それは、暗い嵐の夜であった。 ルナ・アタックの脅威から100日あまり。 戦姫たちをめぐる物語は、 疾走する輸送列車と、空を覆いつくさんとするノイズにて幕をあける。 何者かによって操られたと思しきノイズの群れを 息の合ったコンビネーションにて撃退する響とクリス。 列車は目的地である山口県・岩国の米軍基地に到着し、 完全聖遺物「ソロモンの杖」の護送任務は完了するのであったが…… 時同じくして、 最大規模の音楽祭典「QUEENS of MUSIC」に出演する風鳴 翼は、 新進気鋭のアーティスト・マリアと特別ユニットを組み、登壇する。 この舞台を、世界最後のステージと称するマリアの真意を知るものは少ない。
岩国基地に続き、ライブステージ「QUEENS of MUSIC」にも 操られたと思しきノイズが出現。 さらに、一連の事件に呼応するかのように米国の聖遺物研究機関でも 実験にまつわるデータの破壊と聖遺物盗難事件が発生する。 フィーネの名を冠した組織の少女マリアは、 黒いガングニールを身に纏い、各国政府に対して国土割譲を要求してみせるが、 振る舞いは稚拙で、甘さすら漂わせている。 だが、茶番めいた作戦であっても行使する力は本物。 揃い踏んだ響、翼、クリスは、ついに激突すべき相手と対峙する。 戦いの中、投げつけられた言葉は紅蓮の刃となって響の胸の奥を伐り刻む。 自分の一生懸命で誰かを救いたいと願う彼女は、 その一生懸命で家族を悲しませた過日の記憶を思い出すのであった。
増殖分裂するノイズを殲滅した絶唱の三重唱。 だが、その場にて爆発的に高まったフォニックゲインは、 蛹の状態にて眠る完全聖遺物ネフィリムを覚醒させてしまう。 響たちを謀り、生きていたウェル博士は、 ナスターシャ教授たちと通じ、人類に敵対する。 闇に身を潜める者たちの昏い思惑。 だが少しずつ歯車は狂い、早くも思惑から外れた軋みを奏ではじめる。 アジトとした廃病院よりナスターシャたちを送り出したウェルは、 誰に邪魔されることなくひとり策謀を巡らせる。 その渦中に飛び込んでいくシンフォギア装者たちは、 纏ったギアの重さに戸惑い、予期せぬ苦戦を強いられることになる。 生化学者であるウェルの搦め手は、初めて相対する脅威であった。
響たちが通う私立リディアン音楽院に潜入した調と切歌は、 任務遂行に奔走するものの、認識の甘さは隠しきれず空回りを繰り返す。 一方その頃、閉鎖工場に身を潜めるマリアたちに米国の特殊部隊が迫る。 掠め取った聖遺物に関する技術を独占するばかりか、 F.I.S.の目的が米国の隠蔽する不都合な真実の開示と判断し、粛清に動いたのだ。 排撃を命じるナスターシャであるが、マリアは人の命を奪うことに躊躇する。 彼女もまた、調や切歌と同じく非情に徹しきれない甘さを胸に懐いていた。 惨劇から目を逸らさずに踏みとどまろうとするマリア。 だが、無垢なる命の散華に堪えきれず、ついにガングニールの少女は悲鳴をあげる。 さらには、もうひとりのガングニールの少女にも非情な運命が顎を開けて襲いかかる。 ただの一度もコトバを交わすことのないまま、 マリアと響のココロとカラダは、限界に達しようとしていた。
飢餓衝動のまま暴れるネフィリムは、ついに最高の餌食を咥え込む。 その身と同じく、生きた聖遺物の甘き味わいに共食いの巨人は、 胸を昂ぶらせ早鐘のように心臓を打ち鳴らすのであった。 狂気が正気を駆逐する瞬間に頂と達するウェル博士。 ――だが、突如として巻き起こる破壊の黒い暴風は、博士の思惑を吹き払い、 そして、さらなる脅威を呼び込むのであった。 月明かりの下にて何が起き、これから何が起ころうとしているのか。 混濁する意識の中、響はいつかに過ぎた光景を思い返す。 自分の一生懸命が誰かを傷つけてきたという事実。 ウェル博士が命の救済を宣言するのなら、この拳が握り締めた正義とはいったい? それでも誰かに踏みにじられた少女は、誰かのために固めた拳を躊躇なく突き出す。 考えているのではない。ただそうあれと胸に感じているのであった。
正義を信じて握り締めた拳は、感じるがままに突き出された。 ノイズに触れる瞬間にギアを纏ったか否か、それは誰の知るところではない。 確かなのは、胸のガングニールがいつも以上に熱く滾っていること。 ネフィリムの覚醒心臓を持ち帰るために手段を選ばないウェル博士は、 高みからの物言いで調と切歌に助けを要請し、滅びの歌を強要する。 必勝を期したシュルシャガナとイガリマの絶唱二段構え。 それさえも、響が咄嗟に試みたS2CAの応用で強引に封じられてしまう。 打つ手をもぎ取られた調と切歌。しかし苦痛に呻いて膝を折ったのは響の方であった。 世界の主要政府を敵にまわしてでも不都合な真実を公表し、 月の落下より可能な限り人命を救うことがF.I.S.の決起目的であったはず。 だが、覚悟の甘さと重なる不測の事態、そして混入した猛毒が理想を蝕んでいく。 ナスターシャは、組織が何も果たせぬまま限界に達していることを痛感していた。
思い描いた都合のいい未来図が翳るからこそ、逸脱した思惑が光り輝く。 だが、ナスターシャは、そんなウェルの英雄願望の暴走を抑圧するために、 あえてフロンティアの封印解除に失敗してみせ、科学者が懐いた夢の限りを知らしめる。 それでも、己が人の頂に立つ幻想に昂ぶりを抑えられないウェルは、 ついに瓦解しかけた組織を自分の手で牽引すべきと思い振り切るのであった。 これ以上、フィーネを演じる必要はないと告げられたマリアと、 自分がフィーネの魂に塗り潰されるのではないかと、ひとり恐怖する切歌。 そして、ガングニールの侵食に蝕まれ、ヒトの在り方を喪失しつつある響。 迫る月の落下に打つ手無しの世界状況と同じく、少女たちの胸の内も混迷を極める。 壁が高く強固であるならば、砕いて越えることもできるだろう。 だが、立ちはだかるのは「現実」という、歌を力に戦う者にとって最悪のバケモノである。 ただもがくばかりの状況を打破すべく、ついにマリアはその手を血に染めるのであった。
見上げた先にて大切な陽だまりまでもが奪われてしまう響。 心は確かに折り砕け、身に纏ったシンフォギアを維持できずに解除してしまう。 F.I.S.と米国政府の交渉も決裂し、月の落下に対する協力体制は夢想に潰える。 聖遺物に関する異端技術者であるナスターシャの余命が残り僅かとなり、 極大災厄に抗うには猶予がないことを感じ取ったマリアは、ついにウェル博士の側につく。 悲壮な決意のマリア。だがそれが本心でないことは、誰の目にも明らかであった。 理想に空回りするばかりのF.I.S.の実権を掌握したウェル博士は計画の綻びを修繕し、 最終段階に進むべく、フロンティアの封印ポイントに向けて再度動き出す。 だが、神獣鏡によるステルスを機能させないエアキャリアは無防備であり、 作戦海域付近にて展開していた米国の哨戒艦艇に補足されてしまう。 これを好機としたF.I.S.は、かつて果たせなかったデモンストレーションを試みるのだが―― 命を弄ぶウェル博士にマリアは身を震わせ、大胆な遂行者である調はその身を空に翻すのであった。
