平穏で慎ましい小市民を目指すという約束をした小鳩常悟朗と小佐内ゆきは、無事同じ高校に入学した。ところが、小佐内からいちごタルトを買いに行こうと誘われた四月のある日、小鳩は校内で盗まれたというポシェットの捜索に駆り出されてしまう。いきなり事件に遭遇した小鳩たちは、穏やかな放課後を過ごせるのだろうか。
日曜日、堂島健吾の家に招かれた小鳩と小佐内は、堂島がこだわりの方法で作ったココアを振る舞われる。小佐内不在のタイミングで、小鳩の性格が変化した理由を尋ねる堂島。答えをはぐらかして席を立った小鳩だが、今度は台所にいた堂島の姉・知里の謎解きに引き込まれてしまう。堂島がココアを作った方法とシンクの状況が、どう考えても矛盾しているらしい。
中間テストがあった日の放課後、小鳩は小佐内に呼び出され、ケーキバイキングができる洋菓子店を訪れた。テスト中にロッカーにあった花瓶が割れたことが原因で、小佐内は思い出しかけていた答えを忘れてしまったのだ。やけ食いをする小佐内からその話を聞いた小鳩は、学校に忘れたスマホを取りに行ったついでに、教室内を調べはじめる。
小佐内の自転車が盗まれ、路上に捨てられていた事件。小佐内が犯人に復讐を企んでいることを知った小鳩は、堂島にも用心棒を頼むことに。しかし、事情をよく知らぬ堂島はどうにも納得ができない。そこで小鳩は一連の出来事についての推理を堂島に話す。犯人が自転車を盗んでまで自動車学校に向かった理由は何だったのか?
新聞部にアンケートを届けた小鳩は、部長の堂島から謎解きを頼まれる。学校近くにできたドイツパンの店の揚げパンを購入し、その中でマスタード入りのものを食べた部員が取材記事を書くことになっていた。だが部員はみな、自分が食べたものはマスタード入りではないと答えたらしい。内心興味をそそられた小鳩は、つい推理をはじめるのだった。
夏祭りの縁日、浴衣姿の小佐内と出会った小鳩。しばらく縁日を散策したのち、別れ際に小佐内から夏休みの予定を聞かれる。特にないと答えた小鳩であったが、ある予感がしていた。すると翌日、突然小鳩の家にやってきた小佐内から、街のスイーツ店を記した地図を渡される。それが〈小佐内スイーツセレクション・夏〉のはじまりだった。
小佐内とスイーツを食べると約束した時間より早く着いてしまい、近くのバーガーショップに入った小鳩は、店内にいた堂島に声をかけられる。堂島は不穏な噂のある高校生グループを見張っていたのだ。その経緯を小鳩に話していた堂島だが、グループに動きがあったので、メモを残して店を出ていってしまう。小鳩がそのメモを手にとってみたところ、書かれていたのは「半」という文字だけであった。
りんごあめを買いに行く約束をしていた小鳩は、一緒に出掛けるため小佐内のマンションを訪れた。だがそこで、小佐内が誘拐されたことを知る。状況がつかめないままマンションを出てすぐ、その小佐内からスマホにメッセージが届いた。そこには、買ってきてほしいスイーツと店名が記されていて……。小鳩は堂島に電話をかけ、小佐内を探す手助けを依頼する。
誘拐事件が解決して数日後、小鳩と小佐内は〈小佐内スイーツセレクション・夏〉で最後に残った夏期限定トロピカルパフェを食べにきた。小鳩はパフェの価格と大きさに圧倒されつつ、刺激的だった夏休みを振り返る。まずは先日謎解きをしたバーガーショップに、そもそもなぜ堂島がいたのかについて……。
溶けてゆく夏期限定トロピカルパフェを挟み、向かい合う小鳩と小佐内。この夏の出来事に関して小佐内を問い詰める小鳩に対し、小佐内もまた、楽しげに推理をする小鳩について考えていたことを語りだす。「小市民」を目指していたふたりのこれからは、どうなってしまうのだろうか。
交際中の小佐内ゆきと瓜野高彦は、学校帰りに喫茶店に立ち寄った。瓜野は味気ない記事ばかり載る学内新聞「月報船戸」を変えたいのだと力説し、小佐内はティラミスを味わいつつ応援の意思を表明する。すると後日、他の新聞部員からの提案で、学内新聞にコラム欄が新設されることに。瓜野は強力なネタを探し始めるが……。
友人である氷谷優人の助言を受け、瓜野は市内を騒がす連続不審火を調査し、次の発生現場を予想するコラムを書く。一方、河川敷で車が炎上する騒動に居合わせた小鳩常悟朗は、その車が昨夏の誘拐事件に用いられたものだと気づく。新聞部部長の堂島健吾に電話をかけ、新聞部に干渉しているという小佐内の動向を探る。
昨秋から仲丸十希子と付き合い始めた小鳩だが、小佐内と連続不審火の関連が気になっていた。その頃、小佐内に認めてもらえないことにもどかしさを覚える瓜野は、予想記事の暴走ぶりをとがめられ、他の新聞部員と口論になっていた。部長の堂島に仲裁された瓜野は、不審火の法則性をしぶしぶ語りだす。
新聞部部長になった瓜野は、次の放火が予想される地域の張り込みを新入部員たちとともに計画する。犯人を捕まえ、新聞部の不朽の業績を打ち立てるのだ! 一方、放火事件と小佐内の動向を探る小鳩は、新聞部の五日市公也を呼び出し、ある提案を口にする……。
瓜野の考えた法則性どおりに起きる連続放火事件は、次第にその規模をエスカレートさせていた。犯人を捕まえられず、氷谷から励まされた瓜野は、後日小佐内からも気になる助言を受ける。その頃、小鳩と仲丸の関係性にも変化が訪れていた。
おれは、犯人が誰なのか、知っている――。そう宣言した瓜野は、連続放火犯を捕まえるため、新聞部員たちとともに夜の町へと繰り出す。小鳩と堂島もまた、放火発生が予想される場所で待ち伏せをしていた。ついに火の手が上がり、現場に駆けつけた小鳩が遭遇した人物とは……。
真夜中の公園。連続放火犯は捕まり、とうとう小鳩と小佐内は出会った。この事件について、小鳩がしていたことを知りたいのだと小佐内はいう。小鳩は、河川敷での不審火をきっかけに、事件に興味を抱いた経緯を語り出す。しかし小鳩にも、まだ推理できていないことがあって……。
大学入試を翌年に控えた12月。小佐内と歩いていた小鳩はひき逃げにあい、病院に搬送された。見舞いに来た堂島から小佐内の無事を聞くなど話をするうち、小鳩は中学時代、同じようにひき逃げにあった当時のクラスメイト、日坂祥太郎のことを思い出す。