元・加賀藩剣術指南役、斑目久太郎(北村一輝)。かつては「まだら鬼」と呼ばれ恐れられた剣客だったが、今はしがない貧乏浪人としてほおずき長屋でひとり静かな暮らしを送っている。剣以外で稼ぐことを知らない久太郎の生活は困窮しており、若菜(平田薫)の売る謎の棒状の食べ物『どなつぼう』の屋台を横目に夕食のザリガニを釣る有様だ。一方、ひょんなことから久太郎の剣術を目にした呉服問屋加賀屋の番頭、佐吉(水澤紳吾)は、主人の与左衛門(伊藤洋三郎)をとりこにしている白猫『玉之丞』の暗殺を久太郎に依頼する。佐吉曰く、玉之丞を飼い始めてから堅物の主人が幼子のように変わってしまった。これは主人をたぶらかす化け猫であり、妖怪退治なので是非お願いしたい。ということだ。
結局、化け猫ならぬ白猫の玉之丞を匿ってしまった久太郎。佐吉には、悪霊退散の札が貼られた壷を『猫壷』と称して渡し、中に封じ込めた風を装い誤魔化すことにしたのだ。報酬の三両を持ってきた佐吉は、主人の与左衛門が町奉行所から『水責めの政』と恐れられる同心の石渡政道(ユキリョウイチ)とその子分の八五郎(川村亮介)を呼び、犯人探しを始めたことを久太郎に伝える。ほおずき長屋。隣に越してきた若菜の突然の訪問に続き、大家からも猫の存在を怪しまれた久太郎は玉之丞を隠し続けることに限界を感じ、神社に放つことを思い立つ。しかし神社では、不良武士の蜂谷孫三郎(本宮泰風)が草履を汚されたと怒り、猫好きの老人・義一を彼の抱く猫もろとも斬ろうとしていた…。
玉之丞についたノミに襲われ、たまらず家を飛び出る久太郎。神社まで歩くと先日命を助けた義一がいた。ノミに悩む久太郎に義一は『猫見屋』を紹介する。猫見屋。看板には【猫のことなら何でもおまかせ】と大きく書かれている。女主人のお七(高橋かおり)は玉之丞をブラッシングしながら、久太郎に『シャボン』なるものを渡し、こまめに玉之丞を洗ってあげるよう促す。いまだノミの残る玉之丞と長屋に戻った久太郎のもとに、同郷の置き薬屋、五郎(佐藤誓)がやってくる。五郎はたびたび久太郎の妻、お静(横山めぐみ)と娘おハルからの手紙を届けていた。五郎は久太郎に明日郷里に戻るのでそれまでに返事を書くよう忠言し帰っていく。開封もせず箪笥に仕舞われたままの手紙をじっと見る久太郎。郷里に住んでいた頃、おハルを泣かせてしまった事件を思い出していた…。
「好きな言葉は猫の恩返しっ…。」しょうもないことを言いながらガックリとうなだれる久太郎。今日も傘は作った端から玉之丞に台無しにされていた。いたずら後の定位置、押入れに入れられる玉之丞。しかし今日はなんだかおとなしい。時を同じくして、加賀屋では主人の与左衛門がうなされていた。玉之丞が暗くて狭いところに閉じ込められ、助けを求めている夢を見たのだ。その話を聞いた佐吉は猫壷の封印を確かめに行く。元気のない玉之丞を連れ猫見屋に来た久太郎。お七に「猫も人間も疲れを癒すためには遊びが必要。」と説かれる。遊ぶことを知らない久太郎はお寺の小僧てる松に玉之丞と遊ぶよう頼む。てる松と遊ぶ玉之丞。太陽に照らされた白い毛並みがとても綺麗だ。楽しく遊ぶ彼らを見た若い男女が近寄ってくる。彼らはてる松に、玉之丞を二両で買うと申し出る…。
気持ちの良い朝。魚篭に入れた玉之丞を連れ散歩に出た久太郎。通りでは若菜が屋台で『どにゃつぼう』を売っている。全然売れないにも関わらず笑顔を絶やさない若菜が久太郎には微笑ましく思える。猫見屋。玉之丞の診察代のツケがたまっていた。お七は、「剣の達人にぴったりの仕事がある。」と久太郎を裏庭に連れて行く。…そこには薪の山と斧が置かれていた。その頃、加賀屋では変わらず与左衛門が悶えていた。今度は玉之丞が夢に出てこないので心配だというのだ。また猫か。と佐吉は再び猫壷の元へ。割り終えた薪の納品に『いやし処・猫茶屋』なる店に来た久太郎。店内ではお客がそれぞれの席で猫と戯れていた。しかし、偵察にきた若菜と客の義一と共に羊羹を食べ外に出ると若菜の屋台が壊されていた…。
気合の入った声をあげ、木刀を振る久太郎。玉之丞は若菜から差し入れてもらった大好物の「どにゃつぼう」を食べている。久太郎は玉之丞に「もう一度、藩仕えの武士としての仕事を探そうと思う。」とつぶやく。一方、加賀屋では与左衛門のもとに石渡と八五郎がやってきた。動揺する佐吉を怪しく思った石渡は、「玉之丞そっくりな猫を見たという目撃証言があった。」と佐吉にカマをかける。表通りには、求人募集の立て札を真剣に見ている久太郎の姿が。そこに以前、久太郎に喧嘩を売りコテンパンにされた武士、橘と竹下が偶然やってくる。2人に促され、人気のない町外れに連れて行かれる久太郎。対峙する久太郎と橘、竹下。そしてそこに因縁の相手、内藤までもがやってきた…。