降下する「それ」は、フロンティアに施された封印解除に必要な出力確保のため、 人のフォニックゲイン――小日向未来の躯体を得た神獣鏡のシンフォギアであった。 本来の目的とは異なる、ウェル博士の大胆な神獣鏡の運用に驚きを禁じ得ないマリア。 胸の想いを歪められた少女は戦場に雄叫びをあげ、愛を剥き出しにする。 暴力を制圧し、無力化させるのは自分こそが相応しいとクリスが汚れ役を買って出る。 急ごしらえの装者では届くはずもなく、 たちまち神獣鏡のシンフォギアを圧倒するクリス。 だが、一瞬の隙をついて反撃に転じた神獣鏡のプログラムは、 集束した輝きを一気に解き放つ。 それは、聖遺物由来のエネルギーを分解する陽だまりの優しさ――凶祓いの力であった。 現実に翻弄され、正義を為すことも悪を貫くことも果たせぬまま懊悩するマリアは、 自分の拠り所でもある「フロンティア計画」を遂行せんと震える心を捻じ伏せる。 人類救済の可能性を零さないよう、か細い光を手繰り寄せ、 巧みに編み上げるマリアの絶技。 空から落ちる災厄に先んじて海より顕現する驚異に、誰もが意識を奪われるのであった。
無垢にして苛烈。魔を祓い、あるべきカタチへと映し出す神獣鏡の輝きは、 響と未来の身体をそれぞれ侵す聖遺物の脅威を退けるばかりか、 海中に封じられた外つ国の遺産、フロンティアをも解き放ってしまう。 重力アンカーにて月を手繰り寄せ、その反作用にて空中に浮上するフロンティア。 結果、早まってしまった月の落下にて地球の余命は残りあとわずかとなってしまう。 地球外脱出の力を手に入れんとする米国政府は再度、艦隊を差し向けるが、 とどまることを知らないウェルの欲望は、これを一瞬にして殲滅せしめる。 フロンティアに遺された情報を開示・解析し、備えようとしてきたナスターシャだが、 差し迫る猶予のない事態に、フロンティア単独の対抗策という賭けに打って出る。 それは異端技術の信奉者としての誇りであり、未熟な「悪」へのけじめであった。 最後の希望とされるマリアの歌声。だが、マリアの心は折り砕かれてしまっている。 そこにガングニールを喪失し、ギアを身に纏えなくなった響が駆けつけようとしていた。
すれ違い続けた想いは新たな天地にて激突し、互いの気持ちを伝え合う中、 状況はさらに混迷を極め、ただ、すべてが終局に向かって加速していく。 人の間こそが帰る場所と知ったクリスは、何よりも暖かいその場所を守るべく、 ついには二度と帰らないと意を決し、ウェル博士と拙い約束を取り交わす。 人間だけを殺す力――ソロモンの杖は、誰の手にもあってはならないのだ。 自分が自分でいられるうち、僅かに残った人類救済の可能性にかける切歌もまた、 それこそが大好きな人たちのためと信じて、望まぬ刃を振るい続けていく。 だが、フィーネの魂の器となったのが、自分ではなく調であったと知った時、 価値観や判断力、切歌を形作る常識が決壊し、世界からの逃亡を求めてしまう。 そして、現実の只中で英雄になることを望み望まれたマリアもまた、どん底に喘ぐ。 人類のため、セレナの犠牲を無駄にしないためと謳う歌では月の落下に抗えない。 生まれたままの感情を覆って隠すシンフォギアはどこまでも黒く、重たかった。
きっと救うと誓った胸に聖詠が湧きあがると、この身は既に戦装束―― 再びガングニールのシンフォギアを纏った立花 響がフロンティアを駆け抜ける。 偽りの心を解きほぐされた彼女もまた、生まれたままの感情で自分に向き合う。 頬を染めて口にする星の救済は、マリア・カデンツァヴナ・イヴの迷いなき選択。 世界を繋いで共鳴する優しい歌声は天を衝き、公転軌道から外れた月に伸びていく。 セレナを亡くして以来、少女のまま止まっていたマリアの刻がついに動きはじめる。 夢に焦がれるウェル博士もまた、理想に向かって全てを蹴散らし邁進する。 装者も、統治するには手に余る人類も、左手に繋いだフロンティアにて駆逐すべく、 たっとひとりで立ち回り、ついには血の涙を流して奇跡を起こしてみせるのであった。 迫り来る世界蒸発の事態を回避するために、クリスがソロモンの杖を高く掲げる。 人を殺すだけではないと示した杖の可能性に、明日を求めてマリアも吠え叫ぶ。 英雄でないすべての命が、ひとりでは掴めない未来に向かって小さな手を広げる。
特異災害対策機動部二課は日本政府から国連へと出向し、 超常災害対策機動部タスクフォースS.O.N.G.として再編成される事となった。 再観測が懸念されていた認定特異災害を含む、 通常の対応力ではあたることすら難しい超常脅威への措置であったが、 制御できなくなったシャトルの救助以降は、 主に大規模な災害や事故を収束させるための機関として機能するにとどまっていた。 だがある日、検知される謎の反応波形。 赤き粒子が舞う月下にて人形は、黒衣に身を包んだ小さな人影を睥睨する。 それは、新たな戦いの幕開けであった。 突如立ち上った火柱は、たちまち炎の海と化し、周辺を舐め尽くしていく。 火災救助の応援要請を受けた立花 響は、 奇跡のカタチ、シンフォギアを身に纏って駆け抜けていくのだが…… 向かう先にて、業火に涙するキャロルとの邂逅があることを知る由も無かった。
火災マンションの救助に出動した響は、 世界を壊すと宣言する錬金術師、キャロルとまみえる。 漲る力への絶対的な自信からか、 シンフォギアを纏って戦えと迫るキャロルであったが、 戦う理由を見出せない響は拳と固める事ができず、圧倒されるしかなかった。 その裏で同時多発する怪奇の事件。これもまた錬金術師達の仕業である。 自動人形レイアと激突したクリスは、窮地の只中でエルフナインを保護。 ライブ会場に侵入した自動人形ファラは、翼をおびき出すためにマリアを強襲する。 シンフォギアを身に纏った装者に比肩する戦闘力をみせる自動人形二機。 さらには根絶が予測されていたノイズと思しき存在も出現し、 状況は加速度的に悪化の一途を辿っていく。 そして、ついに牙を剥く錬金術の猛威。 誰もが予想できなかった事態に、翼とクリスの何もかもが砕け散る。
錬金術の脅威に蹂躙される天羽々斬とイチイバル。 敗北では済まされないと言い残した自動人形は、 キャロルの命令に従い、戦う力を持たぬ者をあとにその場より撤収する。 融合症例を経て適合者へと至り、 あの日に継いだ想いばかりか、力をも受け取ったはずの響だが、 戦いの無い日々に人命の救助と奔走するうち、 シンフォギアの力で誰かを傷つけることを嫌悪し、忌避するようになっていた。 適合係数の不足値をLiNKERにて補えない調と切歌は、 シンフォギアからのバックファイアに苛まれつつも、 エルフナインとクリスを救助し、S.O.N.G.本部へと保護する。 そして語られる世界の解剖計画と、欠片となって小匣に収められし魔剣の銘。 対抗しうる戦力の絶対的な不足をよそに、 さらに畳みかけられるキャロルの次なる一手。 級友たちとの下校途中を襲撃される響。 打開を願いつつも戦いを恐れる胸に、ガングニールからの聖詠は浮かばなかった。
