二十歳の大学生、天川春人は路線バスの事故で命を落とす。薄れゆく意識の中でただひとつの後悔は、高校の入学式以来姿を消してしまった幼馴染の美春への伝えられぬ想いだった。ところ変わってベルトラム王国のスラム街。薄汚い小屋の隅で悪夢にうなされて目を覚ます孤児の少年リオ。ある男への復讐だけを目標に生きてきたリオの脳内に突然、見知らぬ世界で暮らすもう一人の自分――【天川春人】の記憶がフラッシュバックする。
誘拐された王女フローラを救出したリオは、その恩賞としてベルトラム王立学院の初等部に特待生入学することに。 だが王侯貴族の子弟が集う学院の生徒達は孤児であるリオを歓迎しない。 周囲から蔑んだ視線を向けられるリオを気遣ってくれるのは、十二歳の若さで初等部の担任講師を務める少女、セリアだけだった。 文字を読むことができないリオのため、セリア先生とリオ、放課後の研究室で二人きりの個別指導が始まる。
リオの王立学院編入から五年が経ち、卒業試験の野外演習が迫っていた。 卒業後は両親の故郷であるヤグモ地方に向け旅立ちたいと語るリオの言葉を複雑な想いで受け止めるセリア……。 野外演習当日、魔物の襲撃に我を失ったスティアードが王女フローラを崖に突き飛ばしてしまう。 とっさにダイブしたリオは空中でフローラの身体を崖の上に投げ返し、そのまま高さ三十メートルはある崖の下へと落ちていった……!
セリアに別れを告げ、ベルトラム王国から旅立ったリオは、隣国ガルアーク王国の交易都市アマンドにたどり着く。 城門前の露店には「パスタ」や「マンジュウ」という名の料理があった。 それらの開発者であるリーゼロッテは自分と同じく日本人の記憶を持っているのではと考えるリオ。 都市を出て森に入ると行き倒れた少女の姿が……。 リオが近づいて声をかけた瞬間、少女は目を見開きリオにナイフを突き出してきた!!
ラティーファと未開地の森に入ったリオは、眠っている間に亜人らしき集団に取り囲まれた。 「精霊の民」と名乗る彼女らと話し合いを試みるリオだが、 翼獣人のウズマは同じ獣人であるラティーファをリオが拉致したと思い込み問答無用で襲いかかってくる。 ウズマの電撃で意識を失ったリオの夢に現れたのは、 ピンクブロンドの髪を靡かせた見知らぬ美少女と、【天川春人】の幼馴染の少女、綾瀬美春だった。
リオが里で暮らすようになって一年が過ぎ、精霊大祭の日が訪れた。 大樹の精霊ドリュアスの祝福を受け、リオは精霊の民の盟友として認められる。 楽しい宴の夜、リオから里を出るつもりであることを告げられたラティーファは、 それを受け入れられずに森へと走り去ってしまう。 一方、上空で侵入者を警戒する里の戦士達が不審なオドの反応を察知する。 その正体は里を鋭く狙うブラックワイバーンの大群だった。
年貢を運ぶ交易隊の護衛としてカラスキ王国王都を訪れたリオ達。 役目を終えたリオとサヨが城下町で買い物や食事を楽しんでいると、幼い少女をさらおうとしている浪人に出くわす。 難なく迎え撃ち少女を助けるリオ。 その少女コモモは検税官ハヤテの妹だった。 ハヤテの父・ゴウキはユバからの手紙を読んで驚愕し、妻のカヨコとともにリオの宿を訪ねる。 そして、自分達はリオの母・アヤメに仕えていた者だと告げるのだった。
あらためて母の復讐を決意したリオは、しばらくしたらシュトラール地方へ戻ることをユバに告げる。 従姉のルリ以外の村人達には王族であることを隠したまま、穏やかな日々が過ぎてゆく。 春になり、リオが村を出ることを知ったサヨは家に帰るとひとり土間で泣き崩れる。 そんなサヨの姿を見て、いてもたってもいられなくなった兄のシンは、村に残ってくれとリオに懇願するが……。
リオは精霊の民の里に帰ってきた。翌朝目を覚ますと、リオの隣には全裸で眠っている見知らぬ美少女が……!? 部屋を覗いて色めき立つラティーファと里の少女達だが、その美少女は「春人(リオ)」の契約精霊であるという。 名前もわからない彼女にリオはアイシアと名づけた。 強力な精霊の気配を感じて現れた大樹の精霊ドリュアスに促され、 謎多き契約精霊の戦闘力を知るためにリオはアイシアと戦うことになる。
セリアとシャルル=アルボーとの政略結婚を知り愕然とするリオ。結婚式は明日に迫っている。 アイシアの力を借りて王城の迎賓館に忍び込み、リオはセリアとの再会を果たす。 リオの顔を見て喜びがあふれるセリアだが、本当に望んだ結婚なのかという問いには同意していると答える。 終始にこやかな態度を貫くセリア。リオには彼女の本心が見えなかった。 翌日、結婚式が執り行われる王都の大神殿に向かって盛大なパレードが始まる。
セリアを乗せた馬車が結婚式場の大神殿前に到着したその時、パレードの人垣を縫って素早く接近してくる黒い人影―― 護衛の騎士達を軽々とねじ伏せ、セリアを連れて逃げるその人影はリオだった。 もう一度セリアの意思を確認するリオの真っ直ぐな想いに、セリアもついに本心を伝える……。 その時、王都から一筋の光が上空へ打ち上がり、シュトラール地方の各所からも同じように、合わせて六本の光柱が天空を貫いた……!!
