして、優しい笑顔を家族に向ける吾妻の様子に、六太は疑問を抱く。 『吾妻さんは本当に日々人に嫉妬しているのか?』 意を決し話しかけようとする六太。すると吾妻は、六太に力強く手を差し出してきて――。 「打ち上げ、成功おめでとう」 と、素直な気持ちを表現してくれた。その意外な行動に六太は感じる。 『もしかして、日々人に先を譲ってくれたのではないか――』と。 吾妻と固い握手をし、その家族と話しをしたことで、彼の本当の気持ちがわかったような気がした六太だった。 六太と別れたあと、吾妻は自分が日本人初の月面周回者となった日のことを思い出していた。 記者会見で『孤独は感じなかったのか』と繰り返し質問され、困惑したことを。 実際は高揚感でいっぱいで孤独なんて感じていなかったのだが、もともと寡黙なせいで、何を言ってもマスコミが『月での孤独感が原因』とはやし立ててしまったのだ。 そんな吾妻の気持ちを一番わかってくれたのは、家族とブライアンだった。

  • S01E33 月のウサギ

    • November 18, 2012
    • YTV (JP)

    順調に月へと向かう日々人たち。 六太はその様子を管制室の外で見ながら、一人考えていた。 『自分は日々人の月面着陸を、どんな顔でみるのだろうか――』 兄とは常に弟の先を行かねばならない、六太はずっとそう思ってきた。 しかし弟の日々人は、兄の六太よりも先に夢を叶え、月へ向かっている。 日々人が夢を叶える瞬間に、自分はうれしくて笑ってしまうのか、それとも感極まって泣いてしまうのか、どっちなんだろう――と。 2026年3月8日――日々人が月面着陸する日の朝。 南波父と母の寝室では、午前4時にセットされた目覚まし時計が、けたたましく鳴り響いていた。 だが、この時間に目覚まし時計が鳴ったのは、南波家だけではなかった。 日本中の人々が、日々人の月面着陸する瞬間を生放送で見るため、一斉に起きだしたのである。 そんなことも知らず、日本の期待を一身に背負った当の日々人は、いつも通り飄々とした様子。 司令船オリオンで月に近づき、離陸着陸専用の宇宙船アルタイルへと移動していた。 アルタイルでの着陸作業は、日々人の手動作業によって行われる。 世界中の人々が見守る中、日々人はその作業を見事に遂行。 大歓声があがったその瞬間、六太は喜びのガッツポーズをして、泣きながら笑っていた。 月面着陸後、船長のフレディ、ダミアン、バディ、カレン、リンダ、日々人のCES―51クルーは、月面基地に移動するためのビートル1号に乗り移ろうとしていた。 日々人は宇宙服を着こみ、月へ降り立つ直前、六太から送られてきた映像を思い出す。 その内容は、『吾妻は日々人を妬んでお

  • S01E34 月夜の晩にパグとハグ

    • November 25, 2012
    • YTV (JP)

    無事に月へと到着した日々人たちCES―51クルーは、月面基地ファーストベースへと移動するため、与圧服を着こみビートル1号に乗車しようとしていた。 ずっと真空だったビートルの車内には、2時間前から新しい空気が送り込まれているはずである。 管制によれば数値に異常はないとのことだったが、今からその車内で与圧服を脱ごうとするクルーには不安がよぎっていた。 『もしヘルメットを脱いだ時、正常な空気が入っていなかったら……?』 なんといってもここは宇宙空間、メーターでは確認できないような得体の知れないガスが発生してしまっているかもしれないのである。 みんながなかなか与圧服を脱げないでいる中、意を決し、船長であるフレディが脱ぎはじめようとしたその時――。 「ちょっとみんな! 脱がねーの?」 見ると、驚くことにもう日々人は脱いでしまっていた。 なにやら風呂に入っていない自分のニオイに驚いた様子だが、月でも相変わらず飄々としている日々人なのだった。 翌日、日々人とバディは、降り注ぐ放射線や小さい隕石から基地を守るため、砂をかけるミッションを開始する。 作業しながら、日々人はバディに着陸直後に見た『キラッと光るなにか』の話をしたのだが、だたの『キラッ』だったため、UFO好きのバディは興味なさげ。 日々人にはどうにも引っかかっているようだが、確かめるすべは今のところない。 一方、合格発表のため幸運犬・アポを連れて日本へと帰国していた六太は、母に頼まれスーパーに買い物に来ていた。 六太は発表までは運を使いたくなかったにも関わらず、くじ引き

  • S01E35 だだっ広い施設のほんの一角から

    • December 2, 2012
    • YTV (JP)

    日本に帰国した六太は、ひとり焦っていた。 やるべきことはやり尽くし、もう運に頼るしかないにもかかわらず、とってもムダに運を消費してしまっていたからである。 幸運の犬・アポに祈りながら、六太はJAXAからの電話を待っていた。 そしてケンジもまた、家族と一緒に合格発表を待っていた。 『この一本の電話から、俺の毎日は変わるかもしれない』そう思いながら――。 宇宙飛行士を目指すまで、ケンジは仕事にいつも物足りなさを感じていた。 ケンジの仕事は光化学研究所の職員。 毎朝目覚ましが鳴る前に起き上がり、いつも同じバスに乗って会社に向かう。 仕事も好きでやっていることで、当然楽しくて誇りも持っていた。 職場は郊外で朝のラッシュとは無縁だし、定時にも帰宅できて恵まれた環境ともいえた。 けれど、ケンジは満足していなかった。 いつも同じメニューの食堂、グレーの地味な作業服、どこか向上しようとしない同僚たち。 それらに囲まれたままの自分は、子どもの頃に描いていた、カッコいい大人とは違っていた。 『このままここを一生の仕事場と決めてしまっていいのか?』 なんのひっかかりもなく、自分の仕事はこれだと堂々と言えるのだろうか。 ケンジはずっとモヤモヤを抱えていたのだ。 そんなある日、宇宙飛行士募集の広告を、妻のユキが見つけてくれた。 大学時代から一緒にいるユキは、ケンジがずっと宇宙へ行きたいと思っていたことを覚えていてくれたのだ。 記事を切り抜きながら受けるか迷っていると、ユキが言った。 「受けた方がいいね、受けないよりは」 その日からケンジの意識

  • S01E36 踊る宇宙飛行士

    • December 9, 2012
    • YTV (JP)

    せりかは伊東凜平の墓の前に立つと、備えられている日記を手に取り、子どもの頃を思い出していた。 せりかの父・凛平は、細胞などを検査する病理医だった。 そのため、せりかはよく顕微鏡を覗かせてもらい、そこに見える小宇宙に感動していたのだ。 凛平の部屋には宇宙関連のポスターや本があり、 『行けるものなら宇宙にも行ってみたい』と言っていた。 せりかはそんな凛平に、大きく影響を受けていたのである。 しかし、凛平は突然体調を崩してしまう。 ダンスの発表会を見に来て欲しかったせりかは、早く退院してほしいと懇願する。 凛平もそれまでには退院すると言っていたのだが――。 退院は発表会には間に合わなかった。 いまだ病床の凛平は、見舞いに来たせりかに頼みごとをする。 『日記を書いてくれないか』 退院するまでの間でいい、せりかにとって毎日がどんな日だったのか、それだけ知りたいということだった。 せりかは約束を守り、日記を書き続けた。 だが、凛平はなかなか退院することができなかった。 原因がわからない難病――ALS(筋萎縮性側索硬化症)だったのだ。 筋肉がやせて力がなくなり、最後は呼吸の筋肉も働かなくなる。 大多数の人は、おおよそ2年から5年で亡くなってしまう病だという。 せりかは凛平を助けたい一心で勉強をし、思いを決める。 『宇宙飛行士になる――』 宇宙には重力がなく、きれいなタンパク質の結晶を作ることができ、そのため脳の病気の原因も地上よりちゃんと研究できると知ったからだった。 宇宙ならば治療法も見つかるかもしれない、凛平の病気も治せるかもし

  • S01E37 公園におっさん2人

    • December 16, 2012
    • YTV (JP)

    JAXAの合格発表を待つため日本に帰国した六太は、この2~3日、プチ幸運が異常に続いていた。引き出しの奥から商品券が現れたり、合計額が777円になったり、小銭がピッタリだったり、茶柱が必要以上に立ったり――。 『逆に怖い!! 逆に不吉!!』 六太が合格するかどうかは、もう運に頼るしかない。 にも関わらず、限られている運はどんどん減るばかり。 やけについている日々に、六太の不安は募るばかりだった。 その頃、受験者の一人、溝口大和の部屋では――。 『残念ながら今回は、不合格となりました』 JAXA職員・星加からの電話で、溝口は不合格となったのである。 理由を問いただす溝口に、星加は言う。 溝口はリーダーとしてこれからどんな職場でもトップに立てる人材だと思う――だが一つ、足りないことがある『仲間に頼る』ということだ――と。 それを聞き、溝口は閉鎖ボックスでの試験を思い出していた。 『初めて僕に反対意見を言う奴が現れた』 溝口よりも大人な、ケンジのことだった。 『真壁ケンジ……――真壁は合格だろう。そうでなきゃ、困る……』 一方、南波家リビングでは――。 幸か不幸か、おでこをケガして絆創膏を貼った六太が、「う~ん」と腕を組み、電話機の前で悩んでいた。連絡がくる予定の時間を、もう2時間以上も過ぎていたのだ。 『忘れられてる……? もしかして……』 ――とその時、ようやく、プルルル! と電話が鳴った。 内容は、星加による『呼び出し』だった。 六太が公園に着くと、大勢の遊ぶ子供たちの中で違和感を発しているおっさん・星加がいた。

  • S01E38 11件目のメール

    • December 23, 2012
    • YTV (JP)

    星加から直接合格発表を聞いた六太は、記者会見会場へと向かっていた。 遅れて到着した六太を壇上で待っていたのは、ケンジ、せりか、絵名、新田。 六太を含むこの5名が、新しい宇宙飛行士として合格したのだ。 会場は歓声と拍手で大盛り上がり。 しかし六太はいまだ夢心地で、『自分が宇宙飛行士になれる』という実感がえられないでいた。 そして居酒屋での祝賀会。 六太の携帯には祝いのメッセージメールが何件も届いていた。 なかでも『やっさん』こと古谷からは10件も来ており、その内容は――。 『なんやその答え! サル以下の発想やな!』 『ジブン一人だけ 顔がニヤケてるぞ』 など、ほとんどが六太に対するツッコミだった。 そのすぐ後、今度は福田が祝いにかけつけてくれた。 福田は六太、せりか、新田の合格が自分のことのように嬉しくなり、思わずテレビの前で泣いてしまったとのこと。 それはきっと古谷も同じだったはずだと、みんなで祝杯をあげるのだった。 店内の喧噪の中、宴会の時間は過ぎ――。 一人夜空の月を見ながらトイレで休憩をしていた六太は、いまだに合格の実感が得られずにいた。 そこに響く携帯のバイブ音。また古谷からのメールだった。 その文面は――。 『そーいえば大事なこと言い忘れてたわ。合格おめでとう』 六太は、立ち尽くしたままその言葉を受け止めた。 そしてさらに文面は続き――。 『閉鎖ボックスで2人を決めなあかんかった時、俺が言ったこと覚えてるか? 俺の中ではもう2人は決まってる。この2人しか考えられへんて。あれな……新田と――南波のことや。その2人

  • S01E39 月の錯覚

    • January 6, 2013
    • YTV (JP)

    見事、宇宙飛行士の候補生として採用された、六太、せりか、ケンジ、絵名、新田の5名は、JAXAの入社式のあと、理事長である茄子田から、人という字に例えられた深い話を聞かされていた。 「人という字は、人と人とが互いに支え合って生きている! ――みなさんも一度は思った事でしょう。支え合ってるか!? ――と!』 茄子田はホワイトボードに書かれた「人」の線の短い方を指し、言葉を続けた。 「どぉ~~見てもこっちの負担が大きいだろうと! つまり私が言いたいのは、人という字は支え合っているのではない。支える者がいて、その上に立つ者がいる」 そしてもう一度「人」の線の短い方を指し――。 「我々JAXA職員のほとんどはこっち」 今度は「人」の線の長い方を指した。 「あなた方宇宙飛行士は――こっちです!」 茄子田は、ほとんどの職員は飛行士を支える発射台に過ぎないが、飛行士たちを宇宙へ送り出すためならば全力で支えていく覚悟がある、と六太たちに力説したのだ。 候補生たちは、これから約1カ月間、新入社員研修と日本国内でのオリエンテーションを受け、そのあとNASAでの基礎訓練を1年半から2年間続ける予定となっている。 その訓練の道中で気付くであろう、支える側の人たちの想い。 茄子田の言葉で、六太たちの気持ちはきっちりと引き締められていた。 一方、月では無人探査機・ギブソンとの通信が途絶えていた。 管制から連絡を受けた日々人とダミアンは、ギブソンを見つけ出して修理するため、基地を離れることとなった。 バギーで月面を走る日々人たち。 会話は弾んで

  • S01E40 天国で地獄

    • January 13, 2013
    • YTV (JP)