シンフォギアを身に纏えない響を救ったのは、 偽りをかなぐり捨て、黒いガングニールにて鎧い立つマリアであった。 この機にガリィを討ち果たすため、全力で仕掛けるマリアだが、 LiNKERを介さぬギアからの負荷に熱血は飛沫き、その身は容赦なく灼かれる。 ついにギアは強制解除され、響と同じく戦えない状況に陥るが、 ガリィは面白くないと吐き捨て、その場をあとにする。 怖れ、忌避した響は、戦いから目を背けてしまい、 「何故、どうして」の先を模索してきたこれまでの歩みが鈍ってしまう。 それでも未来は危険を顧みず、 かつて自分が響と戦い、その帰結に救われたと語って聞かせる。 伸ばしたその手を怖がるなと諭す未来に、 奇跡宿る機械仕掛けのこの手から、逃げ出さないことを誓う響。 戦ってでも欲しい真実があると叫んだキャロルが率いる敵勢力と、 戦ってでも守りたい真実を求める響は、この瞬間、初めて激突理由を揃える。
響のガングニールまでもが砕かれて、 とうとう十全に戦える状態の装者は、ひとりとしていなくなってしまう。 かつてない危機的状況に、回天の期待を込めて進められるProject IGNITE。 ただ一つの希望は、シンフォギア強化計画の進捗が順調以上である事であった。 その時、発令所を震わせる爆発の衝撃。 自動人形ミカによる本部強襲である。 強化型シンフォギア完成までの時間稼ぎと飛び出す調と切歌。 メディカルルームより持ち出したmodel_K――かつて奏が使っていたLiNKERで奮戦するが、 それすらも圧倒するミカの戦闘力。 猛攻が続く中、意識を回復した響は再び歌を唄えるようになったと宣言するが、 その胸にガングニールはなく、未来を気遣う笑顔に精彩を欠いてしまう。 前だけを見据え、駆け抜けた後に可能性を繋ぐと誓った調と切歌は、 最後の切り札である、LiNKER過剰投与によるコンビネーションを仕掛ける。 負荷を厭わず、無理矢理引き上げられたフォニックゲインに、 充分だと目を細めるミカであった。
調と切歌の危機に、新たな力を携えた翼とクリスが駆けつける。 出力の向上に加え、バリアフィールドの調整が施された強化型シンフォギアは、 アルカ・ノイズの解剖器官も受けつけず、分解効果を無効とする。 殺到するアルカ・ノイズを蹴散らし、自動人形ミカに報いようとする翼とクリス。 その肉薄する一撃を凌いだのは錬金術の障壁であった。 計画の優先を理由にミカを下げ、最前線に立つキャロル。 想い出を焼却し、戦う力へと変換錬成すると、 ついにダウルダブラのファウストローブで襲い掛かる。 唄わずとも圧倒的な力を繰り出すキャロルの猛攻に対抗するため、 強化型シンフォギアに新規搭載されたイグナイトモジュールを起動させる翼とクリス。 だが、引き抜かれた魔剣の呪いは装者ふたりの心を蝕み、危うく暴走事故を起こしかける。 全ての対抗策が尽きたかに思えたその時、響が同様に改修されたギアを纏って到着する。 怖れずに、もう一度イグナイトモジュールの起動を提案する響。 誰かを守る力――シンフォギアは、 きっと自分たちも守ってくれると、翼とクリスに訴えるのであった。
キャロルの自死から経過する時間。 オートスコアラーの再襲撃もなく、 その間にシンフォギアの修復と改造、イグナイトモジュールの組み込みが行われる。 エルフナインの錬金術にて、ついに復活するアガートラーム。 マリアは、アガートラームの輝きに相応しい強さを求め、 響主催のスペシャルトレーニングに参加するのであった。 その最中に割り入るように現れる自動人形ガリィは、 アルカ・ノイズを使って周到に装者たちを分断し、 過日の汚名を雪ごうと執拗にマリアを追い詰める。 特訓用に準備していたmodel_Kを使い、アガートラームを身に纏うマリア。 だが、慣らしもしないギアの運用に焦りを覚えてか、 不用意にイグナイトの力にすがると、ダインスレイフの呪いに溺れ、暴走してしまう。 ガリィの一撃に昏倒し、結果、救われた形となるマリアは、 自分がずっと追い求めてきた「強さ」とは何なのかと考えるようになる。 マリアの問いにエルフナインは、自分らしくある事―― 翻弄する状況にあっても、自分らしさを保つ力こそが「強さ」だと伝える。 その言葉を胸に、もう一度、抜剣を試みるマリアであった。
そこに現れ立つのは、行方をくらませた響の父・洸であった。 突然の邂逅に、何より覚悟の決まらないままの再会に恐怖した響は、 いつかの父と同じく、振り返ることなくこの場より逃走する。 未来より連絡先を聞き出した洸は、東京にて娘と再びまみえるが、 その言動はあまりにも軽薄で、ゆえに響の心に重くのしかかるのであった。 同じ頃。アルカ・ノイズの分解能力を使って地下共同溝へと侵入を果たしたミカは、 東京を中心とした関東一円の電力供給の実態を調査していた。 現場に到着した響は、 調、切歌と共にミカの企みを阻止するべく突撃するものの、 父親との一件を思い出し、感情に身を任せて無鉄砲に突っかかる。 それは、融合症例時ならば暴走しかねない危険な精神状態でもあった。 身を挺して庇う調によって窮地を脱することができたが、 その無茶を簡単に受け入れる事の出来ない切歌は、調の行為を諌めてしまう。 調もまた、自分の未熟を責められたと受け取ってしまい、 響のみならず、向き合う勇気無き者たちが奏でる不協和音は、しだいに拡散していく。 予想される自動人形の再襲撃。 迎え撃つにはイグナイトモジュールの制御が不可欠であるが、 装者たちの心は、かつてないほどに乱れていた。
これまでに不可解な行動を繰り返してきた、錬金術師たち。 だが、緒川をはじめとするS.O.N.G.調査部は、ついに手がかりへと到達するのであった。 敵の狙いは、日本政府の重要拠点であると予想が立てられる。 候補となる地点は、 異端技術に関連した危険物や未解析品を収める管理特区――通称「深淵の竜宮」。 もう一か所が、翼の生家でもある風鳴 八紘邸であった。 検査入院のために響を欠いた戦力ではあるが、 ようやく掴んだ反撃の機会を逃さないよう、緊急の対策が講じられる。 深淵の竜宮に向かうクリス・調・切歌班と、 風鳴邸に向かう翼・マリア班。 翼とマリアは風鳴邸にて、レイラインの制御に関係する要石の防衛にあたるが、 強襲してきたファラによりあえなく破壊されてしまう。 追いかけてきた夢を諦めてなお、ファラに一太刀浴びせられないという現実は、 剣たらんと邁進する翼の誇りすらも砕いてしまう。 そんな翼を叱咤激励するのは、長らくまともに言葉を交わせてなかった父・八紘であった。 ここはまだ夢の途中だからこそ、羽撃くために剣を越えると宣言する翼は、 一番聴いてもらいたい人のために歌いあげる。 そしてもうひとり。 夢の途中にある者が、再び戦場に舞い戻るのであった。
