「お帰りなさいませ、ご主人様!」。七芝高校一年生・長谷川昴は、場違いにして珍妙なあいさつで迎えられていた。場所は私立慧心学園初等部の体育館。彼を待ち構えていたのは、なぜか5人のかわいらしいメイドさん(しかも全員小学生!)だった……。 高校入学と同時に入部したバスケ部が、不祥事により1年間の休部を余儀なくされるという大惨事に巻き込まれた昴。そんな彼は、従妹にして慧心学園の教師を務める美星に、半ば脅されるように頼みこまれ、気が進まないながらも3日という期限付きでコーチを引き受けることになったのだ。個性的で初心者ばかりの部員たちを指導していく中、昴は唯一のバスケ経験者である、湊智花の美しいジャンプシュートに目を奪われる……。
女子バスケ部のコーチを辞めろ。昴にそんな警告をしたのは、智花たちと同じ慧心学園初等部男子バスケ部の部員たちだった。彼らの口から『勝負』のいきさつを聞かされた昴は、前日に真帆の見せた焦りの正体に気付く。しかしコーチの約束は3日間。最終日を迎えてしまった上、試合までの短い期間に彼女たちを勝てるチームに育てる指導などできないと、智花たちに告げる昴。美星のバスケから逃げるなという厳しい言葉にも、今の自分にバスケに対する情熱はないと口にする。智花たちの想いも、男子バスケ部員の気持ちもわかる。そしてバスケから離れようとしている自分は、本当はどうしたいのか。そんな複雑な想いを抱えた昴は、偶然、目の前を通りかかった智花を思わず呼び止め……。
みんなと、5人一緒にバスケがしたい。そんな智花の想いに、男子バスケ部との決戦までの間、コーチを続けると決意した昴。やるからには必ず勝たせると、美星の用意した男子バスケ部の試合ビデオを徹底的に研究し、弱点を探るとともに、その対策を考えていた。そして女子バスケ部の面々には、それぞれの役割に応じたピンポイントの練習メニューを与える。真帆と紗希には互いのフォームを確認しながらのシュート練習を。ひなたには少しでもスタミナ不足を補うべく走り込みを。愛莉にはゴール下でのディフェンスを。しかし、ひなたは練習中に倒れてしまい、愛莉は気の弱さから思うようにプレイできない。一朝一夕に克服できない問題ながらも、昴は弱点を逆手に取った秘策を思いつき……。
ついに迎えた男子バスケ部との決戦。巧みなシュート攻勢で点を稼ぐ女子バスケ部だったが、スタミナ切れを狙われ、追いつかれてしまう。頼みの綱の智花も抑えられ、じわじわと点差が広がる残り3分。昴の仕込んでいたなりふり構わない秘策から何とか勝ち越すものの、すぐにシュートを入れられて逆転されてしまう。1点差。試合時間、残り5秒。厳しいマークに囲まれながらも、智花の手から放たれた最後のシュートは、ゴールに向かい……。決戦を終えた智花たちは、昴にこれからもコーチを続けてほしいと頼み込む。ためらう彼に、フリースロー連続50本成功という、とんでもない条件を口にする美星。ためらうことなく条件をのんだ智花は、毎朝、昴の家の庭で挑戦することに……。
引き続き慧心学園初等部女子バスケ部のコーチを続けることになった昴。智花たちも男子バスケ部との練習試合を経て、それぞれの課題とバスケに対する意欲をより強くしていた。そんな折、学校の球技大会にバスケのクラス代表として選ばれた智花たち。美星はいい機会とばかりに勝手に合宿を組んでしまい、昴は断れずに合宿でのコーチも引き受けることに。自分たちで準備した楽しい昼食を終えて、さっそく練習のために体育館に向かった智花たち。そこには、来るはずのない合宿参加者――竹中の練習する姿があった。真帆と大ゲンカ中の彼は、球技大会でバスケに出場しないはず。一触即発のふたりの間に割って入った昴は、竹中の口から意外な言葉を聞かされる……。
真帆と竹中のケンカをどうにか仲裁しようと奔走する昴。その姿を見て、力になれない自分に少し落ち込む紗希。 真帆と紗希、そして竹中は仲の良い幼なじみだったが、ふたりがバスケを始めたのを機に、 竹中が距離を置くようになったのだという。心配する紗希に昨晩の出来事を話す昴。 ぎごちないながらも一緒に練習を始めてくれた竹中の姿に、 紗希は「真帆の本気」に引っ張られてバスケを始めたいきさつを語り出す。 そんな彼女に、一計を案じた昴は3人での体育館掃除を命じる――。 そして練習後。用意されたお好み焼きの材料に、こだわりの技を披露する紗希の姿に気圧されながらも、 楽しい夕食を過ごす7人。しかしその後、ひなたと竹中が行方不明になってしまう……。