ほおずき長屋、朝。すべてが終わり、元の静かな生活に戻った久太郎。しかし静か過ぎてどこか落ち着かない。久太郎は裏庭に出て素振りを始めるが心はそぞろ玉之丞の方へ・・・。加賀屋猫部屋。与左衛門が満面の笑みで玉之丞を膝に乗せている。そこに佐吉が極上寿司を手に入ってくる。「あーん。」玉之丞に寿司を食べさせようとする与左衛門。こちらも以前の日常の風景に戻っていた。なんとなく心がまとまらない久太郎は散歩に出ることに。道すがら忙しく「どにゃつぼう」を売る若菜に声を掛けると「猫の手も借りたいよ!」。・・・“猫”の言葉に久太郎の心はまた玉之丞の元へ・・・。居場所のない久太郎はやがて『猫茶屋』に辿り着く。中に入るとそこには意外な人物が猫と戯れていた…。
元・加賀藩剣術指南役、斑目久太郎(北村一輝)。 かつては“まだら鬼”と呼ばれ、剣豪として名を馳せていたが、一匹の白猫・玉之丞との出会いで人生が変わった。 一度は里に残していた妻子の元に戻ったが、武士としてのプライドと、家族と玉之丞の為、再び江戸へ。 以前暮らしていたほおずき長屋へ玉之丞と共に戻ってくる。 新しい大家の菊乃(森カンナ)は、戻ってきた久太郎に「猫は禁止」と早速釘を刺す。 なんとか菊乃にはバレずに済んだものの、今後の生活が思いやられていると、やけに庭が騒がしい。 庭の障子を開けてみると、なんとそこには、20匹近くの大量の野良猫が居付いていた!
江戸に戻った久太郎だったが、相変わらず仕官の口が決まらない。 貧乏暮らしも板につき、玉之丞と一匹のメザシを取り合う日々。 こんな暮らしから脱却して、江戸に妻子を呼びたい久太郎は、仕事探しに精を出す。 猫見屋のお七(高橋かおり)に口入れ屋の「ぴんはね」を紹介してもらうと、そこには、胡散臭い主人・天引(モト冬樹)が。 このご時世、仕官の口など簡単に見つかりはしない。 だがそこで、一人の戸田藩士の男と出会う。
口入れ屋の「ぴんはね」に玉之丞と一緒に赴く久太郎。主人の天引も大の猫好きで、自分の飼い猫“ねずみ”を自慢げに紹介する。 そんな久太郎にぴったりの仕事があるとの事。条件は、「丈夫で勇敢な武士」。 喜んだのも束の間、その仕事は、「猫を探す」というものだった。 猫の仕事なんぞ毛頭受ける気もない久太郎だが、賃金が1両と破格の為、渋々受ける事に。 依頼主の武家のご隠居・田沼(清水綋治)に話を聞くと、探して欲しいのは、ひと月前に行方を眩ませた愛猫・紋次郎の行方だった。
家庭菜園に精を出す久太郎。大根の芽が出てきて喜んでしまうほど、貧乏暮らしが板についてしまっている。 そのくせ、ほおずき長屋に引っ越してきた小助(佐野泰臣)からの振る舞いの餅は、プライドが邪魔をして受け取らない。 なにはともあれ、生活の為、口入れ屋の「ぴんはね」に足を運ぶ久太郎。 だが、店主の天引きから仕事の代わりに頼のまれたのは、迷い込んでしまった仔猫の世話。 困った久太郎は、猫見屋のお七を訪ねると、「猫飼指南―仔猫編―」を手渡され、挙句店番を任せられるのであった。
いつものように口入れ屋の「ぴんはね」に立ち寄る久太郎。 そこで聞いたのは、江戸中の美猫を集めて、その中の一番を決める『大江戸猫選び』。 蕎麦屋の小助に、玉之丞がこのコンテストに出場すれば、間違いなく一番だと太鼓判を押される。 しかも、優勝賞金は10両。 破格の金額に心が揺らぐ久太郎の目の前に、“永遠のライバル”と本人は豪語する蜂谷孫三郎(本宮泰風)が現れる。 孫三郎は、久太郎に自分の猫“チャトラ”を見せつけ、コンテストでの勝負を挑んでくるのであった。
『大江戸猫選び』に出場させるつもりで、無理に芸を教え込んだために、家出してしまった玉之丞。 そのうち帰って来るとタカを括っていた久太郎だが、一向に戻って来ない。 いたたまれず久太郎は、江戸中を探し回る。口入れ屋の「ぴんはね」の店主から有力情報を聞く。 それは、隣町にある“化け猫屋敷”の噂。長いこと使われていない屋敷に野良猫が住み着いていて、そこを訪れた者達が幽霊や化け猫を見たという。
空腹で腹の虫が鳴りやまない久太郎。玉之丞も恨めしそうにみゃあみゃあ鳴いている。 出くわしたのが、随分と身なりの良い孫三郎。金になる仕事を見つけたと、袂から大量の小判を見せつける。 と、玉之丞の様子がおかしい事に気づき、お七の元へ急行。 玉之丞のお腹の中に虫がいるかも知れないというお七の見たて。薬を飲ませないと、命が危ないという。 しかし必要なのは、3両もする相当高価な薬。 背に腹は代えられぬと孫三郎に金のなる仕事を紹介してもらう事にした。
庭の大根も大豊作で、自分の才能に酔いしれる久太郎。 しかし、収穫の半分を家賃代わりの年貢として、大家の菊野に奪われてしまう。 気を取り直して、玉之丞と大根汁を食べようと嬉々として作り始める。庭に生えていたキノコも入れて、実に美味しそうな汁を完食。 腹も満たされ、うたた寝をする久太郎と玉之丞。 が、目が覚めると様子がおかしい。 なんと、久太郎と玉之丞の心と身体が入れ違ってしまった?!