風鳴八紘邸でのオートスコアラー・ファラの撃退とほぼ同時刻。 深淵の竜宮に向かったクリス、調、切歌たちは、 そこでフロンティア事変の関係者の一人、ウェル博士と邂逅する。 シンフォギア対錬金術師の構図を掻き乱す不確定要素の出現に戦局は混迷。 先輩装者としての背中を見せたいクリスと、 LiNKERの開発にウェル博士を傷つけてはいけないと考える調と切歌にも不協和音は生じ、 キャロル撃破の千載一遇の好機は、あえなく潰えてしまうのであった。 後輩ふたりの成長を実感しているからこそ、 焦燥を隠せないクリスは、再戦の機会においても飛び出してしまい、 結果、目の前で調と切歌をレイアに打ち倒されてしまう。 せっかく手に入れた絆――後輩すら守れない事実に、世界を残酷だと呪うクリス。 なぜ両親は、こんなにも残酷な世界を、歌で平和にしようと夢想したのか? 悲痛な自問自答に答えるものはなく、無慈悲なレイアの一撃が迫り来る。 求めるモノに空回りするばかりのクリスであったが、 最後の力を振り絞りつつ、その身を盾にして手を伸ばす調と切歌の姿に、 絆は一方向から結ばれるものばかりではないと気づくのであった。
仕込まれた毒――イグナイトモジュールが奏でる呪われた旋律を、 オートスコアラーの身体に刻むことで手に入れたキャロルは、 もはやようはないとばかりに、レイアの妹を使ってS.O.N.G.本部の壊滅を図る。 海上に飛び出したクリスによって撃退に成功するが、 その際にエルフナインが負傷してしまう。 トリガーパーツ・ヤントラサルヴァスパの代替品として活用されるウェル博士の左腕。 ついにチフォージュ・シャトーは起動し、 その用を果たしたと見なされたウェル博士は無残にも廃棄されてしまう。 いよいよ最終段階に入ったキャロルの計画は、悲願成就の瞬間に向かって加速していく。 一方、父親と再度の対面を行っていた響は、 反省も進展も見られない洸の態度に苛立ちを覚えてしまう。 響との対話中、弱く臆病な洸なりに、一歩を踏み出そうと試みるものの、 頑なに閉ざされた響にはまったく届いていなかった。 空を割り、首都中心部に突如として顕現するチフォージュ・シャトー。 ただひとり、東京に残った装者である響の前に現れるキャロル。 逃げた父親と逃げなかった父親を背負う娘がふたり、激突する。
世界の分解現象を阻止するため、 チフォージュ・シャトーに潜入したマリア、調、切歌。 だが、シャトーの防衛システムは、三人に罪を突き付け、その行動を阻もうとする。 窮地に陥るマリアたちは、 チフォージュ・シャトーが見せた不安定な挙動の隙に、態勢を立て直そうと試みる。 一方、響たちと対峙するキャロルは、 錬金術と歌の関係、その一端を語って聞かせる。 その起源は先史文明期にまでさかのぼり、巫女フィーネであることに驚きを隠せない響たち。 ついにキャロルは、響たちにトドメを刺すべく必殺の錬金術を繰り出そうとするが、 ウェル博士と合流したマリアたちの抵抗によって妨害されてしまう。 世界の分解現象を、誰かの為などではなく自分の為に阻止しようとするウェル博士は、 掌握したチフォージュ・シャトーの機能を使って再構築を試みる。 そうはさせじと、シャトーを破壊しようとするキャロルであったが、 大怪我を負いつつも自分らしく戦うと宣言したエルフナインの助力もあり、 間一髪、分解を停止した世界構造は瞬時にして巻き戻り、再構築される。 目論みの潰えたキャロルは、想い出も、何もかもを失う覚悟で最後の戦いを響たちに挑んでくる。 世界を壊そうと吹き荒れるその歌は、70億の絶唱をも凌駕するフォニックゲインであった。
キャロルの放つフォニックゲインをひとつに繋ぎ束ねる響。 その負荷を響ひとりに集中させることなく、 装者6人にて肩代わりし、エクスドライブへと再配置するマリア。 奇跡を身に纏うため、かつての奇跡を殺戮。 それは、奇跡を超越した「軌跡」――これまでに6人が紡いできた絆そのものであった。 対抗するキャロルもまた、自分を止めようとする父親の想い出すらも焼却し、 全てを擲った不退転の決意で立ちはだかる。 装者が絆を紡ぐなら、キャロルは鋼糸魔弦をカタチと紡ぎ、碧色の獅子機を練り上げる。 東京の中心地にて、超常のフルパワーが烈しくぶつかり合う。 シンフォギアのプロテクター部をエネルギーと換え、 アームドギアを介して全放出することで、局面を打開しようと試みる装者たち。 だが、キャロルの獅子機は、 一部損壊しながらも、そんな捨て身の攻撃すらも持ち堪えてみせる。 防御性能を著しく失った装者たちに勝利を確信するキャロルは笑みを抑えられない。 それでも響はあきらめず、繋ぐこの手が自分のアームドギアであると宣言し、 先に激突霧散したシンフォギアのエネルギーをひとつに束ねるのであった。
夏休み登校日。疲労した響の前に降り立つヘリは、 シンフォギア装者たちを新たな戦いへと誘うべく回転翼をとどろかせた。 舞台は、南米の軍事政権国家バルベルデ。 アルカ・ノイズを保有し、自国民に対して不当な弾圧を行うバルベルデ政府に対して、 国連直轄の超常災害対策機動部タスクフォースS.O.N.G.は、 しかるべき決議の後、武力介入を敢行するのであった。 たちどころに制圧されていく軍事拠点。だが―― 不可知の結界に守られた旧いオペラハウスに姿を見せる三人の錬金術師。 その名は、サンジェルマン、カリオストロ、プレラーティ。 バルベルデ政府に錬金術の断片を譲渡していたのは、 熱帯の夜に咲く、毒花のごとき彼女たちである。 無慈悲に命を摘み取っていく錬金術師たちに、 最後のLiNKERを投与したマリア、調、切歌が不退転の覚悟で立ちはだかるのであった。
想定された訓練通りに遂行される制圧任務。 だが、その果てに顕現したのは想定外の異常事態。 邪神にして蛇身、ヨナルデパズトーリを模した「神の力」であった。 映像データを守るため、マリアはたしかに「神の力」を螺旋に抉ったが、 埒外の現象によって「無かったこと」に貶められてしまう。 一方、響、翼、クリスは、訪れた小さな村にて、 化学兵器プラントの工場長より卑劣な交渉を持ちかけられる。 膠着は、プラントで出逢った少年ステファンによって崩されるが、 そのさなかにてクリスは残酷な選択を迫られる事となった。 検知したアルカ・ノイズ反応を追って、再び錬金術師と対峙するマリアたち。 不利な状況にあっても諦めずに奮戦するものの、 あと一歩が及ばず、LiNKERの効果時間が超過してしまう。 マリアたちの眼前に屹立する光の柱は、 今まさに形為そうとしている「神の力」であったが――