最近、様子のおかしい昴が気になって仕方がない葵。部活もないのに放課後すぐにいなくなってしまったり、 苦手なはずの女子にも慣れた風に接していたり……。 心配そうな葵の姿に、バスケ同好会の面々は彼女と昴の勉強会をセッティング。 智花たちの指導に夢中で、テストのことをすっかり忘れていた昴は、来年のバスケ部復活を目標に、 その申し出を快く受ける。一方、練習に一層熱が入る智花たち。しかし、ひとり愛莉だけはミスばかりで、 練習に全く身が入っていない様子だった。その理由は、これから始まるプールの授業。 泳げない愛莉は不安で仕方なかったのだ。それなら昴にコーチしてもらえばいいと、 真帆の家のプールで水泳特訓をすることに。しかしその日は、勉強会の日で……。
勉強会の約束をすっかり忘れていた昴にオカンムリの葵。しかし赤点を取られても困ると、対策ノート渡そうと昴のあとを追う。そして、たどり着いたのは慧心学園の体育館。昴が智花たちにコーチをしている姿を見てしまう。美星から事の経緯を聞かされたものの、いまだ納得できない葵。さらに昴が勉強会を断った本当の理由が愛莉の水泳特訓のためだと知ってしまう。彼を連れ帰ろうと真帆の家にやってきた葵は、昴と激しく衝突する。自分にとって智花たちのコーチは大事なことで、バスケ部の復活にも必ず役に立つという昴。そして、昴がコーチを辞めてしまうのではないかと不安を感じていた智花たちも、彼が必要なのだと懇願する。そんな智花たちに、葵は昴を賭けた勝負を申し込む――。
夏休み。美しい海辺近くに立つ、真帆の別荘に遊びに行くことになった智花たち。とっておきのイベントを前に、それぞれが思い思いに新しい水着を選び、コーチの昴、担任の美星とともに別荘へ。さっそく真帆と合流して、別荘裏のプライベートビーチで新調した水着を得意満面に披露する。開放的な青空のもと、泳いだりはしゃいだり、それぞれに楽しむ智花たち。全員参加の鬼ごっこをしているうちに、なぜか標的は昴に。自分以外全員鬼の鬼ごっこで追い掛け回されたり、砂の城に埋められてくすぐられたりと散々な目にあわされた昴だったが、一方で、明確な目標のない状況に、今後の指導方針に悩んでいた。そんな折、ひなたを心配した妹のかげつが、彼女を連れ戻すべく別荘を訪れて……。
厳しい練習を重ね、どんどん実力を上げていく慧心学園女子バスケ部。 しかし、コーチの昴には、ひとつの悩みがあった。 自分たちの力を試したい、大会に出場したいという彼女たちの想いが、ある事情により叶えられないこと。 公式戦に出場するためには、控えも含めて10人の選手が必要なのだ。 その事実を知っているのは、昴と智花だけ。 そんな折、御庄寺の親戚が教師をしている強豪校・硯谷女学園との親善試合の話が持ち上がる。 対外試合の経験を積ませるべく、喜んでその話を受ける昴だったが、その裏には合宿中に昴と葵の仲を深めてしまえという悪友たちの計画が隠されていた。 しかし合宿当日、引率者である美星が突然、倒れてしまい、昴たちだけで硯谷に向かうことに……。
自分たちのチームは公式戦に出られない。 硯谷のエース・未有の言葉にショックを受け、練習から逃げ出してしまう真帆。 心配する智花たちだったが、真帆のことは紗季に任せ、控えの選手たちとの練習を始める。 一方、昴は試合に出られない事実を真帆たちに伝えられなかった自分に後悔していた。 しかし、今のためだけにバスケはできる、プレイができなくてもバスケと向き合えるという麻奈佳の言葉に、 自分のバスケの在り方に気付く。 バスケを奪われながらも、智花たちのコーチをすることで、自分も成長していた。 そして、真帆も戻り、自分たちのバスケを取り戻した智花たち。 昴はコーチとして自分ができること――彼女たちのバスケを守るため、あることを決意する。
硯谷レギュラーチームとの練習試合。紗季をポイントガードに据えた布陣で挑んだ慧心学園は、 それぞれが身に着けてきた技術を駆使して食い下がる。キャプテン・未有の慢心も手伝って、 互角以上の戦いを繰り広げていた。強い想いで戦う智花たちと、それを見守る昴と葵。 しかし、硯谷も麻奈佳の一喝で未有が持ち直し、本気のプレイでぶつかってくる。 手強い相手、だからこそ面白い試合。互いを認め合ったエース同士がぶつかり合う中、 昴は智花たち5人の特性を活かした秘策に出る。硯谷もマンツーマンでガチンコ勝負に出る。 そして、最後のシュートが放たれ……。慧心と硯谷の練習試合を終えた数日後。 最初の練習の日に、さまざまな想いを抱えた昴が体育館の扉を開けると、そこには――。