Mutta's proposal to improve the lunar rover is received well. But he still hasn't convinced Chief Butler to let him train for lunar missions. Desperate for ideas, Mutta researches Chief Butler's history for clues.
六太が提案した『フロントナビシステムを利用した月面ナビ』は、NASAの役員満場一致のもと、実装が決定されようとしていた。 これでようやく六太も月の訓練に参加できる、と思いきや――バトラー室長だけは、六太を参加させるか否か迷っていた。それは、パニック障害に苦しむ日々人を思ってのことだった。バトラーが慎重になる理由は、20年以上前にNASAにいた宇宙飛行士、ロナルド・クーパーと日々人が似ていたからだった。ロナルドは、T―38の飛行訓練中に事故で死にかけ、その後パニック障害になってしまった。治療に励むも思うように成果が出せず、最後はNASAを去ったのだ。 いま判断を焦れば、日々人も同じように宇宙飛行士を辞めてしまうかもしれない、バトラーはそれを心配していたのだ。 一方六太は、飛行場で先輩宇宙飛行士であるアレックスに、『バーティカルクライムロール』というアクロバット技を教えてくれと頼んでいた。月の訓練への道を開くには、結局、バトラーに認めてもらうしかないと気づいたのだ。以前、バトラーは「自分を一人前のパイロットだと感じたのはいつか?」という問いに、こう答えていた。『バーティカルクライムロールを教官の前で披露したときだ』――と。 バーティカルクライムロールとは、回転しながら急上昇していく、ド迫力のある技である。見る者にはロケットの打ち上げのようにも感じられるため、バトラーは己の出世欲、宇宙への憧れ、向上心、それらをストレートに伝える力が秘められていると感じ、宇宙への切符を勝ち取る魔法の裏技と思っていたのだ。六太はバトラー