    通信が途切れた無人探査機ギブソンを捜索するため、月面をバギーで走行する日々人とダミアン。 道中では楽しげな会話もしていたが――慣れない視界のせいで乗っていたバギーが深い谷へと突進、そのまま一気に暗闇へと姿を消してしまった。 気づくと、日々人が落ちたのは太陽光の届かない暗い谷底だった。 衝撃で朦朧とする意識の中、日々人は大先輩であるブライアンにかつて質問されたことを思い出す。 『自分が死んだらどうなるか――天国と地獄はあると思うか?』 日々人の答えは『ない』だった。 天国も地獄も、生きている時にみるものだと思っていたのだ。 起き上がると、日々人は冷静に自分の置かれた状況を把握した。 まず宇宙服の酸素はメインタンクだけで10時間は持つようだった。 救援までは約4時間。 辺りは真っ暗で、ダミアンの姿はどこにもなかった。 不安は募る一方だが、ふと見上げると頭上には目映いばかりの星空が広がっていた。 『めんどくせー場所だな、ここは地獄のくせに天国に見える』 深い闇に落ちたせいで死ぬほど星がキレイに見えたのだ。 しばらくすると、捜していた無人探査機ギブソンを見つけることができた。 そしてその前方に、幸運にもダミアンが放った照明弾を確認した。 なんとかダミアンの傍まで駆け寄り、その安否を確かめる日々人。 ダミアンは足をケガして立てなくなっており、音声機能と体温を調節する循環機能も故障してしまったようだった。 ダミアンは日々人の足手まといにならないよう『自分を置いていけ』と伝える。 そんな彼を前に、日々人はダミアンの息子アランの

  • S01E41 あと80分の命

    • January 20, 2013
    • YTV (JP)

    「我々がダミアンとヒビトにしてやれること――2人とも必ず生きて帰ると信じること」 いまだ通信が途絶えたままの日々人たちを救出しようと、クラウドの言葉に一丸となるNASA職員たち。 救出に使用するビートルの充電を待っている間、吾妻の提案で、今すぐ動かせる無人ローバー・BRIAN3号を向かわせることとなった。 月面の谷底では――。 『メインタンク酸素残量ゼロ……予備タンク酸素残量……80分……!』 崖を上ろうとした際に酸素タンクを破損してしまった日々人は、救出までの時間を考え愕然としていた。 『俺は……助からないかもしれない……』 しかし、日々人が子どもの頃、素直に月へ行きたいと思えたのは、アポロの飛行士たちがちゃんと無事に帰ってきたからである。 これから宇宙を目指す子どもたちのためにも、日々人は諦めるわけにはいかなかった。 時間をかけ、再度崖を上り、ギブソンを使ってダミアンを運ぶ日々人。 凍え続けるダミアンの体を温めるためにも、早くひなたに行かなければならないのだ。 日々人はギブソンの上にダミアンをロープで固定し、緩やかな斜面を駆け出した。 『酸素残量、あと40分!』 一方つくば宇宙センターでも、日々人を救おうと星加たちが3Dマップを作成し、奮闘していた。 そこに、連絡を受けた六太が駆けつけた。 日々人たちの現状を聞きくや否や、地図の谷の端を指すと――。 「ヒューストンに頼めませんか、ビートルの行き先をもっとこっちの方に変更してもらえないか……」 その位置は2人が落ちた位置から20キロも離れた場所。 2人が緩やか

  • S01E42 日々人の選択

    • January 27, 2013
    • YTV (JP)

    凍え続けるダミアンをギブソンに乗せ、太陽の光があたる場所を目指して崖の斜面を走る日々人。 だが崖上まではまだ距離があるにも関わらず、ダミアンの鼓動はどんどん早くなっていた。 『今すぐ熱をつくらねえと。どーすりゃいい……!? 熱……! 熱……!』 なにかすぐ対応しなければと持ち物を確認したところ、日々人は自分の宇宙服に取り付けられた照明弾に気づいた。 そして、照明弾の発光熱で石を熱くし、それをダミアンの宇宙服に固定すれば、凍り付いた循環水を溶かせるかもしれないと考える。 残された照明弾は一つだけ、使ってしまえば自分たちの居場所がフレディたちに知らせることができない―― が、日々人はダミアンの命を最優先に考え、すぐさま行動。 なんとか時間を稼ぎ、ダミアンを崖上の太陽の光が当たる場所へと運ぶことができた。 一方NASAでは、日々人たちが崖から脱出したことにより、宇宙服の信号を捕えることができていた。 その信号の場所は、バギーが落ちた地点から20キロ移動した所、六太が地図を見て推測し、JAXAが伝えてきたポイントだった。 日々人たちの生存にほっとしたのもつかの間、いままで管制が知らなかった問題が発覚する。 ビートルが救出するまで20分はかかるのに、日々人の酸素が残り10分ももたないのだ。 ダミアンを安全な場所へ移すと、日々人は自分の置かれた状況を重く受け止め、一人月面を歩きだした。 どうせ死ぬなら満天の星空を見て死にたいと思い、再び谷底に落ちようと思ったのだ。 『俺の死体を引き上げるのにフレディたちに面倒かけちまうが、まあ

  • S01E43 ブライアン

    • February 3, 2013
    • YTV (JP)

    酸素残量が8分を切った日々人。 ダミアンを直射日光があたらない安全な場所へ移すと、日々人はひとり月面を歩きだしたていた。どうせ死ぬなら満天の星空を見て死にたいと思い、よく星が見えた谷底に落ちようと思ったのだ。 だが、崖から飛び降りようとしたその時、日々人の視界の端にピカッと光るモノが見えた。 それは、月面着陸直後に見た謎の光のよう。 『どうせ死ぬなら、謎の光の正体を知ってからがいい……』 そう思い、日々人はゆっくりと光の方へと近づいた。 そこにはなんと、胸にBRIANと手書きされた、宇宙飛行士のフィギュアが立っていた。 『ブライ……アン……』 ブライアン・Jは、日々人にとって親父のような、兄貴のような、あるいは友人のような大先輩だった。 新人だった日々人を自分の控えに推薦し、宇宙飛行士に必要なことを教えたのもブライアンだったのだ。 彼の口癖は――『来てやったぞ、ヒビト。助けてやろうか? 大先輩ブライアン・Jが』――。 日々人が手にしたフィギュアの背中には、それぞれフィギュアを持って並んでいる少年時代のブライアンとエディの写真が貼られていた。 『そうか、ブライアンがこれをここに……』 このフィギュアは、ブライアンがいつか兄弟で月面に立つことを願って置いたものだったのだ。 思わぬ所でブライアンの大切な物を見ることができた日々人だったが、酸素は残り1分にまで減っていた。 酸素不足で息苦しさが増し、目もうつろになり、その脳裏には幻聴ともいえる声が聞こえてくるほど。 やがて幻影まで見えてきた。 『来てやったぞ、ヒビト、助けてやろ

  • S01E44 3人の宇宙飛行士

    • February 10, 2013
    • YTV (JP)

    自らの状況を重く受け止め、死を覚悟した日々人。 しかしその直後、思わぬ所で大先輩・ブライアンが残した宝物に出会うことができた。 だがすでに酸素残量はゼロ、酸素不足の息苦しさから、日々人にはまたもや幻聴が聞こえていた。 『助けてやろうか? ヒビト』 薄れゆく意識、その中で見つめた先には、なんとブライアン・Jが立っていた。 『来てやったぞ、ヒビト。この大先輩ブライアン・Jが――』 そして歩いてくるブライアンの背後にも、何かが見えてきた。 それはプレートに『BRIAN―03』と書かれた、酸素を生成できるローバー・ブライアン3号。 「やっぱり……来てくれるんだな、あんたは」 こうして日々人は、今にも気を失いそうな状態の中で必死に手を伸ばし、なんとかブライアン3号から酸素をもらうことができた。 NASAのコントロールセンターでは、日々人の無事を確認し、ほっとした様子のクラウドが吾妻に話しかけていた。 実は吾妻は、六太の判断を信じ、自ら指揮をとって20キロ離れた場所にブライアン3号を移動させていたのだ。 「アズマ……君のおかげだ。君がここにいてくれたから、ヒビトを助けられた」 クラウドの言葉に吾妻が返す。 「俺の判断じゃないですよ。ヒビトの兄の判断です――ナンバムッタ。もうすぐ、我々の仲間になる男です」 2日後――。ずっと日々人を心配していた六太は、ようやく交信を許され、JAXAのモニターに向かっていた。 画面の中の日々人は意外にも元気そうで、自分は3人の宇宙飛行士に助けられたと言う。 1人目は月面に人形を置いてくれ、自分を呼び止

  • S01E45 5人の青レンジャー

    • February 17, 2013
    • YTV (JP)

    月面で遭難するも、ギリギリの所で命を取りとめることができた日々人。 その無事を確認した六太は、日々人と交わした『一緒に月へ行く』約束を果たすため、これからNASAで行われる基礎訓練を前に、日本国内での新入社員研修とオリエンテーションを続けていた。 そんなある日、六太はシャロンに「見せたいものがある」と呼び出される。 天文台へと来た六太は、そこでシャロンから一冊のファイルを渡されたのだ。 それには月面望遠鏡の計画図が載っており、シャロンは嬉しそうに語りだした。 「やっと予算がこっちにも回ってきてね。ウチの天文チームが長年練ってきた計画が、ようやく動き出すのよ」 話を聞き、子どもの頃を思い出す六太。 シャロンが夢見る月面望遠鏡は、これまでの宇宙望遠鏡よりも遥かに遠い、深宇宙を見ることができるもの。 完成すればきっと世界の天文学は大きく飛躍し、新たな発見が相次ぐはずのものだった。 その上、シャロンには大きな願いがあったのだ。 亡くなった最愛の夫・金子進一が発見した小惑星、『シャロン』の姿を、少しでも大きく見たいと思っていたのである。 子どもの頃、六太がシャロンと交わした約束は、『自分が月へ行き、シャロンの望遠鏡を建てる』こと。 シャロンとの約束を再確認した六太は、『やるべきことはたくさんある!』と張り切っていた。 数日後、JAXAには、ブルースーツ姿の候補生たちが揃い、壇上に立った茄子田と紫が今後の予定を伝えていた。 いよいよ候補生たちは明日、日本を出発し、ヒューストンでの合同基礎訓練が始めるのである。 合同基礎訓練では、

  • SPECIAL 0x2 宇宙兄弟 一点のひかり

    • February 22, 2013
    • YTV (JP)
  • S01E46 せっかちやろうナンバーワン

    • February 24, 2013
    • YTV (JP)

    無事、宇宙飛行士候補生となり、青いジャンプスーツに袖を通すことを許された六太たちは、ヒューストンにあるNASAに向かうため、国際空港へと集まっていた。 これからの2年間、短期間で一流の宇宙飛行士になるため、各国の新人宇宙飛行士候補生と一緒に過酷な合同基礎訓練を受ける。 自分も負けられないと張り切る六太は、さっそく紫にもらったメール、『空港へ着いたらすぐジャンプスーツに着替えよう!』に従い、空港のトイレでジャンプスーツに着替えていた。 しかし、ジャンプスーツは宇宙飛行士の証、空港の広いロビー内では目立ちすぎる。 早くみんなと合流したいとキョロキョロする六太。 ようやくケンジたちと合流することができたのだが……六太以外は誰一人としてジャンプスーツを着ていなかった。 驚く六太、慌てる六太、焦る六太。 実は六太は、メールの文面を最後まで読んでおらず、見事に紫のいたずらに引っかかってしまったのだ。 同じメールを紫からもらったケンジは言う。 「僕なりに考えた結果……『最後まで見落とさず確認しろ』、すなわち、『常に注意深く物事を観察すべし』――という戒めと」 つまり、ジャンプスーツを着てくる必要まではないが、着ている気持ちでいろ、そして候補生としての自覚を忘れるなという意味ととらえたのだ。 すかさず、六太は心の中で突っ込んだ。 『そんな深い意味ねーよっ!』――と。 テキサスに到着すると、元気な小町がせりかたちを宿泊先のホテルまで先導した。 明日からは各自の部屋探し。 10日後には訓練が始まるため、それまで生活を整えなくてはならない

  • S01E47 最初の約束

    • March 3, 2013
    • YTV (JP)

    宇宙飛行士候補生、通称・アスキャンとなった六太たちは、2年間の合同基礎訓練を受けるため、アメリカ・ヒューストンにやってきていた。 本格的な訓練まではまだ時間があるため、各自住む家を決めたりと、生活を安定させていたのだが……。 六太には、ずっと気になっていることがあった。 それは、ケンジが言いかけた『紫に聞いた気になる話』のこと。 どうやらこれからの訓練中に、『なにか』があるらしいのだ。 ケンジはいま六太にきかせる話ではないと判断し、言いかけてやめたのだが……。 『余計気になる! チクショーケンジのヤロウ……紫さんに一体何をきいたんだよ……!?』 どうしても気になった六太は、直接、紫に聞きに行くことにした。 ジョンソン宇宙センターに来た六太は、さっそく紫を捕まえ、話を聞こうとする。 気になる話の内容は、『2年間の訓練中には、必ず脱落者が出る』ということだった。 どうやら、いくら宇宙へ行きたくても、訓練中に『自分には宇宙は向いてない』とわかり、諦める者がいるらしいのだ。 そんな話を聞き終わり、若干ヨロヨロしてしまう六太。 自分が『宇宙に向いてない者』だったらと、不安になってしまったのだ。 自分が諦めなければいいだけの話だと、なんとか自分に言い聞かせるが、不安は募るばかり。 後日、六太はアスキャンの歓迎会に出席していた。 そこでジェーソン・バトラー室長から報告があり、いま月にいる日々人が勲章を授与されたことを知らされた。 日々人の功績の素晴らしい点は2点、傷を負った仲間を助けたこと、自らも生きて帰ったこと。 六太たちはバト

