月面ローバーの改良案が評価された六太と、ケンジ、新田を含む12名の飛行士たちは、憧れの月を目指すため、過酷な訓練を始めようとしていた。それは、通称・NEEMO訓練(NASA極限環境ミッション運用訓練)というもので、海底に造られた仮想月面基地で、約2週間のシミュレーション生活を送るのだ。 フロリダの海底20メートルの深さに設置されたNEEMOの施設は、地球上でもっとも月面を再現できる場所だった。居住施設は全部で3つあり、六太は2つ目の施設・AQII(アクエリアス・ツー)に、ケンジと一緒に入ることに決まった。 ダイビングスーツで潜水し、六太とケンジが海底施設に入ると、そこにはすでに、2名のベテラン宇宙飛行士と、1名のダイバーが待っていた。リーダーのジョージ・ラブ(宇宙飛行士)と、巨大な身体を持つアンディ・タイラー(宇宙飛行士)、そして海が大好きなハミルトン(技術支援・ダイバー)である。 NEEMO訓練1日目——。 一息ついたところで、ジョンソンスペースセンター・NEEMO管制室から初日の訓練内容が知らされた。それは船外(海底)に出て、月の重力を仮想体験するというものだった。 ラブの先導で、特殊な潜水服を着込んだ六太は、さっそく船外活動に勤しんでいた。自分の重さを調節しながら、月面を想定して動くのだ。最初はなかなか慣れない六太だったが、ケンジに励まされ、協力しながら、楽しい訓練初日を終えることができた。 船内に戻ると、ラブが今後の訓練内容について話し始めた。今後は船外活動が2割、残りの8割は同時に訓練をしている他2チ