隣人の小助のサポートの甲斐あって、長屋での玉之丞との暮らしを謳歌出来ていた久太郎だったが、ついに大家の菊野にバレてしまった。 菊野は頑なに態度を変えず、久太郎と玉之丞は、ほおずき長屋から追い出されてしまった。しかたなく、町の外れにある廃屋で夜露を凌ぐ。 職を求め「ぴんはね」に向かった久太郎を待ち受けていたのは、念願の剣術指南役。早速、新垣藩の面談に向かうと、一つ条件が出される。 それは、玉之丞によく似た白い猫を探して欲しいとの事だった。
泣く子も黙るまだらの鬼にも、天敵はいる。 それは姑のタエ。いつまでも妻子を里に残し、のびのびと一人暮らしをする久太郎に痺れ切らし上京。相当勝気なタエは、江戸に着いて早々スリを成敗。勢い余って岡っ引きまで投げ飛ばして、番所に厄介になるような人物。 タエから猫との気ままな暮らしを叱責され、改善がないようなら「離縁」を突きつけられる久太郎。タエが用意したのは、薩摩藩の参勤交代要員の話。しかし、玉之丞とは離れ離れの暮らしをしなければならない。悩む久太郎だが、家族の為止む無しと承諾した。 一方、白猫を探していた新垣藩藩士たちは、玉之丞の身柄を狙っていた。
参勤交代要員として薩摩藩を訪ねる久太郎。屋敷内では、大勢の男たちが忙しなく準備している。心残りなのは、タエに預けている玉之丞だった。 その頃、新垣藩藩士が久太郎の長屋に現れ、抗うタエから無理矢理玉之丞を奪っていく。隣に住む小助は、事情を教えるため、さかやき中の久太郎の元へ。 玉之丞の奪還の為、久太郎はひた走るのであった―。
時は幕末。かつて百人斬りと恐れられた剣客は、浪人となり果てていた。行き場を失った男に久々に舞い込んだ仕事。それは、敵対一家の親分が飼っている「猫」を斬れ。というものだった。金に釣られて押し入った屋敷、くりくりの白猫が無垢な瞳で見上げていた…。
斑目久太郎(北村一輝)は、無双一刀流免許皆伝の剣豪だが江戸での仕官が叶わず、今は故郷で姑・タエの小言を浴びながら浪人生活を送る日々。 そこへタエが、四国・土佐藩の剣術指南役の話を持ち帰ってくる。 単身赴任に気乗りしないながらも、愛猫・玉之丞を連れ旅立った久太郎は、謎の忍者の襲撃を受けつつも小舟をゲット。 ゲリラ豪雨やら空腹やらに耐え、遂に島を発見する。しかし喜んだのも束の間、それは島ではなく巨大なクジラだった! 果たして久太郎と玉之丞は、土佐にたどり着けるか?
吾輩は猫である。飼い主はまだない。 人里離れた場所にぽつんとある寺小屋『白玉塾』に赴任してきた女教師の美和(山口紗弥加)はびっくりしていた。子供たちと一緒に白猫が授業を受けていたのだ。 その猫の名は玉之丞といい、前塾長が拾ってきたのだという。皆から愛され幸せな日々を送っていた玉之丞だったが、ある日、江戸の大名に送る意見書と 贈り物が入った箱の中に入り込んでしまい、そのまま箱は飛脚の飛松(田中直樹)の手によって一路江戸へ運ばれてしまう…。 一方、飛脚の飛松もびっくりしていた。寺小屋から預かった江戸宛ての荷物が「にゃあ」と鳴いたのだ。急いで箱を開けると中から白い猫が顔を出した。 美和から大事な荷物だと念を押されていた飛松は、飛脚の意地とばかりにあの手この手で大名に受け取ってもらおうとするが…。