  • S01E48 心にいつも万歩計を

    • March 10, 2013
    • YTV (JP)

    アスキャンの合同訓練のため、ヒューストンにやってきた六太たち。 歓迎会も開かれ、占いが得意なアマンティとも意気投合。 六太もさっそく占いをしてもらい、今後の展望的なことをみてもらったのだが……アマンティは何やら不穏な表情を浮かべてしまう。 六太の未来に、なにかよからぬものが見えたらしいのだ。 そして後日、いよいよ合同訓練が開始された。 訓練教官、通称・スポンサーは、先輩宇宙飛行士である、ビンセント・ボールドと、ラリー・パイソンの2名。 バスで砂漠へ連れてこられた六太たちは、1チーム6人制、全5チームに別れることになった。 六太はE班、ケンジ、せりか、絵名、新田、アマンティの6人。 気温は40度。 背負う荷物は、1人平均12キロ。 これから6日間、アスキャンたちは毎日リーダーを変えながら、70キロ先の目的地「アマリロ」まで、サバイバル生活をしながら歩くのだ。 初日のリーダーはケンジ。 まずは自分たちの指導員と合流するため、照りつける陽射しのもと、砂漠を進んでいた。 道中、六太がサソリに襲われたりもしたが、アマンティは、「六太はサソリには刺されない」と断言。 アマンティがそう言うのだから問題ないと、自分を納得させる六太だったが――。 『サソリ「には」刺されません……でも何かには、刺されるんだ――!』 と考えすぎていた。 ようやく指導員と合流することができた六太たち。 指導員は、先輩宇宙飛行士であるマイク・デイビスと、ローリー・クオモだった。 久々に再会したローリーに喜ぶ六太だが、ローリーは知らんぷり。 抑圧的な口調で厳しくや

  • S01E49 リーダー新田

    • March 17, 2013
    • YTV (JP)

    最初の合同訓練はサバイバルだった。アスキャンの30名は、これから6日間、チームワークの理解を高め、自力で生活する術を身につけながら、70キロ先の目的地『アマリロ』まで歩くことになったのだ。 しかし、初日から最下位になってしまった六太たちE班。最下位チームは、1日の終わりに、リーダー以外の1人が罰を受けなければならない。どんな罰かわからない状況の中、六太は自ら実験台になるとカッコよく宣言する。しかしその表情は、実はこすい顔になっており……。 『どーせ罰が回ってくるなら、まだ体力のあるうちにやっとこう…!』 と思っていた。 最下位の罰の内容はシンプルだった。ジャスト1時間、気をつけの姿勢を保ったまま立ち続けるのだ。しかし、これが見た目に反してとてもキツイ。六太の両足はプルプルと震えがきていた。それを座って見守っているせりか、絵名、新田、アマンティ。ケンジは六太の傍らに立っていて、自分を責めていた。 「本当に……ごめんムッ君。遅れた責任は僕にあるのに」 しかし六太は言う。 「初日のリーダーを買って出たケンジはやっぱ……さすがだ」 見本があるわけではない、もし自分がやったら、何やっていいかも分からないままグダグダになっていたというのだ。言い終わり、ふと空を見上げる六太。一同の頭上には、満天の星が広がっていた――。 サバイバル訓練4日目。全体の半分まではきていたが、E班はまいだ最下位だった。この日のリーダーは新田。誰よりも早く宇宙へ行きたい新田は、順位がつけられるとわかっているものなら、全部トップを狙わなきゃダメだと焦

  • S01E50 ニッタとムッタ

    • March 24, 2013
    • YTV (JP)

    サバイバル訓練5日目。 六太たちE班の順位は4位まで上がっていたが、ひとつ問題が起きていた。新田が大事に持っていた携帯を、ここに来るまでのどこかで落としてしまったらしいのだ。聞けば新田は、この訓練の期間中に『大事な電話があるから常に携帯を持たせてくれ』と、訓練教官に頼みこんでいたらしい。しかもその電話は、今晩かかってくる予定とのことだった。新田は自分だけ取りに戻ると言い出すが、この日のリーダ―である六太は、みんなで進むことを決める。夜になれば、携帯は着信でチカチカ点滅するはずである。そのことに気付いた六太は、夜になってからみつけにいくのが得策と思い、先へ進む判断をしたのだ。 その夜――。 満点の星空の中、六太と新田は昼間歩いてきた砂漠の道を戻っていた。その道中新田は、なぜ自分と戻る気になったのか六太に疑問を投げかけた。 「この訓練で誰より1位を目指してたのは新田だろ。その新田が順位よりも今大事なもんがあるっていうんなら……そっちを優先すべきなんだろうなって思っただけだ」 それを聞き、重い口を開く新田。 「……俺にも一人、弟がいる」 隠すつもりはなかったが、南波日々人と比べられるのが嫌で言い出せなかったというのだ。 今晩電話をかけてくるのがその弟で、話すのは2年ぶりになるという。 新田の弟の名前はカズヤ、25歳。 部屋から一切出ず、出ない理由をきいても、「僕にもわからない」としか答えない。 新田は、兄としてずっと何とかしてやりたいと思っていたが、今まで何度も、そのチャンスを逃してしまっていた。 たった1本の電話で、どう

  • S01E51 生きた石コロ

    • March 31, 2013
    • YTV (JP)

    夜の砂漠を戻り、ようやく携帯電話を捜し出すことができた六太と新田。 だが時はすでに遅く、新田がずっと待っていた、弟・カズヤからの着信には、間に合わせることができなかった。 キャンプ場所へと戻る中、肩を落とす新田に、『カズヤともし話せたら、何を話すつもりだったのか』と尋ねる六太。 新田は重い口を開くと、カズヤも住めるようにヒューストンに広い家を借りたこと、『気が向いたら遊びに来い』くらいは言うつもりだったこと、そして、南波兄弟を羨ましく思っていたことを告白した。 それを聞いた六太は、出来過ぎた弟を持つと苦労すること、新田が羨むほど素敵な兄弟でもないこと、そして、お互い様だから言わせてもらうと前置きした後、新田のような弟を導ける兄になりたかったことを告白した。 その頃カズヤは、今晩アメリカ上空で見える流星群の情報を、JAXAのホームページで確認していた。 カズヤもまた、アメリカにいる兄のことを想っていたのだ。 そして何気なく、アスキャンたちのメッセージ動画に、新田の名前を見つけると――。 『今……自分の居場所がないと強く感じていて――小さな世界に閉じこもっている人がいたら、聞いてください。それこそが、外に飛び出す原動力です』 思わず目頭を熱くするカズヤ。 それは、『一歩踏み出す勇気をもって欲しい』という、兄・新田からのメッセージだった。 電話では話すことができなかったが、それでも新田の想いはカズヤに伝わっていた。 そして――。 長い道のりの末、六太たちはようやくキャンプ場所へと戻ってきていた。 新田はみんなに謝ると

Season 2

  • S02E01 兄とは常に

    • April 6, 2013
    • YTV (JP)

    宇宙飛行士候補生・アスキャンの、サバイバル訓練5日目の夜。 砂漠のど真ん中でキャンプをしていた六太は、たくさんの流星群を見上げながら、子どもの頃を思い出していた――。 2006年7月9日。 星空の下、録音機を持って調査遊びをしていた六太と日々人は、偶然にも月へ向かうUFOを目撃し、『二人で一緒に宇宙飛行士になる』と、約束を交わした。 そして2025年5月――。 日々人は約束を守って宇宙飛行士になったが、六太は自動車会社をリストラされ、職探しの真っ最中となっていた。 『兄とは常に弟の先に行ってなければならない』 なのに何をやっても六太を追い越し、先を行くのは日々人だった。 六太は落ち込んでいた。自分は何がやりたかったのか……と。 そんな時、母に事情を聞いた日々人からメールが来る。 『2006年の7月9日。ムッちゃんが録ってたテープを聴いてみろよ』 テープを探し出して聴くと、そこにはハッキリとした言葉で、子どもの頃の『約束』が残されていた。 テープを聴いて以来、六太は日増しに宇宙への想いを膨らませていた。そしてある日、なぜか自分宛てにJAXAから封筒が届く。それは新規宇宙飛行士選抜試験の、書類選考合格通知。 実は日々人が母に頼み、JAXAに六太の履歴書を提出していたのだ。 しかし六太は、次の選考試験を受けるか悩んでいた。その気持ちを察したシャロンは、『今のあなたにとって、一番金ピカなことは何?』と助言する。六太はようやく思い出す。『月にシャロンの望遠鏡を建てたい』、そう思っていたことを。 一カ月後――見事筆記試験に合

  • S02E02 生きて二人で月に立とう

    • April 13, 2013
    • YTV (JP)

    日々人が月に来て2カ月――。 「俺ももう全然行けるんだけど、外」 船外活動するフレディとリンダを眺め、日々人が羨ましそうにつぶやいた。 あの事故以来、日々人には船外活動の許可がおりないでいたのだ。 サポート中のバディと話しながら、月に来てからのことを振り返る日々人。 2カ月よりもっと長い間月にいる気がするのは、やはりあの事故のせいのようだった――。 日々人たちが月に来て間もなくの頃――。 無人探査機・ギブソンとの通信が途絶えた。 管制からその連絡を受けた日々人とダミアンは、ギブソンを見つけ出して修理するため、基地を離れることとなったのだ。 しかしその途中、日々人とダミアンが乗ったバギーは、突然の衝撃に見舞われてしまう。 気づくと、そこは太陽光の届かない暗い谷底だった。 一緒にいたダミアンは足をケガして立てなくなっており、音声機能と体温を調節する循環機能も故障してしまったようだった。 そして日々人も、酸素のメインタンクを脱出の際に破損してしまい、危険な状態となってしまう。 それでも日々人は諦めず、凍え続けるダミアンを発見したギブソンに乗せ、太陽の光があたる安全な場所へと連れて行く。 だがその時にはもう、日々人の酸素は残りわずかとなっていた。 どう考えても、基地からの救援は間に合いそうにない。 どうせ死ぬなら満点の星空を見て死にたいと思い、日々人は再び谷底へと向かおうとしていた。 しかしその途中、ピカッと光るモノを視界の端でとらえる。 気になって光に近づくと、それは大先輩ブライアンが『いつか兄弟で月に立てるように』と望ん

  • S02E03 俺には運がある?

    • April 20, 2013
    • YTV (JP)

    サバイバル訓練、5日目の夜――。 六太は焚き火を眺めながら思っていた。 『……なんか見えるな……いろんなもんに』 六太の視線の先には長いサボテンがあり、それが手前の焚き火の形と合わさって、ロケットと噴射炎に見えてきたのだった。その光景から六太は、日々人を乗せたロケット・マルスワンが飛び立つ姿と、その時一緒にいたデニール・ヤングの言葉を思い出す。 『――空は誰の物でもない。だが人生は自分のもの。人生はコントロールがきく』 「あれから俺は宇宙飛行士になって……少しは人生のコントロール、効いてんのか? いや……俺は……どこへ行くんだろう……」 さらに六太は、宇宙飛行士としての一歩を踏み出し始めた日のことを思い出していた――。 『我々JAXAは君を――宇宙飛行士として迎えます――おめでとう! 君には運がある!』 宇宙飛行士選抜試験・合格発表の日、六太はJAXAの職員・星加に呼び出され、近所の公園で合格結果を聞いたのだ。 そしてその数カ月後――。 六太は日々人と交わした『一緒に月へ行く』約束を果たすため、ヒューストンでの合同基礎訓練へ望んでいた。合同基礎訓練とは、各国の新人宇宙飛行士候補生がNASAに集まり、一緒に同じメニューの訓練をこなすというもの。ヒューストンへ着くと、さっそくNASA主催の歓迎会で、新たな仲間・占いがことごとく当たるという、アマンティと出会った。軽い気持ちで六太も占ってもらったのだが、明らかに不穏な眼差しを見せるアマンティに不安が募る。一体、六太の未来になにをみたというのだろうか――? ――その謎が

  • S02E04 遠すぎるゴール

    • April 27, 2013
    • YTV (JP)

