「星界の紋章」番外編。現皇帝の息子にしてクリューヴの王、ドビュースとその恋人ブラキアは、交易途中に立ち寄った辺境の領域で正体不明の難破船を発見する。船内に入り、突然動き出した船の軌道修正をするため入った機関室で、二人は多くのアーヴのミイラを見つける。それは、アーヴ創世の悲惨な歴史を物語っていた。
ジントの住む惑星マーティンは、ある日突然、圧倒的な兵力を有するアーヴの星界軍の侵略を受けた。政府主席であるジントの父・ロックは、全面降伏を受け入れ自らがアーヴ貴族となりマーティンの領主の地位におさまってしまう。それから七年後、ジントはアーヴ貴族の義務である兵役に就くため帝都へ向かおうと宇宙港にいた。
宇宙港で、ひったくり騒ぎに巻き込まれたジント。走り去ろうとする犯人を捕らえたのは青い髪の少女で、彼女はジントを迎えに来たアーヴの軍士だった。名前を尋ねるジントに対し、少女は宣言するかのように「ラフィールと呼ぶがよい!」と答える。
ラフィールに連れられて、戦艦ゴースロスに乗り込んだジントは、艦長のレクシュから、ラフィールが皇帝の孫娘であると知らされる。戸惑いを隠せないジントはラフィールに敬語を使うが、ラフィールはジントと名前を呼び合うような友人になりたいと言い、自らの出生の秘密について語り始めるのだった。
正体不明の時空泡群に包囲されたゴースロス。それは、アーヴ帝国に敵対する人類統合体の艦隊だった。自分たちの勝利する確率が極めて低いことを知ったレクシュは、ジントとラフィールに、連絡艇で脱出するように告げる。
勝ち目のない戦いに突入するゴースロス。一方、ジントと共に脱出したラフィールは、自分の無力を悔やんでいた。励ましの言葉をかけるジントに、ラフィールは自分の遺伝子を提供したのはレクシュであることを打ち明ける。
ジントとラフィールの乗った連絡艇は、補給のためにフェブダーシュ男爵領に立ち寄った。フェブダーシュ男爵は、補給する燃料が不足している、連絡艇に点検が必要であるなどと言い彼女を足止めする。しかし、ジントは地上人ということから差別的な扱いを受けて……。
ラフィールと引き離されたジントが目覚めたのは、フェブダーシュの父、前男爵スルーフの部屋だった。純粋なアーヴに劣等感を抱くフェブダーシュは、地上人の父を幽閉していたのだ。一方、ジントに会わせてもらえないラフィールは、フェブダーシュの家臣セールナイを味方につけて、二人だけの反逆を開始する。
ラフィールは連絡艇に乗り込んで、前男爵の幽閉区画へ向かう。真空の宇宙を渡らせるという無茶な方法でジントと前男爵を救出したラフィールだったが、すぐにフェブダーシュの反撃が始まる。非武装の連絡艇で、フェブダーシュの宇宙艇と戦うと言うラフィールは……。
フェブダーシュ男爵領に別れを告げ、再びスファグノーフを目指すラフィールとジント。しかしスファグノーフ門はすでに敵の手に落ちていた。辛くも追撃は振り切ったが、目的の基地に受け入れられず、ジントたちは惑星クラスビュールに不時着を余儀なくされる。
連絡艇を捨てて移動を始めたジントとラフィール。初めての地上に戸惑うラフィールは、敵の占領下で潜伏するためとジントに説得され、髪を黒く染めて服を着替える。ひとまずどこかの都市に紛れ込もうと考えた二人は、その道すがら柄の悪い男たちに声をかけられて……。
ジントとラフィールは、ある宿に潜伏していた。そこに四人の男たちが踏み込んでくる。それはアーヴ支配からの自主独立を目指す組織「反帝国クラスビュール」の構成員たちだった。ジントは、ラフィールを人質にして帝国と取引をしたいという構成員・マルカの要求に、条件付きで応じることを決める。
偵察分艦隊フトゥーネの司令官、スポールは、敵艦隊を容赦なく蹴散らしていた。一方、ジントとラフィールを連れて行動していたマルカたちは、憲兵に呼び止められる。憲兵たちは、彼らが帝国のために働いていると誤解していたが、ラフィールはその誤解を解くよりも先に、憲兵たちを攻撃してしまい……。
爆風に吹き飛ばされたジントとラフィールは、グゾーニュ幻想園に紛れ込んだ。脱出を試みる二人だが、出口を目前にして警察に追い詰められてしまう。渋々投降した二人の前に、カイト憲兵大尉が現れる。アーヴを憎んでいる彼の銃口は、ラフィールに向けられる。しかし、ジントは身を挺してラフィールを守ろうとして……。
アーヴの人類帝国は人類統合体への反攻作戦を開始した。そんな中、主計修技館を卒業したジントは、ラフィールが艦長をつとめる突撃艦バースロイルに赴任。
人類統合体に対し、旧領回復を目的とした幻炎作戦を発動したアーヴ帝国。スポール提督率いる幻炎第一艦隊は、敵宇宙要塞を撃破してアプティック星系内に進む。
休息していたジントの元に、アトスリュアが現れる。兄のことは恨んでいないと言うアトスリュアだが、警戒心は晴れないままだった。そんな中、バースロイルは正体不明艦の迎撃を命じられる。
アプティック門から平面宇宙に進入したアーヴ軍は、敵の威力偵察だった時空泡群の追撃を開始した。攻撃力も防御力もアーヴ突撃艦を上回る敵巡航艦に苦戦を強いられるラフィール。
翔士たちは束の間の休暇を楽しむ頃、幻炎作戦は新たな局面を迎えていた。それによってアプティック防衛艦隊の指揮官に派遣されたのは、“華麗なる狂気”という異名のビボース一族の兄弟だった。
ジントはアトスリュアから、兄の誕生日を祝おうと誘われた。彼女の兄は、以前ラフィールがやむを得ず手にかけた前フェブダーシュ男爵。死者の弔いの晩餐に、ラフィールは出席することを決める。
平面宇宙内の移動速度は、時空泡内の質量に反比例する。そのため、戦闘で時空泡内に大量の浮遊物を抱えたバースロイルは、同じ状況の僚艦セーグロイルと共に、本隊から遅れて帰還することになった。
敵・人類統合体の狙いが、アプティックと確定した。来たる決戦を前にして、突撃艦バースロイルのクルーたちには、束の間の休息が与えられた。そして、決戦の日がついに訪れる…!