早くも対峙する装者と錬金術師。そして舞台は日本へ。 私立リディアン音楽院の二学期が始まったものの、 終わらない夏休みの宿題と クリスに突きつけられた残酷な選択に胸を痛める響の表情は浮かなかった。 バルベルデ政府が保有していた機密資料を手に、遅れて帰国する翼とマリア。 そこに襲いかかるはカリオストロとプレラーティ。 苛烈な歓迎儀式に搭乗していた特別機は破壊されるものの、 ケースに収められた機密資料はかろうじて守られるのであった。 サンジェルマンは、 起動したアンティキティラの歯車を以ってしてティキを目覚めさせる。 ――と、その時、けたたましく鳴り渡る電話の呼び出しベル。 受話器の向こうより語りかけるのは、 パヴァリア光明結社の統制局長、アダム・ヴァイスハウプトその人。 ティキの瞳のホロスコープは、新たな戦いを予感させるのであった。
翼とマリアがバルベルデ共和国より持ち帰った機密資料を解読するため、 長野県松代にある国土安全保障の要、風鳴機関本部を訪れるS.O.N.G.の面々。 装者たちは周辺の警戒任務にあたるものの、最後のLiNKERを使い切り、 シンフォギアを纏えないマリア、調、切歌は焦りを隠せなかった。 一方、パヴァリア光明結社の錬金術師たちも、 統制局長アダムから下された「シンフォギア破壊命令」を実行すべく、 ファウストローブの完成を急ぐが、 ローブ越しの決着はもどかしいと、カリオストロは宣うのであった。 そして訪れる、シンフォギアとファウストローブ激突の瞬間。 大量に出現したアルカ・ノイズを殲滅するために抜剣。 決戦仕様のイグナイトモジュールを起動させるが、それこそが罠であった。 絶体絶命の窮地に陥る響、翼、クリス。 さらに――
戦場に介入した統制局長アダム・ヴァイスハウプトは、 わずかばかりの黄金を錬成するついでに装者必殺の鉄槌を振り下ろす。 絶体絶命の響たちを救ったのは、LiNKERを介さずにギアを纏ったマリアたち。 だが、国土安全保障の要である風鳴機関本部は跡形もなく消失してしまうのであった。 その挺身に絶唱級の負荷も危ぶまれたが、奇跡的に軽症で済むマリア、調、切歌。 すべては、アガートラームの特性によるものと推察されると、 エルフナインは、マリアの脳内に残るアガートラームの電気信号痕を辿ることで、 脳のどの領域にシンフォギアが繋がっているのかを突き止めようと試みる。 それは危険な行為であったが、LiNKERのレシピ解明の突破口でもあった。 ついに、神の力の具現化を本格始動させるパヴァリア光明結社。 先だってシンフォギア装者の討伐は不可欠とし、総力戦を仕掛けてくる。 支配からの解放を謳うサンジェルマンとの拳の握り合いを思い悩む響。 親友の胸の内を察した未来は、ただ「負けないで」と背中を押すのであった。
錬金思想の最果てか、それとも遠い日の屈辱を雪ぐためか。 完全を希求するサンジェルマンは、巨大アルカ・ノイズを伴って強襲してくる。 装者連携による対応で、あっけないほど脆く崩れる巨大アルカ・ノイズ。 だがそれは罠。分裂した個体がそれぞれに侵攻する分断作戦であった。 LiNKER完成のために足りない最後の欠片、シンフォギアが繋がる脳領域を探るべく、 残された電気信号痕を観測するマリアとエルフナインは、 昏い世界の奥底で、懐かしくも忌まわしい声に翻弄されるのであった。 限りなく続くアルカ・ノイズとの戦いに、徐々に疲弊していく装者たち。 親友・未来に迫る危機に際して正義の選択を迫られた響は、 選ぶのではなく、すべてに対してこの手を伸ばそうと、封殺された抜剣を試みる。 一方、仮想に形成された深層意識内で、マリアは自分の記憶を客観視する。 子供の頃よりも、少しだけ高く広くなった世界に立つことで見えてくる事実。 そう。ウェル博士はいつだって、はぐらかす事なくハッキリと伝えてきたのだ。
爆心地にて対峙するシンフォギア装者と錬金術師。 いわれなき理由に踏み躙られた過去を持つサンジェルマンは、 殴り合いより話し合いをと呼びかける響の言葉を拒絶するが、 響もまた、サンジェルマンと同様の傷を隠しているからこそ簡単には折れない。 月遺跡の掌握のため、サンジェルマンたちが求める通称「神の力」。 それは、藤尭が死地より持ち帰った映像記録データの解析によって、 生命エネルギーより錬成されるモノと判明するが、 同時に、響の一撃によって分解されるような規模ではないだろうと弦十郎は推察する。 徐々に明らかになっていくパヴァリア光明結社の目的。 だが、抜剣を封殺されたシンフォギア装者たちの状況は劣勢である。 対抗策を探し求めるエルフナインは、膨大な聖遺物関連資料の中から一縷の光明を見出す。 赤き輝石に対抗する奇跡とは、立花響の軌跡そのもの。 胸からこぼれた取るに足らないガーベッジこそが希望の欠片であった。
賢者の石への対抗手段として動き出す、シンフォギア強化計画。 愚者の石さえあればと期待する装者たちであったが、弦十郎の面持ちは厳しい。 一方、調と切歌のユニゾンに敗退したプレラーティのダメージは存外に大きく、 サンジェルマンも祭壇設置の儀式に追われるため、カリオストロは単騎出撃を決意。 搦め手と取り出したのは、位相差障壁を檻と駆使するアルカ・ノイズであった。 バルベルデへ帰国の直前、クリスに面会を求めるステファンとソーニャ。 明るい表情で臨むステファンに対してクリスの表情は硬く暗く、 後悔に苛まれ続けるソーニャの表情もまた、クリス同様に翳っている。 踏み込むべき一歩を互いに躊躇する最中に出現するパヴァリア光明結社。 装者分断を必勝の策とするカリオストロは、調と切歌の引き離しに成功。 イグナイトモジュールに加えユニゾンまで封殺することで勝利を確信する。 だがその時、窮地のクリスに投げかけられたステファンの言葉は、赦しではなく発破。 燃え上がる想いを武器に、譲れない胸の張り合いがここに決着する。
ラピス・フィロソフィカスによる抜剣封殺への対抗手段――絆のユニゾン。 装者たちの連携練度が進む中、調だけが上手くいかず、焦りを募らせる。 その時、神社本庁を通じて神の力に関するひとつの情報がもたらされる。 曰く、神出ずる門の伝承。早速現地にてS.O.N.G.による調査が開始する。 一方、仲間に犠牲を強いるやり方に不信感を懐いたプレラーティは、 アダムの元に赴いて真偽を質すが、結果、決裂を決定的なものとする。 儀式執行中のサンジェルマンの元に向かおうと疾駆するプレラーティ。 なりふり構わない暴走のあおりで、進行ルートに拡大する被害は甚大。 駆けつける翼と調は、プレラーティに目的を問うがにべもなく拒絶されてしまう。 まもなく差し掛かる住宅地への蹂躙を阻止するため、 ユニゾンによる高機動戦を提案する翼であったが、調の表情は暗い。 狭い世界の関係性しか知らない調にとって、誰かと繋がる事は容易でない。 出口の見えない隧道を走る調に、翼はいつかの自分を重ねるのであった。