    宇宙飛行士候補生・アスキャンが、砂漠70キロを踏破するサバイバル訓練の最終日。 にも関わらず、六太は高熱にうなされ、ダウンしてしまっていた。 一人でもリタイアすれば、仲間全員がリタイアしたことと同じ。 E班全員がリタイアするか、それとも今日中のゴールを目指して進むか、六太は判断を迫られていた。 しかしこの日のリーダーは、未来が見えるアマンティ。 彼女にはわかっていた、六太が続けるということを。 「南波の荷物は、俺が全部持つよ。当然だ」 六太の具合が悪くなったのは自分のせいと思っていた新田は、出発の時、六太のリュックを持ち上げ、一人で背負おうとしていた。 しかしケンジもせりかも、仲間全員、六太の荷物を持ち、サポートする気満々。 仲間の優しさに救われ、六太は思う。 「最下位でもなんでもいいから絶対……ゴールまで歩いてやる。1位と最下位の差なんて――大したことねーんだよ」 辛い道中だったが、ようやくゴールが見えてきた。 「着いた……これでようやく次の訓練に――ん?」 六太たちの視線の先に、上空からパラシュートの付いた物体が落ちてくる。 やがて車道脇の乾いた大地にドシュッと落ちる――と、パラシュートの先についていた物体、留め金がバカッと外れ、ザザッとタイヤのようなもの(キャンサット)があたりを走行しはじめた。 それはサバイバル訓練をトップでゴールしたA班のもの。 カムバックコンペティションに参戦するため、早々に研究している真っ最中だったのだ。 カムバックコンペティションとは、昔から開催されている、宇宙好きの学生たちを中心とし

  • S02E05 酒の約束

    • May 4, 2013
    • YTV (JP)

    六太たち宇宙飛行士候補生の次なる訓練は、カムバックコンペティションへの挑戦だった。 カムバックコンペティションとは、パラシュートの展開システムや、自動制御のローバーを作り、どのくらい正確にゴールへたどり着けるかを競う大会である。 しかし最下位でゴールしたE班のサポート役は、全くサポートする気のない屁こき技術者、ピコ・ノートン。しかも完全な酔っ払いだったのだ。 ピコに不安を感じた六太とケンジは、ピコが所属するデンバー社の職員に、彼について話を聞くことにした。 職員によると、ピコは帰還船オリオンの開発を任されており、さらにパラシュートの展開システムを開発・製造するサブプロジェクトの総合責任者とのことだった。 しかも、日々人たちが帰りに乗るオリオンのパラシュートも、ピコが手掛けたものらしい。 職員は熱く語る。 ピコはただの酔っ払いではない、試行錯誤を繰り返し、やっと今の使えるパラシュートシステムに仕上げた技術者が、ピコ・ノートンなのだと。 気を取り直し、ローバーの制作を開始することにした六太たちE班。 ネットで調べた図面を頼りに、ボディらしきものを作ったのだが、一つ問題が浮上した。 E班は最下位チームのため、制作費は600ドルと一番低額で、このままだと1機しか作れないのである。 六太は言う、「失敗して壊れるの前提で、最低でも2機作れるくらいの余裕があった方がいい。モノ作りには失敗することにかける金と労力が必要だ。失敗を知って乗り越えたモノなら、それはいいモノだ」と。 六太の言葉を聞いたピコは、ブライアンが亡くなった、アレ

  • S02E06 技術者のスイッチ

    • May 11, 2013
    • YTV (JP)

    六太たちE班の宇宙飛行士候補生は、「カムバックコンペティション」に挑戦するため、決められた予算内でキャンサット作りに励んでいた。 しかし、パラシュートがうまく開かなかったり、ローバーが障害物を越えられず、すぐ止まってしまうという問題が発生してしまう。 みんなが頭を悩ませる中、六太は車づくりの知識と大胆な発想力を駆使し、プログラムの変更とタイヤをスポンジで作ることで打開しようとする。 スポンジならギュッと縮めて筒に入れられ、走る時には十分な大きさに膨らむ、軽いし安いし、加工もしやすい。着地の時のショックもやわらげることができ、いいこと尽くしである。 これまで様子を見ているだけだったピコは、自分ができなかった発想と、失敗を乗り越えて良い物を作ろうとする六太の考え方に衝撃を受けた。 「パラシュートの『パ』ぐらいは教えてやってもいいかな」 ピコはパラシュートの布を素早くキレイに畳みながら、作業の心構えを話し始める。 それは、キャンサットが本物の宇宙船と考え、自分の隣にいる宇宙飛行士を一緒に乗せて打ち上げるつもりで、全部の作業をやれということ。 そして、隣の男の命を預かったつもりで、パラシュートは女子が畳む方がより良いことを教えた。 「パラシュートってのは、愛で開く」 その昔、戦場へ行った夫やボーイフレンドに無事に帰ってきて欲しいという願掛けの意味で、パラシュートが開く生命線になる収納作業は女性がやっていた。 成功率を少しでも上げるため、ゲン担ぎとして女性がやったほうが良いらしいのだ。 ピコのアドバイスと、六太の大胆な発

  • S02E07 本気の失敗

    • May 18, 2013
    • YTV (JP)

    宇宙飛行士候補生たちが「カムバックコンペティション」へと挑戦する中、なぜか六太はピコに気に入られ、酒の席へと誘われていた。 集合場所である酒場へ向かっていると、駐車場で教官・ビンスと出くわす六太。聞けばビンスもピコと酒を飲むらしく、酒場まで車に乗せてくれることとなった。道すがら、猛スピードで車を運転しながら、ビンスは六太に質問を投げかける。 『君にとっての、敵は誰ですか?』 ビンスにとっての敵は、マスコミだという。 理由は、マスコミの大多数が宇宙開発、有人飛行を長い目で見てはくれないからだった。他にも、国の予算が有人に多く使われることに反対し、口をそろえて金のムダ遣いといい、無人機のみの宇宙開発を提唱する、科学者、ロボット業界、天文学者たち。有人飛行を邪魔する者は、ビンスにとってはみんな敵のようだった。六太は答えた。宇宙が好きで関わっているのなら、みんな仲間でいいのではないか――? 『俺の敵は、だいたい俺です』 自分の宇宙へ行きたいという夢を、さんざん邪魔して、足をひっぱり続けたのは、結局自分であり、そういうことに気付かせてくれたのが、天文学者のシャロンだった――と。 酒場でピコと合流すると、話題は六太の『失敗に前向きな性格』へと変わる。『本気の失敗には価値がある』と言い放つ六太に、ピコとビンスは少年時代共通の友達だった、リックのことを思い出していた。 ピコとビンスが生まれた町は、ミネソタ州・ポットヒルの田舎町。宇宙に憧れ、ロケットを作りに奮闘しながら、共通の友達リックは口癖のようにこう言っていた。 『本気の

  • S02E08 誓いのサイン

    • May 25, 2013
    • YTV (JP)

    宇宙飛行士候補生の訓練、カムバックコンペティションの準備をする中、なぜか六太は、サポート役のパラシュート技術者、ピコ・ノートンから飲みに行かないかと誘われる。 酒の席には候補生たちの教官であるビンセント・ボールドもおり、どうやら2人は、失敗に前向きな六太を、共通の親友・リックと重ねているらしかった。 リックとピコとビンスの子供時代――。 3人の夢は、いつか自分たちでロケットを作り、宇宙へ行くこと。 それは、『いつか宇宙へ行く』と毎日誓いを交わすほど、熱心だった。 しかし親や教師たちは、3人の夢に反対していた。 将来は鉱山で働くよう強く説得していたのだ。 ピコとビンスは反抗することが出来ず、宇宙への夢を諦めると言い出す。 『テンションの上がる仕事じゃねえが……鉱山技師も悪くない』 『宇宙への夢は最初から俺たちにはでかすぎた』 2人の諦めの言葉を聞き、リックは激高した。 『こんなど田舎の街で宇宙に本気で憧れた3人が出遭えたんだ。俺はそれだけでも、奇跡だと思ってた。 拳を合わせる気がねえんならもういいよ。勝手に鉱山でもどこへでも行ってくれ――俺は絶対諦めねえからな』 それ以来、3人は決別してしまった。 そして――。 ビンスとピコが進学の説明会に出席した日の午後、リックは事故で死んでしまった。 乗用車に乗っていたリックは凍結した路面にハンドルを取られ、そのまま湖に突っ込んでしまったのだ。 ピコとビンスは、この日のことを死ぬほど後悔した。 後悔という言葉では、全く足りない程に――。 ISSが来る日――ピコとビンスは夜空を見上げ

  • S02E09 海人と宇宙人

    • June 1, 2013
    • YTV (JP)

    宇宙飛行士候補生の訓練として、カムバックコンペティションに参加することになった六太たちは、2週間の準備期間を経て、ついに大会当日を迎えていた。 しかし、六太たちE班には試練が待ち受けていた。局地的な雨によって、コースの一部がぬかるみになってしまっていたのだ。 E班のローバーはスポンジタイヤ。スポンジが水分を吸収してしまったら、負荷がかかって止まってしまうのだ。打ち上げまで時間がない。 六太たちは、スポンジタイヤを濡らさない方法を、早急に考えなければならなくなった。 宿泊していたホテルに戻り、なにか使えるものはないかと探す六太たち。 案内して貰った備品倉庫で、六太は気づく。 このコンペの訓練は、チームワークの向上だけが目的はないこと。 今体験しているのは、宇宙開発の縮小版であり、宇宙飛行士を無事に送るため、支える側の人達がやってきた仕事なのだ――と。 六太たちがコンペ会場のテントへ戻ってくると、すでにロケットの打ち上げが始まっていた。 「大丈夫だよ、みんな。想像では、うまくいってる!」 六太は、備品倉庫で手に入れた『シリコンボンド』をスポンジタイヤに塗ると、見事、水濡れを防止することに成功した。 コンペ結果発表――。 六太たちE班は、全体の5位になることができた。 1位のチームは、日本からきた海人チーム。 どのチームもゴールまで届かない中、海人チームのローバーは圧倒的なスピードで、ゴールフラッグに辿り着いたのである。 日本人同士ということもあり、気さくに話しかけてくれる海人チーム。 そしてなぜか、海人チームの上司が

  • S02E10 日々人を待つ人々

    • June 8, 2013
    • YTV (JP)

    日々人が月から帰ってくる――。 地球に帰還する時の命綱となるパラシュートを手がけたのは、ピコ・ノートン。六太たちが訓練として参加した、「カムバックコンペティション」のサポート役だ。しかし、今回は3年前のパラシュート事故以来、初めての月からの帰還である。事故を知る関係者の間には、緊張が走っていた。 その頃、日々人、リンダ、ダミアンは、着陸船アルタイルに乗り、月面を離れていた。月軌道上には地球への帰還船3機が回っており、日々人たちが乗って行ったオリオンと、ロシアチームのルーニエ2号、もう一つは予備として、2025年に無人で月に送られた、3人乗りのオリオンがあった。今回日々人たちが帰還船として乗り込むのが、この3人乗りのオリオンである。 日々人たちの帰還日――。 ピコは、自宅の洗面所でヒゲや髪を整え、見違えた姿になっていた。 なぜキッチリネクタイを締めるのか、と息子たちに聞かれると、ピコは言った。 「ネクタイを締める理由なんてのは、1コしかねえ、仕事が無事に終わった後に、緩めるためだ」 その顔は、『必ず日々人たちを地球へ帰す』、そう願掛けをしているかのようであった。 ジョンソン宇宙センター――。 管制室内には、大勢の管制官、宇宙飛行士、六太たち訓練生が集合していた。 そしてその外側の観覧室では、南波父母、ジェニファー、ピコが、日々人の帰りを今か今かと待ちわびていた。 そして――。 砂漠の真上に、パラシュートが全てキレイに開いたオリオンが、見事に降下してきた。 日々人たちは無事、地球に帰還できたのである。 大歓声の中、

  • S02E11 遥か遠くを望む人

    • June 15, 2013
    • YTV (JP)

    月から帰ってきた日々人は、地球の重力に慣れるため、リハビリを開始しようとしていた。寝て検査して運動してまた寝て、そういうサイクルがこの先45日間続くのである。 一方六太は、アマンティに『不安な未来の話の続き』を聞いていた。 「私が見たのは……ムッタがとても悲しんで……辛い思いをしている姿……」 六太に直接何かが起こるわけではないらしい。 「帰ってきたヒビトを見て分かったの、ヒビトもあなたと同じように――辛い思いをすると思う」 どうやら六太と日々人にとって大切な誰かが、重い病気になるらしいのだ――。 その頃、ゴダード宇宙飛行センターでは――。 天文学者であるシャロンが、宇宙開発についてプレゼンをしていた。 シャロンの提案は、NASAの宇宙飛行士に協力を依頼し、月面で望遠鏡を組み立ててもらおうというもの。 「我々天文学者には、遥か遠くまで行く力はありませんが、遥か遠くを見る力なら、我々に勝る者はいません。きっと実現できます。ここにいるみんなの力があれば――」 そして――。 六太たち宇宙飛行士候補生たちは、ジョンソン宇宙センターの近くにあるエリントンフィールド空港に来ていた。 宇宙飛行士に認定されるためには、ジェット機、T―38の操縦資格が必要なのだ。 航空力学に始まり、エンジンシステムなどのメカニック、基本的な航法に各種飛行ルールなど、覚えることは山ほどあるのである。 六太はジェット機に乗ることをずっと楽しみにしていた。 いつか見た日々人のように、六太も人生初のマッハを体験できるかもしれないのだ。 だがそんな気持ち

  • S02E12 若き日のドキドキ

    • June 22, 2013
    • YTV (JP)

