2か月後に行われる最終試験を前に、六太はヒューストンへと来ていた。 「俺も早く訓練とかして格好いい汗かきてー!」 日々人はNASAで宇宙飛行士の訓練だが、自分はオジーのところで芝刈り作業なのだ。 六太はまたしても、弟と兄である自分を比べてしまっていた。 NASA・ジョンソン宇宙センターでは――。 職員が日々人たちに月面任務について説明をしていた。 月面での長期滞在で問題は、太陽風や宇宙線などの放射線と小隕石である。 むき出しの住居モジュールでは被ばく量を抑えきれないので、これを大量にカットするために、モジュールをレゴリスと呼ばれる月の砂で、覆い隠す作業が必要になるのだ。 その時に使用するのが、レゴリス散布ローバー『スパイダー』と、月面用の『ショベルカーアームストロング』。 CES-51のクルーである、フレディ、バディ、日々人は、分厚い説明書を渡され、ローバーの操縦を6時間でマスターするよう言われたのだが――。 日々人は説明書を読まず、いきなりローバーに乗り込もうとしていた。 「やった方が早い!」 一方、六太も月面ローバーに近いものに乗っていた。高度なテクニックを要する芝刈り機である。 経験があるオジーでさえ、横転しそうになるくらいの難度が高い乗り物だが、六太も説明書を読まずに運転をはじめた。 「こーいうのは……やった方が早い!」 昼食時、六太はジェニファーに、日本好きの宇宙飛行士、ローリー・クモオを紹介される。 六太が最終試験まで残ったことを祝う2人だが、1つ気になることがあるという。 選考者の1人である吾妻滝生が、日々人のことを良