JAXAの二次審査を終えた六太は、日々人に呼ばれ、NASAの家族支援プログラムを使ってタダでアメリカ・ヒューストンへ来ていた。 待ち合わせ場所で日々人の飼い犬・アポに追いかけられるも、ようやく日々人と再会を果たした六太。しかしその夜、いまだ兄弟一緒に宇宙へ行くと信じて疑わない日々人に、六太は言いづらい言葉を放った。 「……俺に行けるわけねぇだろ」 今の自分は常に宇宙飛行士である弟と比べ続けられる存在。誰も『南波六太』とは呼んでくれない。認めたくはなかったが、『自分が宇宙へ行くのは無理』とはっきり伝えたのだ。しかし日々人は無理だとは思っていない様子。 「今と昔で違うもんがあるとすりゃ、それはムッちゃんが俺と張り合わなくなったってことだ。もっと張り合えよ……つまんねえよ」 翌日。日々人からの手紙でNASAの見学に誘われた六太。だが昨日言われた言葉が頭から離れず、なかなか出かけることができないでいた。そこにアポを連れた散歩帰りのスミス夫妻がやってくる。 「君、ムッタか? そうだろ?」 「そうよ、ムッタよ、ムッタ」 なぜか六太を見て笑いだすスミス夫妻。いつも日々人から六太のことを聞いており、はじめて会った気がしないと言うのだ。スミス夫妻が日々人に六太のことを聞くと、いつもこう答えるらしい。 『ムッちゃんは今頃日本で、宇宙飛行士になる準備をしているはずだよ、ムッタは準備中!』 必ず六太が宇宙飛行士になってくると思っていた日々人にとって、自分だけが進んでいる毎日は『足りない日々』だったようなのだ。