    ジョンソン宇宙センター・講義室――。 宇宙飛行士として認定されるには、ジェット機、T―38の操縦資格が必要である。 そのため六太たち訓練生は、空軍の学生が3週間かけて習う内容を、3日間で覚えることとなった。さらに5日後には筆記テストが行われるらしく、そのテストの結果次第で今後の訓練の各種優先順位が決まってくるため、誰よりも早く月へ行きたいと思っていた六太は焦っていた。 「順位がつくものなら、常にトップを狙わねえと――!」 その頃、ゴダード宇宙飛行センター・カフェテラスでは――。 会議を終えた天文研究者たちとシャロンが、ワイワイと盛り上がっていた。 シャロンが提案した電波望遠鏡の計画に好感を持ち、同じ研究者であるモリソン博士らが話しかけてきてくれたのだ。しかもモリソンは、シャロンと同じく、思い入れのある小惑星の姿を、鮮明に見たいと願っているらしい。同じ志の仲間を見つけることができ、シャロンの計画は、一歩一歩実現に近づいていた。 そして――。 シャロンは日々人たちに会うため、ヒューストンへと移動する。 久々の再会に喜ぶシャロンだが、どうにも体調がよろしくない様子。 手に力が入らず、バランスも崩してばかりなのだ。念のため医者にも診てもらうが、異常なしとのこと。シャロン自身も時差ボケによる脱力感であると思っていたが、果たしてそうなのだろうか。 その夜――。 レストランでは、ケンジやせりか、南波父母やシャロンたちが集まり、『日々人お帰り会』が行われていた。せりかは、子どもの頃からファンだったシャロンに会うことができ、感激。

  • S02E13 一切れのケーキ

    • June 29, 2013
    • YTV (JP)

    ジョンソン宇宙センター・一室――。 真剣な顔つきで筆記テストに臨んでいる訓練生たちの中、六太の手は止まっていた。誰よりも早く月へ行き、シャロンとの約束を果たしたいと思っているにも関わらず、まったくテストに集中できないのだ。 数日前――。 六太とせりかは、シャロンの症状を解明するため、神経内科病院へ来ていた。せりかがシャロンの腕を叩いた時、筋線維束収縮の反応があったからである。せりかは、シャロンが自分の父と同じ病気、『ALS』の可能性を心配していた。 『ALS』とは、運動ニューロンという神経だけが障害を受け、脳から筋肉を動かす命令が伝わらなくなっていく病気である。そのせいで筋肉がやせ、徐々に手足が動かせなくなり、食べることも、話すことも、自力での呼吸もできなくなってしまうのだ。 シャロンの検査結果は、ALSだった。あと数ヶ月で、シャロンは大好きなピアノも弾けなくなってしまうのである。そのことを告げられても、それでもシャロンは笑顔を忘れなかった。 六太は、「僕はいざという時、役にも立たないダメ人間です」を英語で言うとどうなるか、シャロンに聞いた時のことを思い出していた。 『イッツア・ピース・オブ・ケイク』  直訳すれば「ケーキ一切れ分」ということだが、違う意味もあるというシャロン。 その時の六太は、マイナスの意味で受け取ったが、本当の意味は――。 『楽勝だよ』 こういうウソを、平気な顔でついてしまうのがシャロンだった。 後日、六太のにシャロンからメールが届いた。 『私も3年後か4年後かに、あなたに月面望遠鏡建設計画の

  • S02E14 車イスのパイロット

    • July 13, 2013
    • YTV (JP)

    ジョンソン宇宙センター・一室――。 真剣な顔つきで筆記テストに臨んでいる訓練生たちの中、六太の手は止まっていた。誰よりも早く月へ行き、シャロンとの約束を果たしたいと思っているにも関わらず、まったくテストに集中できないのだ。 数日前――。 六太とせりかは、シャロンの症状を解明するため、神経内科病院へ来ていた。せりかがシャロンの腕を叩いた時、筋線維束収縮の反応があったからである。せりかは、シャロンが自分の父と同じ病気、『ALS』の可能性を心配していた。 『ALS』とは、運動ニューロンという神経だけが障害を受け、脳から筋肉を動かす命令が伝わらなくなっていく病気である。そのせいで筋肉がやせ、徐々に手足が動かせなくなり、食べることも、話すことも、自力での呼吸もできなくなってしまうのだ。 シャロンの検査結果は、ALSだった。あと数ヶ月で、シャロンは大好きなピアノも弾けなくなってしまうのである。そのことを告げられても、それでもシャロンは笑顔を忘れなかった。 六太は、「僕はいざという時、役にも立たないダメ人間です」を英語で言うとどうなるか、シャロンに聞いた時のことを思い出していた。 『イッツア・ピース・オブ・ケイク』  直訳すれば「ケーキ一切れ分」ということだが、違う意味もあるというシャロン。 その時の六太は、マイナスの意味で受け取ったが、本当の意味は――。 『楽勝だよ』 こういうウソを、平気な顔でついてしまうのがシャロンだった。 後日、六太のにシャロンからメールが届いた。 『私も3年後か4年後かに、あなたに月面望遠鏡建設計画の

  • S02E15 二つのノート

    • July 20, 2013
    • YTV (JP)

    自信満々な教官・デニールのもと、宇宙飛行士になるために欠かせない、ジェット機・T-38の操縦訓練を受けることとなった六太は、初飛行だというのに、4倍以上の重力が加わる飛行の時だけに必要な、『Gスーツ』を着込まされてしまう。不安な表情を浮かべる六太に、デニールは機体をチェックしながら語り始めた。 「飛行前のチェック作業は気を抜くな。事故った時、整備士に責任を押し付けるのは、パイロットの恥っちゅうもんだ。心のノートにメモっとけ」 情報や知識は頭のノートにメモり、大切な事柄は心のノートにメモる、最初の教えであった。 初飛行後――。 デニールのアクロバット飛行に度肝を抜かれ、すっかり気持ち悪くなってしまった六太。そんな六太に、デニールは楽しそうに『もう一度乗るか?』と聞いてきた。止まるも進むも、コントロールするのは自分次第なのだ。 「ちなみにヒビトは吐いた後、うれしそーな顔しながら、もっかい乗せろと言ってきたぞ。心のノートにメモっとけ」 兄が弟に負けるわけにはいかない。六太はヘルメットを掴むと、もう一度乗せろと合図したのだった。 「イッツ・ア・ピース・オブ・ケイク!」 そして訓練の日々は続き――。 休憩中、六太はずっと気になっていたことをデニールに質問した。 『なぜ歩けるのに車椅子や杖を使っているのか?』と――。 いつか本当に歩けなくなるシャロンのことを考えれば、デニールがふざけてるようにしか見えなかったのだ。デニールは『これもすべて訓練だ』と答えた。晩年脚を悪くした父や祖父と同じように、いつか自分も歩けなくなるかもしれ

  • S02E16 デニール化

    • July 27, 2013
    • YTV (JP)

    自分でコントロールできる限り、精一杯やる――。 そう覚悟を決めた六太だったが、T-38の操縦訓練は、決して順調とはいえなかった。教官・デニールが、飛行中なにかとジャマを入れてきて、景色を観る余裕すらなかったのだ。 焦る六太にデニールはいう。 『一流のパイロットは、飛行機を飛ばしながら気の利いたジョークも飛ばせ、いつでもどこでもアクロバットで楽しめるもんだ』 六太には一流の宇宙飛行士になって欲しい、そのためにも一流のパイロットになって欲しいというデニール。実のところデニールは、今回担当する教え子が宇宙飛行士に認定されたら、教官を引退すると決めていた。六太が最後の生徒なのだ。 その頃、日々人は――。 ダミアン、リンダ、ピコと共に、無事に帰還できたことに祝杯をあげつつ、訓練中の六太のことを話題に上げていた。デニールの教えを受けていた日々人は、その内容がやたらと負荷をかけてくる事を知っており、六太がもう『デニール化』した頃ではないかと楽しそうに語った。 デニール化とは、知らず知らずのうちに自分が凄腕パイロットになっているということをいう。改造されたマックス号に乗ることや、やたらと話しかけ頭の中の処理項目をどんどん追加させるデニールの行動は、すべて利にかなった訓練方法だったのだ。そうとは知らない六太だったが、見事『デニール化』していた。その運転技術は目隠し飛行をしながらアクロバットができるほど上達していたのだ。 訓練中、デニールに六太は、なぜ訓練前いつも写真に敬礼しているのか尋ねた。 「彼らにあいさつもなしに、アスキャンに

  • S02E17 二つの鍵盤

    • August 3, 2013
    • YTV (JP)

    「今回担当する教え子が宇宙飛行士に認定されたら――ワシは引退すると決めとった」 自分が教官・デニールの最後の生徒だと知った六太は、一流の宇宙飛行士になるために、一流のパイロットを目指すことを決め、懸命に訓練を続けていた。 しかしある日、新しくきたシャロンの手紙から、彼女が少し元気をなくしているようだと感じとる。 『いま出来ることで、シャロンに喜んでもらえるようなことはないか――』 考えた末、六太はシャロンに、『大きな荷物』を贈ることにした。 一方――。 シャロンに元気がないようだと感じていたのは、六太だけではなかった。同じように手紙をもらっていた日々人も、シャロンのことを心配していたのだ。そのため、会議や講演会でいったん日本に帰国した日々人は、多忙なスケジュールをやりくりし、『大きな荷物』を持ってシャロンに会いに行くことにした。 シャロンの研究所へ着くと、日々人はまっすぐピアノの部屋へと向かった。ピアノの鍵盤を押し、自分が買ってきた『大きな荷物・キーボード』の鍵盤の方が軽いことを確かめると、笑顔でこう言った。 「シャロン、これで気晴らしに一曲出来るよ」 笑顔の日々人に、驚きと喜びの涙を浮かべるシャロン。そして、一緒にいた助手の田村も驚き、感動していた。 それもそのはず、実は六太からも『キーボード』が贈られていたのだ。きちんと手紙も同封されており、最後の一文には「弾いてみてよ 六太より」と書かれていた。 六太と日々人に送られたシャロンの手紙には、「手に力が入らなくなり、大好きなピアノを弾こうにも、鍵盤は重く、弾

  • S02E18 日々人に並ぶ

    • August 10, 2013
    • YTV (JP)

    2026年8月23日、日本にてアニメ版ミスターヒビットがスタートした頃――、六太はジョンソン宇宙センターの超巨大プールにて、無重力に似た環境での船外活動の訓練に励んでいた。 2026年11月1日には、六太や宇宙飛行士仲間たちが、デニール・ヤング、68歳の誕生日を祝い、丸いグラサンをプレゼント。 2027年6月20日――たくさんの訓練とイベントを経て、六太たちは『デニール引退の日』を迎えた。 引退式直前、ラストフライトのためマックス号へと向かっていた六太に、デニールは一つの頼みごとをする。それは、離陸から着陸まですべて六太にやって欲しいというもの。本来、訓練生が離着陸を任されることはないのだが、「お前はワシが育てたんだ。自信をもってこの身をゆだねられる」とデニール。規約違反になると戸惑いつつも、六太はデニールの最後の頼みを受け入れる。 「最後の生徒がお前でよかったぜ、ムッタ」 ラストフライト後――引退式。 主役であるデニールを囲み、六太や職員たちが、水の入ったバケツを構えて立っていた。デニールは軽く笑みを浮かべると、六太の目をまっすぐ見て言った。 「心のノートにメモっとけ。引退式でぶちまける水の勢いは、退く者への感謝の大きさに比例する」 六太は泣きそうになるのをこらえ、誰よりも先に、バケツの水を遠慮なきスイングでぶちまけた。その大きなしぶきは、デニールへの大きな感謝の証となり、職員たちの水しぶきが後に続く中、六太の心のノートには、デニールとの日々がメモられていた。 そして――ついに六太たち訓練生は、正式な『宇宙

  • S02E19 諦めのような覚悟

    • August 17, 2013
    • YTV (JP)

    バトラー室長に呼び出され、自分が新人にしては異例の出世コース、『バックアップクルー』に推薦されたことを知らされた六太。バックアップクルーとして一通り訓練を遂行すれば、次はもう宇宙へ行けるらしいのだが、その行き先は月面ではなく、ISS(国際宇宙ステーション)への搭乗とのことだった。本来は喜ぶべきことだが、シャロンとの約束を守るため、誰よりも早く月へ行きたいと思っていた六太は、大いに戸惑っていた。もしISSの方向に進んだら、宇宙へは近道になるが、月へは遠回りになってしまうのだ。 しばらく一人で考えた末、六太は自分にとって一番の金ピカである『月』を目指し続けることにした。そして、自分よりふさわしい人物である伊東せりかに、ISSへの席を譲ることに決めたのだった。 願い通り、せりかがISSのバックアップクルーに選ばれると、その直後、六太の研修先も決まった。それは、機械音が響く工場の中にある、月面基地局の開発部署だった。これから六太は、少々クセのある技術者・ピーター、ダン、ハロルドたちとともに、バギーの開発・改良業務に加わることになったのだ。 六太がここで良い働きを見せれば、自ずと月への道は開かれる……という話だったが――前途は多難だった。目下の課題が、月面バギーの改良だったからだ。これは、『落ちても壊れないバギー』にするか、あるいは『落ちないバギー』にしなければならないという難題であった。 解決の糸口をつかむため、技術者たちに詳しく話しを聞く六太。驚くべきことに、これまでずっとバギー開発は、車の専門家を雇わずに作ってき