命を礎とする覚悟は済ませてある。だが、志を踏み躙られるのは果たして。 求めた理想の為だとしても、アダムとティキの言葉はサンジェルマンの心を苛む。 S.O.N.G.は神社本庁との連携によって、パヴァリア光明結社の作戦を、 レイラインより引きずり出した星の命による「神の力」の具現化と看破。 決戦に備えての疎開が進む中、弦十郎は対抗手段となる可能性を示唆する。 ――それは、「神の力」に対抗する「神殺し」の存在。 だが、「神殺し」の真実へと至る道筋は悉く潰されており、解明は困難。 緒川は各国の情報機関と連携し、すべてを詳らかにすべく奔走するが… 難航するS.O.N.G.をよそに着々と進行するかに思えたパヴァリア光明結社の作戦。 間一髪、要石によるレイライン遮断にて鼓星の神門を閉じる周到な八紘。 それでもアダムは、自信に蓄えられた圧倒的な魔力を消費し、 大地に描かれた鏡写しのオリオン座に照応する天のオリオン座を門に見立てて開闢。 得られた星々の命とティキを交じり合わせる事で「神の力」を産み落とそうと試みる。
夜天を巡る星々の命はティキに降り注ぎ、今まさに神の力と完成しつつあった。 握った正義は違えども、アダムの思惑を阻止せんとする響とサンジェルマンは、 理解しあえぬ敵同士のままに勇気を花咲かせ、この鉄火場に共闘を実現する。 予期せぬ作戦の軌道修正に著しく力を消耗していたために黄金の錬成は叶わず、 拳撃と銃撃の奏でるコンビネーションに追い詰められていくアダム。 好機に「だとしても」を貫くサンジェルマンは、ついにアダムをとらえるが、 それは長きに渡って隠された、パヴァリア光明結社の秘密を抉る一撃でもあった。 人でなしの咆哮に呼応したティキは、浴びる星々の命を固着させ、その身に鎧う。 響とサンジェルマンに向けた敵意が、かくあれかしと形為し、神力はここに顕現。 ディバインウェポンと完成したティキが誇る圧倒的な攻撃と絶対的な防御に、 装者は、S.O.N.G.は、そして人類は、為す術もなく打ちのめされていく。 誰もが戦慄し、諦めかけたその時、突如として開示されるバルベルデドキュメント。 たとえ世界が異形の空に閉ざされても、撃槍は無限の鼓動に奮い立つ。
宙空に漂う神の力は、新たな器と定めた立花 響に向かって流れていく。 響の身体に固着されるエネルギーは、サナギを思わせる異形の肉塊と変貌。 ありえない現象にサンジェルマンは息を飲み、アダムはその場を後にするのであった。 戦慄する各国は、迫る超常脅威の新生に緊急の安全保障理事会を開催。 災禍の中心たる日本に対して、バルベルデの規模を凌駕する武力介入を検討する。 風鳴 訃堂は、かねてより強行してきた新法案・護国災害派遣法を響に適用。 第二種特異災害と認定し、殺処分することで反応兵器投下を未然に阻止しようとする。 だがそれは、響の親友である小日向 未来には到底受け入れられない裁定である。 国連による日本への武力介入が決議される前に最善を尽くそうとする装者たちは、 人型に輝く銀の力と化した響を救わんと奮闘。そこにはサンジェルマンの姿もあった。 響とその仲間たちが、これまでに培ってきた有形無形の「絆」全て統べての救出作戦。 奇跡ではなく、軌跡が成し遂げた結末に安堵する一同。 人は繋がり、ひとつになれるという理想を予感させる空には、光が小さく瞬いていた。
見上げた空に不浄をもたらす光はなく、錬金術師もまた光へと還っていった。 歌でブン殴る事しかできない現実に慟哭する響。だが眼前に、尚も脅威は立ちはだかる。 門の開闢に力を消費し、さらに神の力まで喪ったアダムは美形のプライドを焼却。 高みに焦がれてきた人形は、高みに角を戴く姿へと成り果て、ここに決着を求める。 装者六人のユニゾンによって上昇するフォニックゲイン。 それでも、決戦機能のエクスドライブを起動させるには程遠く、苦戦を強いられる。 終わりなき闘争に疲弊する装者たち。その原因こそバラルの呪詛と喝破するアダム。 圧倒的な戦闘力に打ちのめされ、挫けかけた響の胸に届くサンジェルマンの声。 見やる先に輝く、ファウストローブのコンバーターにして主兵装たるスペルキャスター。 突き動かされるように飛び出す響。だが、逆転の可能性は無情にもアダムに握り潰される。 炸裂するファウストローブの形成エネルギーを浴びる響は、絶唱にて対抗。 前線に立つ仲間たちと銃後にて支える仲間たちの想い。そして――サンジェルマンの理想。 全てはひとつに束ねられ、支配を強いる完全に貫き抗う六領へと新生する。
悠久の風吹く彼方。先史文明期。砂塵に荒ぶシンアルの野、その付近。 施設の暗がりを這いずる血みどろの雄は、自身の権限を以って装置を起動させる。 それがいかなるものであるのか、詳らかにされないまま、全ては闇黒に没する。 ただ一言、情を交わしたヒトの名を遺して―― 時は過ぎて現代。南氷洋にS.O.N.G.本部は浮上し、作戦行動を展開していた。 此度の目的は、『棺』と呼ばれる遺跡の観測と対策の検討。 だが、打ち立てた想定のほとんどは覆り、ロシアの南極観測隊を守るべく、 想定範囲外の事態――『棺』そのものとの直接決戦にもつれ込んでいくのであった。 真夏にして零下の湖上、新生した六領は十全に機能して不足はない。 だが、無機質なれど『棺』の攻撃は、かつての難敵と並ぶほどに強烈苛烈。 埒外の物理法則は、たちまちにして装者たちを蹂躙するのであった。 昏倒する6人。薄れゆく意識の中で立花 響が思い起こすのは、事の始まり。 それは、己が手に何を信じて何を握るのかを問われる、まだ見ぬ残酷の幕開けでもあった。
南極に浮上した『棺』には、アヌンナキと推定される謎の遺骸が収められていた。 最高レベルの警戒態勢の中、遺骸を狙って強襲するパヴァリア光明結社の残党。 閉所にして見通しの利かない状況を作り出し、長物と機動力を封じるエルザであったが、 連携するザババの刃は、これまでの積み重ねがもたらす対応力にて撃退に成功する。 一連の事態に無遠慮な介入を見せつける米国に対し、苛立ちを隠せない訃堂。 そして翼も、新たな脅威に心を乱され、舞台稽古に熱が篭らない。 ステージの上も翼にとっての戦場だと、おでこに諭すマリア。 思うところはあれど指摘を受け入れた翼は、マリアに交換条件を提示するのであった。 力に焦がれた獣たちの思惑は深く静かに潜航し、迎えるは凱旋公演当日。 10万の人々にて埋め尽くされたそこは、臨海にして眺望極まる空中の庭園。 オープニングサプライズとして翼と共に登場したマリアの姿に誰もが驚愕し、 かつて果たされなかったセットリストの続きは、聴く者の胸を沸騰させるのであった。 音と光が融け合う空間に想起されるあの日の奇跡。 そして跳ね上がる――惨劇の幕。
