若者たちで賑わうEランク昇級試験会場に、30歳を過ぎてギルド事務員から冒険者に転職したリック・グラディアートルの姿があった。試験官や受験者たちから年齢や魔力量の少なさを馬鹿にされながらも、大陸最強のパーティ「オリハルコン・フィスト」による訓練を乗り越えてきたリックは次々と試験をクリアしていくが、同じ試験を受けていた「神童」フリードに逆恨みされ、その姉アンジェリカから決闘を申し込まれてしまう……。
一次試験の結果発表を待つリックとリーネットのもとに、二次模擬戦試験官のひとりで「Fランク潰し」の異名を持つラスターが現れる。しつこくリーネットをナンパするラスターを制止したことで、リックは彼の恨みを買うことに。一方、模擬戦でリックを担当予定の試験官ローロットは、30歳を過ぎて冒険者を目指したリックに共感し激励に訪れる。模擬戦の直前、リックはフリードの企みによってラスターの手下に取り囲まれてしまう。
「オリハルコン・フィスト」の先輩たちが見守る中、リックは「Fランク潰し」ラスター・ディルムットが立ちはだかる模擬戦に挑む。17歳でAランク冒険者になった天才ラスターと、30歳から冒険者を目指した出遅れの新人リックの力の差は明らかだと思われたが、ラスターが冒険者になった理由を聞いたリックは、ラスターには絶対に負けないと宣言。戦いの中で、最強のパーティに鍛え上げられたリックの実力が明らかになる――
合格発表を待つ間、リックは『ヤマト伝説』に憧れた少年時代を思い出していた。英雄ヤマトも持っていたという固有スキルの因子が見つかり、冒険者になると宣言したリックだが、スキルが発現することは無く日々が過ぎていく。やがて夢を諦めてギルド職員として働き始めたリックは、冒険者となり経験を重ねていく友人に言いしれない想いを抱きながら見守っていた。そんな時、圧倒的な戦闘力を持つSランク冒険者リーネットと出会う。
リックを鍛え上げた最強パーティ「オリハルコン・フィスト」に興味津々なローロットは、彼らが集う城に遊びに行きたいと願い出る。城を訪れ、規格外なパーティメンバーたちに翻弄されながらも次第に打ち解けたローロットに、パーティの目的を告げ、その鍵となる「六宝玉」の情報収集を依頼するブロストン。ローロットの情報をもとに北方の街を訪れたリックたちは、たまたま居合わせた新人冒険者レイと共にワイバーン討伐へ向かう。
「六宝玉」を求め、闘技大会で賑わうヘラクトピアにやって来たリックたち。拳王トーナメントのチャンピオンベルトに「六宝玉」のひとつが嵌め込まれていることを知り、三連覇中のチャンピオン・ケルヴィンと交渉するも決裂。ベルトを手に入れるため、リックとブロストンはトーナメントへの参加を決める。出場資格を得るためのテストでリックの前に立ちはだかったのは、かつてEランク昇級試験で決闘したアンジェリカだった。
トーナメントの予選を勝ち上がるアンジェリカ。リックとブロストンも国中の闘技場で開かれる試合を非常識なスピードでこなして予選を突破し、ブロックリーグへと進む。そんな二人の異例の活躍を知ったチャンピオン・ケルヴィンは、不敵な笑みを浮かべるのであった。一方、リックは裏社会との関係を噂されるトーナメントのスポンサー・スネイプと出会う。アンジェリカと親しい仲だというスネイプの言葉を、アンジェリカは否定する。
死が垣間見えるほど過酷なリックの修行から逃げ出してしまうアンジェリカ。その気持ちが痛いほどよくわかるリックは、かつて自らがブロストンから受けたある教えを伝える。その言葉で修行を再開したアンジェリカに、リーネットは「素手を剣にする」という技を伝授。修行に耐えきったアンジェリカは圧倒的な力でブロックリーグ最終戦に勝利し、予選突破を決める。16名が出揃い、いよいよ拳王トーナメントが始まる――
厳しい修行の末、リーネットから習得した身体操作の奥義「糸斬り」でギースに一矢報いたアンジェリカ。そのまま優勢かと見えたが、ギースの拳闘士としての才能はアンジェリカの現時点の実力を遥かに上回っていた。戦闘不能のアンジェリカを一方的になぶるギースに、リックの怒りが頂点に達する。準決勝のカードはリックvs.ギース。アンジェリカに「お前の修行のその先を見せてやる」と告げて、リックは闘技場へと向かう。
準決勝第二試合は、三連覇中のチャンピオン・ケルヴィンvs.ブロストン。ケルヴィンはブロストンを人生最強の相手と称えるが、ブロストンからは「お前の拳には迷いが見える」と指摘されてしまう。翌日に試合を控え街外れで練習に励むケルヴィンは、偶然通りかかったリックに強引に手合わせを申し込み、その実力を認めると全力で戦えない理由を語り始める。絶対王者と呼ばれる彼は、強さと引き換えにある苦悩を抱えていた。
ブロストンが決勝の対戦相手に決まり、あまりの恐怖から部屋に立て籠ってしまうリック。あの手この手で出場するよう説得する一同のなか、ミゼットはブロストンが内に秘めた願い、リックをここまで鍛えてきた理由を語りだす。アリスレートやアンジェリカの励ましも受けてブロストンに立ち向かうことを決意したリックに、試合直前、リーネットが掛けた言葉とは――。拳王トーナメント決勝戦、S級同士の師弟対決が始まる‼
拳王トーナメント決勝戦の最中、ブロストンは自らの孤独な生い立ちと「オリハルコン・フィスト」創設の経緯、そして対等な実力者と殴り合いをしたいという夢をリックに語り始める。リックは冒険者になるという夢のために付きっきりで修業をつけてくれたブロストンの想いに応えることを決意し、二人の戦いは防御と回避を捨てた純粋な殴り合いに突入。魔力も体力も尽きたその時、ついにリックの固有スキル「蛮勇覚醒」が発動する――