  • S02E20 リハーサル

    • August 31, 2013
    • YTV (JP)

    次なる六太の目標は、月ミッションへの道を開くため、月面の谷に落ちても壊れないバギーか、もしくは落ちないバギーを作ること。なにか良い案はないかと模索していたある日、六太は日々人と、兄弟並んで雑誌の表紙に載ることになった。 撮影場所は、古い倉庫の中だった。 倉庫の中に入ると、まるで月面のような、カッコいい撮影ステージが広がっていた。表紙写真のコンセプトは、『日本人ムーンウォーカー第1号南波日々人と、その後を追って月へ向かう兄の六太、同じ舞台で追いつ追われつがんばっているライバル兄弟をテーマに、今の二人の姿を通じて世の働く人々にメッセージとして感じとってもらおう』というもの。 そのため日々人は宇宙服でビシッと決めていたが――六太の衣装は変だった。元サラリーマンが宇宙飛行士になって今まさに宇宙を目指しているという表現のため、六太の衣裳は、上半身は宇宙服なのに、下半身はズボンと革靴だったのだ。 撮影が始まると、六太は日々人の様子がおかしいことに気付いた。 宇宙服のヘルメットの中の日々人は、汗をにじませ、険しい顔をしていたのだ。 心配する六太に、日々人はなんでもないというが――……? 日々人、ロシアへ出発の日――。 新たな訓練のためロシアへ行く日々人を見送った六太は、雑誌の編集者からもらった写真を見ていた。それは、月面に2人が並んでいる写真。 『とりあえず、リハーサルは終了だな、日々人――』 兄弟そろって月面に立ちたい、すぐに追いついてやる、六太の顔はやる気に満ちていた。 一方、日々人は険しい表情で2人の写真を見ていた。

  • S02E21 日々人の障害

    • September 7, 2013
    • YTV (JP)

    月での遭難が原因で、パニック障害となってしまった日々人は、このことをシャロンにだけは話していた。 『船外活動ができないうちは、月ミッションへの参加はできない――』 『治るかどうか、わからない――』 重い口調で話す日々人に、シャロンは微笑んだ。 「治るわよ。ヒビトなんだから」 シャロンの後押しを受け、心を少し軽くした日々人。 治療のため、六太や家族には内緒で、単身ロシアへ赴こうとしていた。 その頃、六太とNASAの技術者たちは、月面ローバーの改良案について相談していた。月でのハンドリングやブレーキを改善するためには、浮かないように車体を重くするしかない。だが月へ物を送るには、何百億円もの大金がかかるようなのだ。現実的には不可能な案しか出ない中、不意に六太が閃いた。 解決できるかもしれない案を思いついたかもしれない――らしいのだ。 すぐさま六太は、以前勤めていてクビになった、ミラクルカーコーポレーションに電話をかけた。昔自分が企画した『飛行自動車』と『フロントガラス』の設計を思い出し、ローバーの改良に使えると考えたからだ。話しをしていると、電話の相手は元同僚から、六太をクビにした張本人・間寺役員に代わった。間寺の要件は、娘が新田のファンなので、サインが欲しいということ。少なからず宇宙に興味があると知った六太は、これをチャンスだと思い、すかさず協力を求めた。 「車のプロの実力をぜひ、宇宙で役立てたいんです!」 六太の言葉に気をよくした間寺は、NASAのローバー開発に、格安で協力することを約束してくれた。 さらにJAXAの

  • S02E22 道なき月に道を

    • September 14, 2013
    • YTV (JP)

    月での事故が原因で、宇宙飛行士として致命的な、パニック障害となってしまった日々人。その治療に専念するため、家族や、とくに六太には内緒で単身ロシアへと向かっていた。 一方六太は、いままさに、バトラー室長と吾妻、NASAの役員たちに、『崖や谷に落ちない、月面バギーの改良案』のプレゼンを始めようとしていた。この案が通れば、六太も月の訓練に参加できるかもしれない。緊張した面持ちで提案したのは、「道なき月面に道を映し出す」という大胆な発想だった。 以前、ミラクルカー社という自動車会社に勤めていた六太は、渋滞する日本の道路を改善しようと、『空飛ぶ車社会』という企画を進めていた。しかし、車は飛ばすことができても、道路は飛ばすことができない。そこで考えたのが、『それぞれの車のフロントガラスに、架空の共通道路を映す』というものだった。結局この企画は上司には現実味がないと却下されたが、六太の元後輩・技術チームの中川と糸井は諦めず、フロントガラスに道を映すことができる『カーナビ・フロントガラス』の研究を続けていた。 そして現在、二人の頑張りが実り、すでにその技術はほぼ完成。これを応用すれば、月面ローバーのフロントウィンドウに道を映すことが容易にできるというのだ。 さらに、六太の発表は続いた。 JAXAに協力を要請したところ、『かぐやII』が観測した地形情報から作った、最新の月面3Dマップも提供してもらえるというのだ。この3Dマップは、月の35パーセントの範囲までであれば、クレーターの位置や深さまで、かなり詳細に閲覧することができる

  • S02E23 魔法の裏技

    • September 21, 2013
    • YTV (JP)

    六太が提案した『フロントナビシステムを利用した月面ナビ』は、NASAの役員満場一致のもと、実装が決定されようとしていた。 これでようやく六太も月の訓練に参加できる、と思いきや――バトラー室長だけは、六太を参加させるか否か迷っていた。それは、パニック障害に苦しむ日々人を思ってのことだった。バトラーが慎重になる理由は、20年以上前にNASAにいた宇宙飛行士、ロナルド・クーパーと日々人が似ていたからだった。ロナルドは、T―38の飛行訓練中に事故で死にかけ、その後パニック障害になってしまった。治療に励むも思うように成果が出せず、最後はNASAを去ったのだ。 いま判断を焦れば、日々人も同じように宇宙飛行士を辞めてしまうかもしれない、バトラーはそれを心配していたのだ。 一方六太は、飛行場で先輩宇宙飛行士であるアレックスに、『バーティカルクライムロール』というアクロバット技を教えてくれと頼んでいた。月の訓練への道を開くには、結局、バトラーに認めてもらうしかないと気づいたのだ。以前、バトラーは「自分を一人前のパイロットだと感じたのはいつか?」という問いに、こう答えていた。『バーティカルクライムロールを教官の前で披露したときだ』――と。 バーティカルクライムロールとは、回転しながら急上昇していく、ド迫力のある技である。見る者にはロケットの打ち上げのようにも感じられるため、バトラーは己の出世欲、宇宙への憧れ、向上心、それらをストレートに伝える力が秘められていると感じ、宇宙への切符を勝ち取る魔法の裏技と思っていたのだ。六太はバトラー

  • S02E24 わたしの両手

    • September 28, 2013
    • YTV (JP)

    月の訓練への道を開くには、バトラー室長に認めてもらうしかない。そう感じた六太は、先輩アレックスとT-38に乗り込み、魔法の裏技を披露しようとしていた。 魔法の裏技とは、見る者にはロケットの打ち上げのようにも感じられる、バーティカルクライムロールというアクロバット技のこと。 六太はバトラーの前でこの技を見せることこそが、宇宙への近道だと思ったのだ。 18時30分ちょうど、六太の魔法の裏技は、バトラーにも見える位置で見事に成功した。だが、六太の計画はこれで終わりではなかった。その3分後、さらに六太は、2つ目のアクロバット技を決行しようとしていたのだ。 実は六太は、バトラーだけでなく、せりかにもメールを送っていた。その内容は、『今日の訓練でエーリントンに着いたら、18時33分に空を見てほしい』というもの。以前、六太の飛行の師匠・デニールは言っていた。 『空にハートマークでも描けりゃ一流だ。意中の女にでも見せてみろ。イチコロだぞ……ウハハッ』 六太はせりかにハートマークの軌跡を見せて、告白しようとしていたのだ。 しかし残念なことに、せりかのいるシャトルバス側から見えたものは、ハートマークではなく、バルタン星人のハサミ型だった。 そしてハートマークに見える位置から空を見上げていたのは、なんとバトラーだった。自分が告白されたと思い赤面し、愕然と空を見上げているバトラー。その様子は、明らかに動揺していた。 「ミスタームッタ……それは……マズイでしょ……」 一方、日本にいるシャロンは、来日したモリソン博士たちに、月面望遠鏡の計画

  • S02E25 オリガ

    • October 5, 2013
    • YTV (JP)

    月での事故が原因で、宇宙服を着て緊張状態に置かれると、発作に襲われるようになってしまった日々人。このままでは宇宙での船外活動ができず、希望する月ミッションには加われない。そこで日々人は、かつての自分を取り戻すべく、兄・六太には病状を伏せたまま、極寒の地・ロシアへと向かった。そこには、日々人のことをヒビチョフと呼ぶ破天荒なロシアの英雄・宇宙飛行士イヴァンと、日々人に想いを寄せる娘オリガが待っていた。

  • S02E26 宇宙飛行士の娘

    • October 12, 2013
    • YTV (JP)

    与圧服を着ただけで、たった10メートルの距離も歩けなくなってしまった日々人。自分は宇宙飛行士失格だと感じ、リハビリ訓練も、2日続けてサボってしまっていた。 『これからどうしたらいい……』 途方に暮れていると、イヴァンから一通のメールを受信する。 『今夜飲みにつき合え——、一人になるな』 その夜、とても陽気に飲む気分ではなかったが、なんとか待ち合わせの場所へ来た日々人。早くもイヴァンは飲んでおり、「頼みがある」と、映像データーが入ったDVD『オリガの成長記録1』と、ビデオカメラを日々人に手渡した。なんでも、明日ダンスコンクールがあり、オリガが出演するという。自分は訓練と重なって行けないため、日々人にオリガを撮影してきて欲しいというのだ。 そして、イヴァンは落ち込む日々人に一本の道を示した。 「できることから習慣づけろ——まずは私と酒を飲め!」 ほろ酔いで帰宅した日々人は、早速オリガの映像を観ていた。画面の中のオリガは、何度やってもうまく踊れず、すぐにいじけては怒られていた。明らかにまわりの子の方がうまい状況に、オリガにバレエは向いてないんじゃないかとさえ思えてしまうほどだった。 しかし、オリガの夢は今もダンサー。 このあと彼女は、どうやってこんな辛い練習を続けられたんだろうか——? 公演当日——。 ビデオカメラを片手に、日々人は劇場へ来ていた。大勢の観客の中、やがて幕が開くと——星空の下で子どもたちが踊り——主役が登場する。驚くことに、主役はオリガだった。舞台を観ながら、日々人は練習を嫌がる子どもの頃のオリガを思い

  • S02E27 時間切れ

    • October 19, 2013
    • YTV (JP)

    日々人はオリガのバレエの公演を見る。ビデオで見た幼き日のオリガと違い、舞台の上の彼女は美しく、まるで無重量空間にでもいるようだった。オリガはずっと、「見えない踏ん張り」を続けて来たのだ。そんなオリガに元気をもらい、日々人はリハビリ訓練に復帰する。だが、イヴァンが提案した新しい訓練は、とても奇抜なもの。「大事なのは『できる』という経験を得ること。楽しみながら克服しようではないか!」その訓練内容とは?