恐怖の一夜より脱出を果たす、翼、マリア、緒川であったが、 心を凌辱された翼のダメージは殊の外激しく、ひとり回復が遅れていた。 7万を超えてなお増え続ける死者のカウントに、残党には収まらぬ巨悪を予感する一同。 ちょうどその裏でミラアルクとエルザは、黒ずくめの男たちと接触を果たしていた。 危険運転常習集団による出歯亀に、容赦なく牙を剥くミラアルクとエルザ。 最後の目撃者が解体されようとしたその時、空から響とクリスが舞い降りるのであった。 装者二人の活躍に加え、コンディションの不調から圧倒されるミラアルクとエルザ。 手にしたアタッシュケースを持ち帰るべく速やかなる撤退を選択するものの、 遮蔽物無き高空より、狙い澄ましたクリスの銃口が追いすがる。 畢竟、ミラアルクとエルザを取り逃がしてしまう響とクリスであったが、 アタッシュケースより押収された稀血によって結社残党の目的の一端へとたどり着く。 状況と過去の経緯から導き出されるは、これまで幾度となく干渉してきた米国政府の影。 それは、聖骸を調査するかの地にて何が起きているのかを窺い知る5秒前の事であった。
この地、この刻の天地に描かれるレイラインによって鼓動するシェム・ハの腕輪。 全ては、神の力を手に入れんとする風鳴 訃堂の思惑であった。 不協和に奏でられる音の羅列に続いて大噴火する人体が、蜘蛛の結界を突き破る。 駆けつけた装者たちと相対するヴァネッサは、戦う理由を語る事で響を翻弄する。 ペースを乱されながらも理解を深めようとする響を無碍に拒むヴァネッサ。 その言葉は、異質と隔たれた存在が覚える諦観からくるものであった。 起動儀式の祭壇より、逃走を果たすノーブルレッドと風鳴 訃堂。 だが、装者を「強き相手」と括った高に、弱さを知るマリアの機知が付け入られると、 ここに盤面は覆り、シンフォギア装者たちの反撃が総力をもって開始される。 圧倒的な彼我の戦力差。それでも背を向けずに迎え撃つノーブルレッドの不敵な笑み。 巧妙・周到に張り巡らされた策の果てに囚われてしまった装者6人は、 閉鎖空間内に圧縮されたエネルギーに打ちのめされ、猫噛む窮鼠の逆襲に昏倒してしまう。 朦朧とした意識の中、投げ掛けられた言葉に響は、花咲く勇気を思い出すのであった。
握られた拳はヴァネッサの猛襲をぶち抜き、ついに彼女の眼前にて開かれた。 怪物が背負う罪は「悪」そのものなれど、心の奥底に悲しさを感じ取る響。 再度の対話を試みるものの、だが、その勇気は闖入者によって踏み躙られてしまう。 日本政府より突如にして不自然、かつ強引に執行される本部への査察。 結果、一時的にではあるが、S.O.N.G.の全機能は不全となり、無力化するのであった。 特別警戒待機を、休息という名目にて強制される装者たち。 特に困惑するのは、遊びを知らぬ者たちであったが、 その解消と気晴らしに響は、先日に断られたばかりのレクリエーションを決行する。 市街へと繰り出す響と未来、そして翼とエルフナイン。 だが、弱き人を守れなかったと自分を責める翼の表情は暗く、どこまでも沈痛。 さらには、誰もが耳を逸らしていた間に交わされた響の気安さが未来を傷つける。 昨日までどうにか均衡を保っていた日常と戦場に生じる小さな綻び。 忍び寄る悪意は、状況をさらに取り返しのつかない事態へと流転させるのであった。
査察という不意打ちに、一時的にも機能不全となってしまったS.O.N.G.本部。 その結果、無理矢理に行動実態を裸と剥かれるばかりか、非戦闘員を危険に巻き込んでしまう。 未来とエルフナインの安否を気遣う装者達の想いはひとつであったが、 疲弊に摩耗した翼は、マリアの心配をよそに周囲と軋轢を繰り返し、孤立していく。 一方で、ロスアラモス研究所より奪取した聖遺物を用いて準備を進めていくヴァネッサ。 そこにミラアルクが、エルフナインと口封じから免れた未来を伴ってシャトーに帰還する。 神の力をシェム・ハの腕輪より抽出、そして制御する計画は着々と進みつつあった。 防人の矜持を躙られ、寄る辺を失った翼を虐めているのは、他ならぬ翼自身。 そんな悪循環に滑り込んできた訃堂の言葉は、翼に侵略した「刻印」を容易く掌握。 健常であれば惑わされぬその揺さぶりは何故か甘く、だからこそ翼は頬を汚すしかなかった。 S.O.N.G.からの反撃に緊急出動を余儀なくされたヴァネッサであったが、 激突に己の不利を悟り、危地を覆すべく、やはりロスアラモスで得た情報で翻弄を試みる。 敵の搦め手に戸惑いながらも立ち向かう装者達。だが、勝利を目前としたその時――
解体途中のチフォージュ・シャトーに、物質化顕現を果たす「神の力」。 それはシェム・ハの腕輪から抽出された、余りにも不気味で巨大なエネルギー塊。 設置されたジェネレイターを稼働させたのは魔眼に弄られたエルフナインであり、 数多に廃棄されたオートスコアラーの躯体に残存する「想い出」であった。 緊急事態にヘリで急行する装者たちであったが、 高次元の存在である神の力に対して有効打を見舞うのは困難を極め、 たったひとり、神殺しの拳を備えた響だけが、互角以上に立ち回る事が出来た。 だが――響もまた、バラルの呪詛から解き放たれたと仮説される少女である。 不意をつかれ、器と見初められた身体に向かって巨大なエネルギーが本能的に殺到・集束。 ギアと相殺する事で辛うじてその凌辱を殺したものの、ダメージに倒れ伏してしまう響。 緒戦にて切り札を欠く訳にはいかぬと、装者たちは撤退を余儀なくされてしまう。 一方、囚われの身となっているエルフナインにもノーブルレッドの魔の手が迫る。 高周波に振動するヴァネッサの手刀は、彼女にとってどこまでも必殺必至の一振りであった。
廃棄された不要無用たちが、為すべき事のありったけを振り絞った此処こそが「全」。 即ち、オレの立つ瀬とばかりに再誕を果たすキャロル・マールス・ディーンハイム。 スフォルツァンドに残響する奇跡殺しの錬金術は、ノーブルレッドらを蹴散らしていく。 その間にも神の力は、神そのものへと至ろうと、侵蝕のまさぐりを緩める事は無かった。 エルフナインたっての頼みを聞いて小日向 未来奪還へと動くキャロルは、 S.O.N.G.にワールドデストラクターであるチフォージュ・シャトーを用いた策を提案する。 それは中断と分解の両面作戦。さらに「もうひとつ」を密かに忍ばせた二段の構え。 だが、命を燃やして放った絶唱を以ってしてもチフォージュ・シャトーは呼応せず、 キャロルもまた、哲学が編んだダイダロスの迷宮に囚われてしまうのであった。 窮地を回天させる為、キャロルは最後の一手である全開のフォニックゲインを装者に託す。 エクスドライブと、稼いだ時間に復帰した神殺しの拳にて物理的正面突破を試みるが―― 無情にも、残酷が掻き鳴らした旋律は、迷い子たちの手を引いて墜ちていく。 そこに在る、在るはずのないカタチ――それこそが、既知にして未知の紫影であった。
