警察に連行される悟は群衆の中に「帽子の男」の姿を見た。 「終われない…俺にはまだやらなきゃならない事がある…」、彼の祈りは奇跡を呼ぶ。 そして気がつくと悟は科学センターにいた。 三度目の昭和63年、Xデーの4日前、雛月は悟の隣で健在だ…。 今度こそは後悔の無いように…、新たな決意を胸に悟は踏み出す。 まずはXデーを乗り切り翌日の誕生日会を終えた彼は、その夜にユウキさんの自宅に向かった。 アリバイを作るべく家に石を投げ警察を呼び、さらには帰宅中の雛月の母を待ち伏せる…。 心に余裕が無くなっていた故の過激な行動をたしなめたのは、数日間悟を監視していたケンヤだった。 ケンヤの言葉に冷静さを取り戻した悟は、雛月に「お前のこと誘拐するけどいい?」と問うのだった。 誘拐犯が手が出せない場所に避難しなければ…という悟の意図を汲んだケンヤは、隣の小学校校庭にある廃車となったバスに二人を導く。 雛月が廃バスの隠れ家で過ごす日々が始まった。 だが彼女がひとりで夜を過ごしている時、思わぬ来訪者が…
悟が冷たい水の底に沈んだ日から年月は流れ、2003年。 九死に一生を得たものの昏睡状態となった彼は、ついに目を醒ます。 15年もの間眠り続けていたという事実と、事件にまつわる記憶が失われていることにショックを受ける悟。しかし献身的に悟に尽くし、過去の話題を避けているような素振りの佐知子を見て、「あえて思い出さなくていいのでは?」とも思うのだった。 そんな彼のもとに、赤ん坊を抱いた一人の女性がやってくる。 かつて、悟がその生命を未来へとつなげた少女??雛月加代だった。 感極まり、祝福の言葉を贈る悟。それをきっかけとして彼はリハビリの量を倍にし、必死の努力を重ねていった。 季節は秋。 悟は院内で知り合った久美という少女と友人になっていた。 骨髄移植に不安を覚える久美を励ます悟。 そんな二人のもとに、あの帽子の男・西園が現れた。 彼は自身がかつて5年4組の担任だった八代学であることを明かすのだった……。 八代や久美と交流を続けながらリハビリの日々を過ごす悟。 だが身体の回復と対照的に、彼の記憶は閉ざされたままだ。 久美の手術を目前に控えたある日、彼女の病室で八代と鉢合わせした悟は、誘われるまま屋上に向かう。 雨が滴る中で15年前の懐かしい思い出を語り始めた八代。 だが、突如悟は強い意志を秘めた瞳を向ける。 「八代、俺の記憶は戻っているぞ――」。
小雨が降る病院の屋上で、悟は八代と対峙していた。 「俺の記憶は戻っているぞ」と言い放つ悟だが、八代はまったく動じない。 全てを読み切った上で、悟に罠を仕掛けていたのだ。 八代のシナリオは、悟の新たな友人・久美の点滴に筋弛緩剤を混入して殺害した上で、悟をその実行者に仕立ててから殺すというものだ。 ついにチェックメイトか――。 だが、静かに勝利を宣言したのは悟だった。 そして彼は唐突に、自らの手で屋上の縁に車椅子を進めて行く…。 間一髪、それを掴み助けたのは…他ならぬ八代だった。 彼は告白する。 悟がいるからこそ、自分は生きている実感が持てるのだと。 それを認めた上で、悟を放し屋上から取り落とした八代は、自らも飛び降りようとする。 だが、彼が眼下に臨んだ視界の中には、救助マットの上で微笑む悟とその仲間の姿があった――。