  • S02E28 オリガとヒビトとガガーリン

    • October 26, 2013
    • YTV (JP)

    月での事故がきっかけで、パニック障害となってしまった日々人。ロシアで極秘にリハビリ訓練をしていたところ、JAXAから突然の帰国命令が届く。リハビリに時間がかかっているという理由で、『安全スーパーバイザー』として働くよう、辞令されてしまったのだ。 このことは、日々人を指導していたイヴァンにも遺憾だった。イヴァンはどうしても、日々人を治してやりたかったからである。実は宇宙飛行士だったイヴァンの父親も、日々人と同じパニック障害だったのだ。だが意義を申し立てたくても、ロシア人の彼に、日本人の日々人の処遇は変えられない。 悔しい気持ちを抑え込む日々人に、イヴァンは言う。 『今は耐えるしかない。辛抱強く、復帰することだけを考え続けろ——』と。 その夜——。 帰国のため荷物をまとめていた日々人の部屋に、思わぬ来客があった。それは、泣きはらした顔のオリガだった。日々人の処遇を聞いたオリガは、居ても立ってもいられず会いに来てしまったのだ。 「これ……あげる」 オリガが差し出したのは、日々人が観たがっていた、『オリガのダンスの成長記録』の続き。たまに観て、自分のことを思い出して欲しいというオリガの願いのようだった。 オリガを家まで送る道すがら——。 通りかかった公園で、オリガは自分より背の高い、ガガーリン像を片手で示した。ユーリ・ガガーリンとは、世界発の有人宇宙飛行を成功させた、ロシアの宇宙飛行士である。オリガは、イヴァンに聞いたというガガーリンの豆知識を披露。しかし最後までは話さず、「続きは次回、日々人がまたロシアに来た時に」と

  • S02E29 秘密

    • November 2, 2013
    • YTV (JP)

    月面バギー開発で見事成果を出すことができた六太は、先輩宇宙飛行士・ビンスに連れられ、新たな訓練の説明会場へと来ていた。 その会場にはすでにケンジや新田など、何人もの飛行士たちが集まっていた。そして、12名の飛行士たちが揃ったところで、バトラー室長から訓練内容が発表される。六太たちはこれより数日後から約2週間、NEEMO(ニーモ)で実践訓練をするというのだ。 NEEMOとは、海の底、水深20メートルに設置された、仮想月面基地の名称である。そこでのシミュレーション生活は死の危険も伴うため油断はできない。だが、地球上で最も月面を再現できるため、六太にとっては憧れの場所だったのだ。 NEEMOまで、あと2日——。 六太はロシアから帰国した日々人と、朝食を食べながら近況報告をしていた。「やっと自分も月へ行くための第一段階に立てた」と喜ぶ六太を前に——日々人の顔はどうにも浮かない。怪しむ六太だが、まさか日々人がパニック障害で、さらには安全スーパーバイザーに任命されたことなど、思いもしないようだった。 日々人も、このことは六太には隠し通す気のようで——? そして——。 六太はケンジらと共に、2週間の月面シミュレーション生活へと突入。 一方、日々人は——。 安全スーパーバイザーに着任し、与えられた立派なデスクを前に、唇を噛みしめていた。 『一人でもリハビリ訓練をしないと……』 日々人が思案を巡らせていた丁度その時、ローリーが台車を押して入ってきた。 「なんか君宛にものすごい荷物が届いたよ?」 台車の上には大きなダンボールがあり、

  • S02E30 一番の敵

    • November 9, 2013
    • YTV (JP)

    月面ローバーの改良案が評価された六太と、ケンジ、新田を含む12名の飛行士たちは、憧れの月を目指すため、過酷な訓練を始めようとしていた。それは、通称・NEEMO訓練(NASA極限環境ミッション運用訓練)というもので、海底に造られた仮想月面基地で、約2週間のシミュレーション生活を送るのだ。 フロリダの海底20メートルの深さに設置されたNEEMOの施設は、地球上でもっとも月面を再現できる場所だった。居住施設は全部で3つあり、六太は2つ目の施設・AQII(アクエリアス・ツー)に、ケンジと一緒に入ることに決まった。 ダイビングスーツで潜水し、六太とケンジが海底施設に入ると、そこにはすでに、2名のベテラン宇宙飛行士と、1名のダイバーが待っていた。リーダーのジョージ・ラブ(宇宙飛行士)と、巨大な身体を持つアンディ・タイラー(宇宙飛行士)、そして海が大好きなハミルトン(技術支援・ダイバー)である。 NEEMO訓練1日目——。 一息ついたところで、ジョンソンスペースセンター・NEEMO管制室から初日の訓練内容が知らされた。それは船外(海底)に出て、月の重力を仮想体験するというものだった。 ラブの先導で、特殊な潜水服を着込んだ六太は、さっそく船外活動に勤しんでいた。自分の重さを調節しながら、月面を想定して動くのだ。最初はなかなか慣れない六太だったが、ケンジに励まされ、協力しながら、楽しい訓練初日を終えることができた。 船内に戻ると、ラブが今後の訓練内容について話し始めた。今後は船外活動が2割、残りの8割は同時に訓練をしている他2チ

  • S02E31 宇宙家族

    • November 16, 2013
    • YTV (JP)

    NEEMO訓練2日目——。 地球上でもっとも月面を再現できる場所で、月の訓練をすることになった六太たち。最終日を除く12日間でやる課題は、『三分の一スケールの月面基地、および周辺設備のモデルを船外に建設すること』、そして『各チームの新人飛行士2人が、基地の新しい設備などのアイデアを出し合い、先輩飛行士2人が採用案を検討すること』だった。 新人である六太とケンジは、さっそく互いの意見を出し合い、新しい施設案を検討する。2人とも、いま実在している月面基地を発展させる方向でいくことで意見が一致し、将来的に実現可能な基地の設備を考えることに決めた。そして、大容量通信アンテナ、ローバーなどの充電ポスト、シャロンの月面望遠鏡など、互いを尊重しながら、次々とその内容を決めていく。意見をぶつけることもないため、サクサク決まり、どんどん進む。互いに最高のパートナーと感じており、このコンビで月に行けたら楽しいだろうなと思っていた。 しかし、そんな六太とケンジのコンビの状況に、先輩飛行士たちは危機を感じていた。船外活動中にも関わらず、アンディから作戦会議ができるガゼボ(酸素補給場所)に呼ばれた六太とケンジ。そして集合した六太とケンジに、アンディからとても信じたくない発表があった。 「お前ら二人のうち、月に行けるのは、どちらか一人だけだ」 この決定事項を伝えた理由は、事実を知って競合させれば、必死になり集中力も高まり、チーム全員のメリットになると判断したからだった。これからは、六太とケンジは協力し合って課題に取り組むのではなく、互い

  • S02E32 俺とケンジ

    • November 23, 2013
    • YTV (JP)

    NEEMO訓練3日目——。 六太たちには、重い試練がのしかかっていた。 それは、自分とケンジの二人のうち、月に行けるのは、どちらか一人だけという事実だった。 互いを最高のパートナーだと思っていただけに、ショックを隠せない六太とケンジ。 六太はシャロンのため、ケンジは家族のため、これまで辛い訓練も互いに励まし合い、頑張ってきた。これからどう接していけばよいのか、なかなか答えをだせないまま、相手の差し伸べた手も掴むことができず、すれ違うようになってしまった。 応援してくれる家族のためにも、六太と競うことを決意したケンジは、今回出した3つの案で、必要なものと、そうでないものを考え直すことにした。その結果、少ない時間でより良いものを作るため、大容量の通信アンテナと、六太が切望していたシャロンの月面望遠鏡を、建設しないことを提案する。ケンジの指摘通り、限られた時間ではいくつも施設を作ることは厳しい。六太は反対意見を出すことができず、肯定してしまう。 船外活動中、ガゼボでアンディと一緒になった六太は、『選ばれなかった方は、この先ずっと月へは行けないのか』と聞いた。アンディから返事は『いつ誰を何のミッションに任命するかなんてことは、誰にも分からない』ということだった。 事実アンディ自身も、なかなかアサインされず、随分待たされたという。同期の仲間がどんどん先に選ばれる中、なぜ自分だけ選ばれないのか、考え、苦しんだ時期もあったらしい。そんな辛い時期、アンディは考えるのをやめ、いま目の前にある訓練や仕事をさらに増やして、それで頭をい

  • S02E33 スーパンダマン

    • November 30, 2013
    • YTV (JP)

    訓練3日目の午後、一度は諦めると言った大容量アンテナやシャロンの月面望遠鏡を、やっぱり作ろうと言い出した六太。しかし先輩飛行士のラブは、その意見を却下する。今後はSEV(海上ローバー)の運転訓練なども増えるため、 時間内には無理だと判断したのだ。 しかし六太は諦めず、海中に停めてあったSEVから、時間問題を解決する新しい案を閃く。そしてそれをすぐに、アンディに相談した。 「アンディの有り余ってるパワーがあれば……可能かな?」 NEEMO7日目——。 六太の新しい案は、アンディのおかげで順調に作業を進め、ほぼ完成することができた。それは、SEVの荷台に搭載する新しい荷台だった。実はこれまで、資材は海中にある資材置き場から、手押し車に積んで運んできていた。そのため六太は、積んで戻ってくるだけで2時間近くかかった運搬作業を、SEVの荷台で大幅に短縮しようという。しかもSEVにロボットアームを取り付けるため、4人は組み立て作業に集中でき、運搬はハミルトンに任せられることまで考えられていた。 NEEMO8日目——。 ハミルトンが資材を運んできてくれるおかげで運搬作業がなくなり、基地制作に集中できるようになった六太たち。人材も機材もフル活用することができ、管制からの評価も上がっているようだった。しかし、ケンジは悩んでいた。六太が時間を作ろうと必死だった時、自分が選ばれることだけを思っていたからだ。 これから何を考えていけばいいのか、わからなくなっていた。 そこでケンジは、六太と話すことを決めた。 アンディに話しを聞いて、先の

  • S02E34 月面にいた

    • December 7, 2013
    • YTV (JP)

    NEEMO訓練も9日目を迎え、ようやく六太たちが注文していた資材が届く。しかしその中に、六太には覚えのない『水の入ったボール』があった。それは、ケンジが六太を見習って、時間削減のために注文したもの。 復活したケンジのやる気もあり、六太たちは最初の計画通り、大容量通信アンテナ、ローバーなどの充電ポスト、シャロンの月面望遠鏡の3つを制作することにする。 やる気に満ちたケンジは、常に時間短縮、作業の効率化に結び付くアイデアを出し続ける。さらに呪文のように『スーパンダマン』言葉を発してはニヤけていた。それでも本当は、ケンジも六太と同じ気持ちだった。 忘れたわけじゃない。思い出さないようにしているだけなのだ。 どちらか一人だけが、月にいけるということを。 ケンジと共に力を出し合った時こそ、いろんな事がうまくいく。 どういう結果になっても、2人は最高のパートナーだ。 しかしその夜、シャロンからとても辛い、悲しい報告が入る。 月面望遠鏡を月で建設するという案は問題点を多数指摘され、NASAの協議の結果、不採用となってしまったというのだ。 この報告を聞き、六太は電力不足で暗くなっているアクエリアス内で、さらに心をどんよりさせていた。それでも、余った時間を無駄にしないために、別の設備を考えようとするが——? NEEMO訓練も終盤にさしかかった頃——。 六太のもとに、シャロンから連絡がくる。 いまは仲間と協力し、新たな月面望遠鏡の建設案を考えている最中で、次こそNASAに認められるものを目指して、シャロンは諦めないという。 『It's a piec

  • S02E35 明日のために

    • December 14, 2013
    • YTV (JP)

    NEEMO訓練の最中、シャロンから『月面望遠鏡計画が中止になった』と聞かされた六太は、今は実現不可能と気持ちを切り替え、自分が出した月面望遠鏡制作案を取り下げた。 だが、そのかわりに出した六太の案『ソーラーミラーシステム』は、ケンジやバトラー室長、NASAの幹部たちまでも、驚かせることとなった。『ソーラーミラーシステム』とは、鏡の反射を使って、窓のない基地に太陽の光を取り入れる、照明装置である。宇宙飛行士は、月面生活のほとんどを基地の中で過ごす。そのため、月面でもし節電を余儀なくされた場合、窓のない月面基地では、部屋も気持ちも暗くなってしまう。 そのことに気付いた六太は、『設備を追加するなら中を改善したい』と考えたのだ。NASAの幹部たちは、『自分が本当に月面にいるつもりでなければ思いつかないアイデア』を出したとして、六太を高く評価した。 一方、PD(パニック障害)に苦しむ日々人は、安全スーパーバイザーとして危機管理運営会議に参加していた。しかしその会議内容は、宇宙飛行士の仕事とは関係ないものばかり。だが日々人は宇宙を諦めず、会議後もこっそりバックヤードにこもり、極秘のリハビリ訓練を続けていた。 現在の訓練レベルは9。レベル10の本物の与圧服をクリアすれば、最後に船外活動用宇宙服を着ることとなる。その訓練が上手くいけば、日々人は完全復帰できるのだ。 その夜——。 日々人は、イヴァンから送られてきた『オリガの成長記録ボリュームツー』のDVDを観ようとしていた。映像にはバレエの練習している11歳のオリガが映っており

  • S02E36 自分の場所へ

    • December 21, 2013
    • YTV (JP)

    PD(パニック障害)を克服するため、極秘でリハビリを続けていた日々人は、その夜、イヴァンに送って貰った『オリガの成長記録ボリューム・ツー』を観ていた。 映像の中のオリガは11歳。上手くなったオリガのバレエに、日々人も喜びを感じていた。だが突然、映像の雰囲気が変わる。オリガは右足首を押さえ、苦痛の顔で床に蹲ってしまったのだ。 その事故から5日目——。怪我で動けないオリガは、バレエ以外のことがしたいと、諦めモードになっていた。怪我はおそらく一ヶ月ほどで治る程度のものだったが、結局、11歳のオリガは、怪我以降一度も踊らなかった。オリガが12歳になった頃、宇宙へ飛び立っていたイヴァンは、バレエを諦めてしまった娘を想い、ISSからメッセージを伝えた。オリガに、本当に好きだったことは何か、やりたいことは何か、思い出して欲しかったのだ。その中継で、なんとイヴァンは、ISSの無重力空間でクルクルとピルエットの姿勢で回り始めた。 「ほ~~うら! 見てるかぁ、オリガ?」 その楽しげな父の様子に、オリガはバレエの楽しさを思い出す。 そして、再びバレエを始めたのだ——。 オリガの映像に励まされ、勇気をもらった日々人は、レベル10の訓練をやってのけた。残るは本物の船外宇宙服だが、勝手に持ち出すのは不可能だった。日々人は、PDを克服したことを直接見てもらうしかないと思い、バトラー室長に、宇宙飛行士に戻るための試験をやってもらう事を頼む。 「宇宙飛行士に——戻る準備ができました」 その後日、ブライアンの命日——。 墓参りに来ていた日々人は

