甘粕ひそねは、ウソがつけないあまり無意識に他人を傷つけてしまう女性。 人間関係に悩み、 任期制隊員として航空自衛隊に入隊し、 岐阜基地に配属された。ある日『第8格納庫』に 行くよう言われたひそねは、 プールから出現したドラゴンにパクリと 飲みこまれてしまう。 なんと空自は古来から日本に棲まう 「変態飛翔生体」略称「OTF」を 戦闘機に擬態させ、管理していたのだった。 かくして「Dパイ(ドラゴンパイロット)」となった ひそねの運命は、 大きく動き始めた!
ドラゴンと飛行訓練を繰りかえすひそね。そこに現れた長髪の男・幾嶋博己は、 彼女の身体に触りまくった。専用パイロットスーツの開発担当である幾嶋は、 ドラゴンに選ばれて飲み込まれた先の構想を触発されたのだ。 一方、ドラゴンに選ばれなかったライバルの奈緒は、 嫉妬のあまり嫌がらせを繰りかえすが、 ひそねはそれを好意と勘違いしてしまう。 次第にドラゴンとの距離が縮まっていったひそねは、 名前が必要だと感じ始めていた。
航空祭を控えて予行演習に余念のない岐阜基地。だが、ひそねの不慣れなフライトは 編隊を乱して不安を与えていた。一連の会話の中で、3年前までの Dパイ前任者だった森山の存在を耳にしてしまったひそねは、彼女のTACネーム “フォレスト”に反応するまそたんの様子を見て、あまりいい気分がしなかった。 森山の情報を集めようとするがどうして隊を去ったのか、確実な答えは得られなかった。 そして、大勢の来場客を集める航空祭の日が来た。
築城、三沢、入間と他の3基地所属のDパイたちが岐阜基地に集結し、 模擬戦をふくめた合同訓練が行われることになった。 築城所属の星野絵瑠は、到着早々に互いを知る目的で夜間訓練を提案する。 しかも彼女はドラゴンをペット扱いすることを嫌い、 戦闘機F-2Aに擬態させたままであった。 日登美真弓はのんびり屋、絹番莉々子は視線恐怖症と、 いずれも個性的なDパイたちと、ひそねは良好な人間関係を築けるのだろうか。
ドラゴンへの接し方の違いから、Dパイたちの関係はギクシャクするばかりだった。 ひそねは、つい口に出る自分の本音がトラブルの原因だと考え、悩む。 そんな4人に柿保飛行班長は、翌朝早くの日本海沖無人島における実動訓練を指示した。 限定された環境、限られた物資の中でチームワークをどう築くかが主眼だという。 ドラゴンたちも含め、どうやって島を脱出して基地へ帰投するのか。 ひそねたちの心の戦いが始まった。
日本海沖無人島におけるDパイ訓練は5日目に入り、残すところ2日となっていた。 各基地から集まった4人の関係は、まだ親密には至っていない。 特にパイロットとしてプライドの高い星野絵瑠はドラゴンのF-2に接する態度が厳しく、 周囲から浮いてしまう。 たまりかねた絵瑠はイカダを出し、単独脱出を試みて高波に飲まれてしまった……。 一方、暴風雨の中、洞窟に避難したひそねたちはその島に隠された秘密に気づくのだった。
無人島での一件を経て互いに信頼関係を築き始めたDパイたち。 しかし、これまで行ってきた厳しい訓練は国家的事業“マツリゴト” のためであったことが明らかになる。 マツリゴト遂行のため、防衛省はDパイたちの感情をコントロールする作戦を実行する。 Dパイの恋愛感情はOTFとの関係性に大きな影響をもたらすことが分かっているのだ。 こうしてDパイたちの個人データ収集が始まる中、 ひそねと小此木は2人で外出することになった。
ついに任務の全容がDパイたちに通達された。 陸・海・空、国家の総力をあげて行われる“マツリゴト”。 それは74年ごとに目覚める超大型変態飛翔生体“ミタツ様”を、 次の眠りにつく場所“臥所”へと導くという一大神事だった。 超低速で移動するミタツ様を誘導するため、三日三晩空を 飛び続けなければならないDパイとOTFたち。 飯干からジョア売りの貞の正体が告げられると、来たるべき日に備え、 ひそねたちの訓練は本格化し始める。
“マツリゴト”を想定した三日三晩に及ぶ訓練の後、 岐阜基地に現れたのは“巫女”たちだった。 そして、“神祇官”に所属していることが明かされた小此木。 巫女のひとりである棗は、小此木への好意を隠そうとせず、 小此木と親しいひそねに対して執拗につきまとう。 一方で若い巫女たちにうかれる飛実団のパイロットたち。 絵瑠の気持ちにも動きが見え始めていた。 マツリゴトに向け訓練が過酷さを増す中、貞と飯干は“吻合”を案じていた……。
上層部の懸念は的中した。恋愛感情が、OTFとDパイの関係に重大な亀裂をいれてしまった。 “吻合”によりまそたんに乗れなくなったひそねは、まだ自分の気持ちに気づけずにいた。 ひそねの姿を見た名緒は、自分にできることを見つめなおす。 ノーマに乗れなくなった絵瑠は、再び夢を追いかけ始める。 小此木、そして棗、“マツリゴト”を目前に揺れ動く岐阜基地の面々。 来たるべきその日に向け、人それぞれに新たな動きが始まっていた。
“マツリゴト”が始まった。 かつてDパイたちが訓練した無人島“ミズチ岩”となっていた超大型変態飛翔生体“ミタツ様”が目ざめ、次なる臥所に移動を始めた。 発達した積乱雲に身を隠し、ゆっくりと飛び立つミタツ様。激しい風圧、暗雲たちこめる暴風雨の中、懸命にミタツ様を誘導する4機のOTF。 「甘粕ひそねは、今、何をしている?」。 日本国の命運がかかったミッションの中、隊員たちはその場にいない、ひそねを思うのだった。
“ミタツ様”を臥所へ誘導し、無事に“お寝返り”させるまでがDパイのミッションだ。 しかし、数千年続く国家的神事の背後には、秘匿され続けてきた重大事があった。“楔女”の存在とは? そして、貞の内に秘められた過去とは? それぞれの想いが交錯する中、“マツリゴト”は終局を迎えようとしていた。 日本国全体が瓦解の危機にさらされる絶体絶命の状況下で、ひそねとまそたんは何を決断し、 どう行動して、どんな未来を選ぶのか?