伸ばした手もむなしく、遠ざかる紫影に向かって親友の名を叫ぶ響。 陽だまりはここに踏み躙られ、物語は約束された残酷に向かって加速しはじめる。 自らを人が仰ぐべき神と称するは、小日向 未来と交じり合って顕現したシェム・ハである。 空の忌々しきを見やるその超然も束の間に、苦悶に表情を歪め、喘きだすシェム・ハ。 それは、「器」が人間である以上、避けられぬ間隙に抉りこんだ風鳴 訃堂の外道策。 神を繋ぎ止めるベく用意された拘束具「神獣鏡のファウストローブ」が依り代の神経を掻き乱す。 さらに、起動した刻印に突き動かされた翼は、動けぬシェム・ハを抱えて戦線を離脱。 段階という悠長もなく、蜘蛛の巣と巡らされた訃堂の計画は一気呵成に収束していくのであった。 アマルガムの無許可使用により謹慎処分となった響は、傷心に彷徨った果てに洸の元を訪れる。 激動に崩れゆく響の日常であったが、洸は洸のままであり、だからこそ響を慰撫していく。 本性を現した風鳴機関であったが、動きを事前察知していた八紘の手腕にて、包囲網が急展開する。 訃堂を追い詰めるは、かつてに訃堂が無理強いした護国災害派遣法違反を用いた強制執行。 逆転を試みて風鳴本邸に急行するS.O.N.G.と日本政府。だがそこはすでに万魔殿と化していた。
風鳴 訃堂の懐く護国の妄執は剣と共に折り砕かれ、呼応するかのように周辺天地が鳴動する。 屋敷の地下より屹立するは光、柱、そして――玲瓏たるシェム・ハの姿。 月がもたらすバラルの呪詛を憂うシェム・ハはマリアと対決し、神の不条理を見せつける。 激突の最中、マリアの纏うアガートラームに知己の気配を感じ取ったシェム・ハは、 その力の謂れをマリアに問い質すものの、真実は既に失われており、マリアもまた答えられない。 さらに、シェム・ハの力の一端にて在り方を書き換えられたノーブルレッドも闖入し、 時間稼ぎの役目も果たしたマリアは、これ以上の窮地に陥る前に撤退を試みるのであった。 解決には程遠く、さらに混迷が深まるばかりの状況は、不可抗力に離反した翼に特赦を下す。 仲間から差し出された言葉と手は温かかったが、いまだ戸惑う翼には受け入れる事ができなかった。 シェム・ハの語った言葉より、次なる目的を月遺跡と絞り込んだS.O.N.G.は、 米国特殊部隊を送り込む探査ロケットの警護と、その後に地下より伸長したユグドラシルの攻略と定める。 だが、完全怪物と成り果てたノーブルレッドはシンフォギアを圧倒し、ついにはロケットをも圧し砕く。 それは力を手にしたものだけが披露する「強さ」であり、初めて見せる「弱さ」でもあった。
アガートラームがマリアに見せる夢。それは刻の彼方に繰り広げられたエンキとシェム・ハの最終決戦、 不意を突いて放たれたシェム・ハの光撃にて、身体構造式を銀に書き換えられていくエンキ。 だが、左腕を斬り落とすことで変換を食い止めたエンキは、最後の力にてシェム・ハを葬るのであった。 テレポートジェムによって月遺跡の内部へと転送されるシンフォギア装者たち。 はぐれた仲間を探すべく行動開始しようとした翼とマリアであったが、 ペンダントより放たれる輝きは2人を遺跡の防衛機構より逸らし、中枢部へと誘うのであった。 装者の不在にどこまでも進行するシェム・ハの目論見。既にユグドラシルの根は地球中心核域に到達している。 月からの帰還を算段するS.O.N.G.であったが、後手に回らざるを得ない致命的な状況は覆せずにいた。 一方、導かれるままに月遺跡の中枢、管制室にやってきた翼とマリアは、 マリアが夢に見たエンキの意識をトレスしたオペレーティングシステムより、秘されし人類史を知る事となる。 それは同時に、シェム・ハが為そうとしている脅威の全貌に触れる事でもあった。 そこに現れるミラアルクとの対決。だが、翼とマリアは完全怪物の誇る常識外の力と技に圧倒されるばかり。 追い詰められた絶望の只中なれど、それでもマリアは逆転すべく翼に奮起を促すのであった。
後手に回らざるを得ない状況を覆すべく、自らの手でシェム・ハと相対する事を決意する弦十郎。 つまりは、正面からの激突であり、未来、あるいは弦十郎自身が、無事で済まない結末の選択であった。 看過できないエルフナインは、弦十郎を制止するためにひとつの対抗策を提示する。 それは、チフォージュ・シャトーの分解機能を応用した錬金術による神殺し。 シェム・ハを倒すべく、キャロルとエルフナインの作戦が装者不在の地球に繰り広げられる事となる。 絶対的にして圧倒的な力量差を見せつけるシェム・ハに対し、搦め手までもを披露するキャロル。 その身を危険に晒した逆転劇にてシェム・ハを追い詰め、神を討ち果たす寸前にまで至るのだが…… 自らを拘束すべく用意された神獣鏡のファウストローブを纏い、凶祓いの輝きにて錬金術を殺すシェム・ハ。 人が神に至る為に研鑽された技「錬金術」を駆使してもシェム・ハの脅威を止める事は叶わず、 地球中心核域に向かって潜行するユグドラシルの本格稼働をわずかに遅らせたに過ぎなかった。 さらに、月からの帰還を果たさんとする装者たちの前にも、いるはずのないシェム・ハの思惑が立ちはだかる。 阻止せんと吼える響の想いも空しく、月遺跡は装者諸共に爆破され、ついにバラルの呪詛は解かれてしまう。 全てはシェム・ハの目論み通り。僅かに邪魔された程度。だが、その間隙に希望の総力が牙を剥くのであった。
ここに錬金術と神話持たぬ国の先端技術――そして、ガングニール。全ての神討つ可能性が集結する。 今ならば神の摂理を覆せるというキャロルの言葉そのままに、装者の攻撃でダメージを受けるシェム・ハは、 ファウストローブの在り方を改造し、全てを終わらせる最終決戦態デウス・エクス・マキナと起動。 装者たちの歌を脅威と覚えたからこそ、全ての力を以ってして神の威信を見せつけるのであった。 キャロルの挺身にてシェム・ハ必殺の一撃を凌いだ装者たちだが、依然、その危機的状況は変わらず。 バラルの呪詛無き今、人類はシェム・ハからの強制接続を免れる術はなく、ここにネットワークは完成。 生体演算端末群に偲ばせていた全てのデータ断章を合一し、遂にシェム・ハは現代に完全体へと復活を果たす。 それでも、神殺しの力にてただひとり接続に抗った立花 響は、臆す事なくシェム・ハに最後の激突を挑む。 呪いが、在り方すらも変えるほどに積層した誰かの想いであるならば、もっと大きな想いにて上書けばいいだけ。 小日向 未来を取り戻そうと足掻く響は、神に奪われた未来を求める人類の本能を共に繋いで束ねる事で、 己が拳に宿った神殺しの呪いを、<未来>を奪還する祝福へと強引に書き換えていく。 戦慄するシェム・ハに向かって真っ直ぐに突き出されたそれは―― 誰かと手を繋いでいくために花咲いた、どこまでも立花 響のアームドギアであった。