  • S02E37 プリティ・ドッグ

    • January 4, 2014
    • YTV (JP)

    バトラー室長に頼み、PD(パニック障害)を克服したと証明する、『復帰試験』を受けることになった日々人。だが、試験への気合は十分だったが、失敗したら二度と宇宙へは行くことができない。そのため、不安を感じていた。 その不安を少しでも和らげようと、亡きブライアンの墓参りをする日々人。 彼の生前、何かに悩んだ時に問いかけると必ず答えが返ってきた。 日々人はその存在を今でも頼ってきたのだ。 『NASAの上官たちの見てる前で、もし発作が出てしまったら——。あんたなら……どうするブライアン……』 この日はブライアンの命日だったため、墓地には吾妻もきていた。 悩み苦しんでいる日々人に、吾妻は一つアドバイスをする。 『ヒビトも壁にぶち当たったときは、俺たちの兄貴に話しかければいい。それでもダメなら、本当の兄貴に話せばいい。お前にはいるだろ——もう一人の兄貴が』 日々人の心の中にいるブライアンも、兄・六太に相談しろと言っているようだった。 その夜、日々人は六太を呼び出し、いま自分がPDで、前線から外されていることを告白した。さらに日々人は、来週には復帰試験をするというのに、ここへ来る時、タクシーで見た悪夢が原因で、また発作が出てしまったことを話す。予想以上に深刻な相談を受けた六太だったが、弟・日々人の悩みを受け止めようとしていた。 そして、今後また発作が出そうになったらこうつぶやけとアドバイスをする。 『来たなこのPD野郎、プリティ・ドッグめ』 そうすれば、いやでもプリティ・ドッグに似たアポの顔を思い出せるからだ。 帰り際、六太は

  • S02E38 最後の言葉

    • January 11, 2014
    • YTV (JP)

    日々人から自分がPD(パニック障害)だと告白された翌日、六太は寝不足だった。 家に帰ってからも気になってしまい、PDのことをネットで調べたり、あれこれ考えているうちに朝がきてしまったのだ。 『日々人なら楽勝で試験に合格できるはず』 そう信じつつも、六太は心配していた。 新しい訓練が始まる日——。 NEEMO訓練で高い評価を得て、次に月へ行く日本人に選ばれた六太は、先輩宇宙飛行士・ビンス(ビンセント・ボールド)と行動を共にしていた。実際に月へ行く前に、『控え』の経験を積むため、ビンスのバックアップクルーに任命されたのだ。 これからビンスとは一蓮托生、二人三脚で宇宙を目指す。 にも関わらず、寝不足でフラフラな六太にビンスが言及する。 「ミスター、ナンバ。これから君は、私と同じマニュアル書を読み、同じ船室の空気を吸い、同じシートに座り、同じ訓練を受けるんです。私のリズムについて来られるようにして下さい。それが、私のバックアップクルーに選ばれた者のつとめです」 その頃、ケンジと新田は——。 六太が選ばれたことをバトラーから聞いた2人は、もう自分たちが『月へは行けない』と自覚していた。これまでの月の訓練はなんだったのか、六太が選ばれたことに不服はなかったが、今後自分たちがどうなっていくのか、不安になっていた。 そんな矢先、2人に新たな訓練を始めるよう、辞令がでる。それは、無重力環境訓練施設で、船外無重量訓練をするというもの。その意味は、『ISSへ行くための訓練をしろ』ということだった。新たな希望を与えられたケンジと新田は、

  • S02E39 小っちゃいメモとでっかいお守り

    • January 18, 2014
    • YTV (JP)

    六太が次に月へ行く日本人に決まり、ビンスの控えとして新しい訓練を始めた頃、日々人はPD(パニック障害)を克服できたか確かめるための、復帰試験を受けようとしていた。 NASAの幹部たちが目を光らせる中、プールサイドで運命の時を待っていた日々人は、事前に六太から渡された『お守り』を見つめる。そのお守りとは、プリティ・ドッグの手鏡だった。手鏡は三面鏡になっており、肉球を押すとパカッと鏡が開く仕掛けになっていた。そしてそこには、六太からの小さなメッセージカードが入っていたのだ。 『調べてみたところ、PDの発作対策として、自分を客観視するといいらしい』 『客観視』という言葉に、日々人は子供の頃、六太と発見した出来事を思い出す。三面鏡で自分を見ると、誰かの目で見ているように感じられたのだ。この手鏡は、日々人にとってもってこいのお守りだった。 ついに入水の時——。 宇宙服を着た日々人は、管制官の指示でプールの中に沈んでいた。底に着いても発作はなく、出だしはうまくいったようだった。しかし、問題はこの後。 日々人は試験中ずっと監視され、ダイバーたちに囲まれ、動きづらい宇宙服の閉塞感の中、薄暗い水中で作業をするのである。今の日々人は、いつ発作が起きてもおかしくない状況だった。 そして、突然日々人の耳元で警報が鳴る。 トラブルが起きたと思わせるグリーンカードで、日々人のヘルメットのディスプレイに、『二酸化炭素濃度が上昇中』と表示されたのだ。トラブルを見越していた日々人は、慌てず正しい処理をする。 だが、なぜか警報が消えない。 実はさ

  • S02E40 ヒビトの救い方

    • January 25, 2014
    • YTV (JP)

    NBLのプールでは、日々人がPD(パニック障害)を克服したと証明する、復帰試験が行われていた。 シャロンの励ましの言葉や、六太との約束、プリティ・ドッグの手鏡を支えに、最初は順調に水中での作業をこなし、船外服を着た状態でも平常を保っていた日々人。 このまま合格か——と思われたが、ゲイツがわざと試験を中断に追い込むようなグリーンカード(極秘指令)を出したことにより、事態は一変する。 『二酸化炭素の上昇』という警告表示に、月での遭難を思い出した日々人は、心拍数を上昇させてしまったのだ。 このままでは試験中止もありえる——、誰もが不安を過らせたその時、プールサイドに現れたのは、かつて日々人と一緒に月面に降り立った仲間、バディとカレンだった。六太から事情を聞き、日々人の手助けをしようと駆けつけてくれたのだ。 そしてさらに、日々人の頭上では、水中ゴンドラから降りてくる船外服を着た人物がいた。それは、月面で日々人が命を助けた、ダミアンだった。 「船外活動は基本的にパートナーと、二人でやるもんだ」 もっとも幸せだった時間を一緒に過ごした仲間の登場で、日々人の不安は完全に打ち消されていた。 その後も試験は続行され、日々人はダミアンと共に、バディとカレンの指示で、的確に作業を進めることができた。日々人の心拍数は少し上昇したが、それは発作を予感させるものではなく、月にいた時と同様の、軽い興奮状態に安定していた。 試験も終わりに差し掛かった頃、バックパックを背負った日々人は、ムーンジャンプと同じような姿勢で両手を広げ、高らかに水中を

  • S02E41 孤独な彼ら

    • February 1, 2014
    • YTV (JP)

    水中施設での訓練で高い評価を得て、次に月へ行く日本人に選ばれた六太は、経験を積むため、CES—62のバックアップクルーとして、砂漠での訓練を始めようとしていた。 訓練教官である地質学者のジョージ・マグワイアから説明を受け、砂漠に作られた訓練用施設に来た六太達。 月面に近い環境と、新たな訓練内容にワクワクする六太だったが、同じバックアップクルーの4人は、一癖も二癖もある連中。 この先ずっと同じチームなのに!

  • S02E42 心の片隅に

    • February 8, 2014
    • YTV (JP)

    六太がCES—62のバックアップクルーとして新しい訓練を始めた頃、NASAの会議室では、天文チームによるプレゼンテーションが進められていた。 その内容は、『シャロンの新しい月面望遠鏡』。 一度は却下されてしまったシャロンの夢だが、今度は実現できるのか——? そしてバトラーは、とある人物に『CES—62バックアップクルーのリーダーになって欲しい』と直談判しにきていた。 絶対的な信頼をよせる、その人物とは——?

  • S02E43 ワクワクチームワーク

    • February 15, 2014
    • YTV (JP)

    月への訓練のため、ラバフロー試験場でキャンプ生活をすることになった、六太たちCES—62のバックアップクルー。 相変わらずまとまりがないメンバーは、朝のジョギングもバラバラ。仲が悪いというほどではないが、このままだとこのチームでミッションにアサインされることはないかもしれない。 六太も不安を隠せずにいた。 だがそこに、ついに『リーダー』が到着する。 誰もが尊敬するベテラン宇宙飛行士、その手腕やいかに——?

  • S02E44 俺らの将来

    • February 22, 2014
    • YTV (JP)

    温和なリーダー・エディが合流したことで、ようやくまとまり出したCES−62のバックアップクルー。 その夜、デザートラッツ訓練場の施設の前では、たき火が焚かれていた。たき火を囲むのは、エディ、ベティ、フィリップ、カルロ、アンディ、六太の6人全員。火を囲んで話すと、人は嘘を付けなくなるらしい。自分の事、家族の事を正直に話せば、互いに親睦が深まるというエディの考えだった。 六太が日々人のPD(パニック障害)と復帰試験の事を話し終わると、次はベティの番となった。実は8歳のクリスという息子がいる彼女。出産と育児のために、宇宙飛行士を退いていた時期があり、まだ宇宙に行ったことがないという。そして彼女の夫は、宇宙飛行士の故タック・ラベルだった。 タック・ラベルは、CES—43クルーとしてブライアンと一緒に月へ向かい、帰還時の事故で帰らぬ人となってしまった。事故直後、ベティはもう自分は宇宙飛行士には戻らないと思っていた。だが、それから三年ほど経った今、クリスがまた宇宙に興味を持ち始めたらしい。 「ねえママ。月から見た地球ってどんなかな?」 ベティはそれを嬉しく思い、父親の代わりにその問いに答えようとしているのだ。 翌日、正規クルーと合同した六太たちは、デザートラッツでの最後の訓練を始めようとしていた。現場にはピコ・ノートンがおり、自らが開発の指揮をとった『新型の月面着陸船』について説明した。 訓練後、ピコは幼馴染であるビンスと酒を酌み交わしながら、少年時代にリックとした『約束』を語った。 「いつか、リックが管制官になり、宇宙

  • S02E45 宇宙飛行士であり父であり

    • March 1, 2014
    • YTV (JP)

    クリスマスが近づく頃、ケンジには家族が一人増えようとしていた。妻・ユキに、第二児の出産が近づいていたのだ。しかし宇宙飛行士としてケンジは、いま何を目指しているのかも曖昧なまま、ひたすら言われた訓練を続けている状態だった。ゴールの見えない不安な生活。それは六太が月にいくことが決まったかわりに、ケンジや新田が月に行ける可能性が消えたからだった。しかしクリスマスの日、ケンジはバトラーから呼びだされる。

  • S02E46 消えないんだ

    • March 8, 2014
    • YTV (JP)

    ヒューストンで初めて揃って正月を迎えた南波一家。南波・母は、初笑いのためにDVDまで持参していた。しかし日々人は、まだ次のミッションが決まらず、不安な毎日をすごしていた。復帰試験には合格したものの、日々人の復帰に反対している人物がまだ多く、未だに訓練が少ないらしいのだ。次のミッションが決定するよう、バトラーも最善をつくしてはくれているようだが……。そして年明け、ついに日々人の行く末が提示される。

  • S02E47 最強の宇宙飛行士

    • March 15, 2014
    • YTV (JP)

    月面での事故の影響でパニック障害となり、前線から外されてしまった日々人。 復帰試験はなんとか乗り越えることができたが、一度パニック障害となった宇宙飛行士は、復帰できないことが判明する。その事実を聞いた日々人は、誰にも何も言わず、姿を消してしまった――。 日々人の失踪の理由を知らない六太は、心配で訓練に身が入らずにいた。 ようやくバトラーからその理由を聞いた六太は、『何かしたい』と行動に出るが――……?

  • S02E48 人生可変、約束不変

    • March 22, 2014
    • YTV (JP)

    『兄とは常に、弟の先へ行ってなければならない』 子どもの頃から、兄・六太はずっとそう思っていた。だが何かにつけて先へ行っていた、弟・日々人。 しかしその日々人が姿を消した今、六太は自分が先に行っているのか、後ろにいるのか、なにもわからない状態でいた。 『今のままじゃ、お前が生きてんのかどうかもわからん。何でもいいから返信よこせ』 果たして南波兄弟は、これからも宇宙を目指す道を、歩むことができるのか――…?

Additional Specials

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    SPECIAL 0x3 宇宙兄弟#0

    • August 9, 2014
    • YTV (JP)

    宇宙飛行士ブライアン・ジェイが乗っている月面着陸ロケットCES-43のバックアップクルーに選出された南波日々人。しかし、ブライアンは想定外の事故によって帰らぬ人となり、さらにはNASAが有人ミッションの見直しを検討することに。一方、日々人の兄、六太は宇宙飛行士への夢を諦め、自動車会社に勤務する会社員になっていた。

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    SPECIAL 0x4 Unknown

    • YTV (JP)