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結婚式からセリアを救出した直後、6本の光の柱を目撃するリオ。アイシアの指示で向かった先には千堂亜紀、雅人、そしてリオの前世、天川春人の初恋の相手である綾瀬美春の姿があった。奴隷商人から三人を救出したリオは、岩の家を出現させ、合流したセリアたちと共に避難する。その夜、食事を終えた一行に、リオはシュトラール地方に伝わる「六賢神の伝説」について語り出す。様々な運命が交錯し、リオの新たな物語が幕を開ける!
セリアと美春たちの日用品を買うため、交易都市のアマンドにやってきたリオたち。初めての異世界に戸惑いながらも、美春はセリアと共に試着をするなど、存分に買い物を楽しむのだった。一方ベルトラム王国のフローラ王女の元には、勇者として坂田弘明が召喚されていた。突然の出来事に初めは驚く坂田だったが、持ち前の知識で瞬く間に状況を理解していく。少しずつ運命の歯車が動き出す中、悪しき者たちは静かに暗躍を始めていた。
セリアと美春たちを預かってもらうため、精霊の民の里へ戻ったリオは、長老に美春たちのことを相談する中で、自分に前世の記憶があることを告白する。そんな彼にそっと寄り添うラティーファ。翌日、受け入れを承諾されたリオは、すぐに美春たちの元へ向かう。一方リーゼロッテは、坂田の元へ勇者をお披露目する夜会の招待状を届けに来ていた。時を同じくして、リオの帰りを待つ美春たちの元に謎の魔物・レヴァナントが迫っていた!
精霊の民の里にやって来たセリアと美春たちの歓迎会が催される。リオにとって大切な存在である彼女たちに対し、ラティーファは自分にも日本人だった前世の記憶があることを打ち明け、美春たちのシュトラール語の先生になると宣言する。それから数日後、リオはセリアの手紙を両親へ手紙を届けるため、故郷のロダニアへ行くことを提案する。里に美春たちを残し、リオはセリアとアイシアとともにセリアの生家へと旅立つ!
ワイバーンに遭遇したリーゼロッテ一行は、近くの都市ノワへ降り立つ。そこにはユグノー公爵の飛行船も避難していた。陸路を使うというリーゼロッテに、坂田は自分たちもついて行くと告げ、馬車でアマンドへ同行することになる。その道中、突如無数の魔物に襲われる一行。アリアを筆頭に侍女たちの活躍で何とか耐え凌ぐ戦闘の最中、さらに強力な伝説の魔物ミノタウロスが現れ、フローラとリーゼロッテに襲い掛かる――
リーゼロッテたちの窮地を救ったリオは、一行の中にベルトラム王国の学院で旧友だったフローラとロアナがいることを知り、ハルトと名乗って正体を偽る。だがフローラは、名前も髪の色も違うハルトにリオの面影を感じていた。なりゆきで一緒の馬車に同乗してアマンドに向かうことになったリオ。一方精霊の里では、亜紀が子供の頃を思い出し、一人立ちすくんでいた。それはかつての兄、天川春人との悲しい別れの記憶だった。
アマンドに到着したリオは、セリアたちと合流し、リーゼロッテの手配した宿でしばらくアマンドに滞在することを告げる。その夜、レストランで食事をしていたリオたちの個室に、学院時代に同級生だったアルフォンスがスティアードと女性たちを連れてやって来る。貴族の身分を笠に着てリオたちを部屋から追い出そうとする二人に、リオは素直に従い退室しようとするが、突如アルフォンスがその出口を塞ぎ、立ちはだかって――