ラフィールの所属する突撃艦隊は、味方の艦隊が到着するまでの間、独力でアプティック門を守らなければならない。ジントとラフィールは、アーヴの3つの生き方について話し合う。
新兵器による執拗な攻撃の前に、アプティック防衛艦隊は苦戦を強いられる。僚艦キドロイルの支援に向かうバースロイルだが、キドロイルは機雷の直撃を受けて爆散してしまう。
アーヴ艦隊は敵艦隊に格闘戦を仕掛ける。僚友の死を目撃して気落ちするラフィールだが、軍を上回る数の敵艦隊を相手に勇戦する。しかし敵艦の主砲がバースロイルを目掛けて発射されて!?
集中砲火を受けたバースロイルは、戦線離脱を余儀なくされる。退艦の指揮を任されたジントは取り残された負傷者の救助に向かうが、その途中で爆発に巻き込まれ、通信を途絶えてしまう。
本体の左翼と右翼の艦隊が到着すると戦況が一変し星界軍の勝利は決定的なものに。バースロイドから脱出したジントとラフィール。昔の夢を見たジントは思う、自分は何者だろうと。
ビボース提督率いる狩人第四艦隊所属突撃艦バースロイルは、新たな任務を受け、輸送艦隊と共にロブナス星系に向かう。制圧した惑星ロブナスIIの領主代行を命じられたラフィールは、不満げな様子だった。
ロブナスIIからの電磁波は、領民政府代表を名乗る4人の人物からの通信だった。強襲輸送艦ダーク・セスで降下した代官副代行ジントは、星界軍に対し大規模な移民計画を要請される。
行政長官メイディーンからの要請は、行政庁職員と家族約2万人を移民させることだった。ジントは配給の輸送艇が狙撃されたことで叛乱の可能性を実感、ラフィールへ報告する。
敵残存艦隊は、突出するビボーズ提督の第四艦隊と本体の間をぬって天川門郡中心部へ脱出を図ろうというのだ。この敵艦隊の進路上にロブナス星系があるため、輸送艦隊に撤退命令が下される。
アンガスン率いる囚人たちの叛乱は、その範囲を広げつつあった。ジントたちは行政庁舎の放棄を決める。一方、ラフィールの指揮により、ダークセス以下2隻の強襲輸送艦は地上降下を開始する。
ジントとメイディーンは、移動の車中で叛乱側の刑務官に拉致されてしまう。この叛乱の裏には、麻薬の存在があった。叛乱の首謀者は、ジントを人質にしてラフィールと交渉を始めるが!?
ロブナス星系を訪れたスポール率いる狩人第一艦隊。そこにはバースロイルが残っていた。即時撤退を要求するスポールに、ラフィールは帝国の威信をかけて移民計画の遂行を要求する。
スポールは、ラフィールと約束したロブナスIIの保持を少しでも長引かせるため、敵艦隊と決死の時間の取引を行う。そんな中、ラフィールのもとに新しい領民代表トマソフが訪れる。
スポール率いる狩人第一艦隊は全方位雷撃戦を展開する。だが、敵艦隊の攻撃で撤退を余儀なくされ、その後ラフィールと合流。狩人第四艦隊司令長官はバスコット門の先に友軍旗艦を確認する。
休暇願いを出したラフィールはロブナスIIに降り、ジントの行方を探そうと画策した。だが、友人のために料理を用意することでジントの無事を祈るサムソンに諭され、断念する。
「狩人作戦」の中、ロブナスIIで反乱に巻き込まれ、捕らわれてしまうジント。生還を果たしたジントは軍を離れることに。一方、星界軍ではアトスリュアのもと、第一蹂躙艦隊が編成されていた。
帝国領に復帰したジントの故郷、惑星マーティンは帝国からの独立を画策していた。ソバージュが艦長を務める襲撃艦フリーゴウに便乗し、故郷に向かうジント。果たしてジントは故郷を救えるのか?