紅薔薇さまこと小笠原祥子の提案で、今年の学園祭は「とりかえばや物語」を上演する事になった山百合会。そっくりな妹弟が入れ替わる話で、その役は当然、紅薔薇のつぼみこと福沢祐巳と、そっくりな顔の弟、花寺学院生徒会長の祐麒がやる事に。一年生の松平瞳子と細川可南子にも学園祭の手伝いをしてもらう事になっていたが、瞳子はかけもちしている演劇部の芝居を降板した事を隠し、男嫌いの可南子は花寺学院の男子生徒と芝居をする事が苦痛で、劇には出たくないと祐巳に告げる。祐巳にとっては祥子と姉妹(スール)になって一周年の大事な学園祭。特別な一日が近づいているというのに、祐巳は祥子との一周年の日に何をするかを考える余裕がなく…。
学園祭当日。先代紅薔薇さまの水野蓉子、先代白薔薇さまの佐藤聖も母校の学園祭へやってくる。二人は、どうしても中に入りたいとリリアンの塀を登ろうとしている一人の少女と出会う。祐巳は二年松組・藤組の共同模擬店の当番を終えて祥子のクラスへ行くが、肝心の祥子は不在。途中で合流した蓉子と聖と一緒に待つ事にするが、会いたくない人がいたと逃げ出してきた可南子がやってくる。祐巳たちの所へ戻ってきた祥子は、父親が来ている、と保健室に呼ばれていた事を話すが、それは人違いで、学園祭に来ていた可南子の父親だった。そして保健室には蓉子たちが出会った少女がいて…。演劇部に戻った瞳子の舞台、山百合会の「とりかえばや物語」も無事に終わり、慌しい学園祭を終えた祐巳と祥子は一周年のその日を迎える。
遊園地デートから数日、柏木に言われた言葉が頭から離れない祐巳。そんな中、自宅に柏木から電話があり、瞳子が家を飛び出したまま戻っていないと知らされる。心配になった祐巳は可南子や乃梨子に電話をかけようとしたとき、祐麒が瞳子を連れて帰宅した。祐巳の家で夕食を食べた瞳子は、迎えに来た柏木の車で家へ戻っていった。翌日、柏木が瞳子の両親のかわりに祐巳の家へお礼の挨拶をしにやって来た。祐巳は瞳子の家出の理由を訊ねるが、それを受け止める覚悟があるか、と柏木に言われそれ以上聞くことができなかった。試験休み明け、山百合会のクリスマスパーティに菜々を呼びたい由乃に協力する為、可南子と瞳子も誘う事にしたが、祐巳は瞳子の家出の理由が気がかりで…。
リリアン女学園では終業式のミサが終わり、薔薇の館ではクリスマスパーティの準備が進んでいる。写真部の蔦子や、一年生の瞳子、可南子が集まってくる中、由乃は令に紹介する為に中等部の菜々を連れてきた。令と志摩子が作ったケーキを食べたり、ツイスターゲームをしてパーティを楽しんでいたが、会話の中で、令の卒業後の進路がリリアン女子大ではない事を知った由乃はショックを受けてしまう。一方、周りに気づかれないように出て行こうとする瞳子の後を追いかける祐巳。マリア像までの並木道を二人で歩いている途中、瞳子は初等部のときに思い通りに描く事ができなかった白地図の話を始めた。悲しげな表情で何か思いつめている瞳子が心配な祐巳は、マリア像の前で姉妹(スール)の申し出をするが…。
新学期、瞳子は何も無かったかのような笑顔で祐巳と挨拶を交わした。以前にも増して気持ちを隠すようになってしまった瞳子に、同じクラスの乃梨子も複雑な気持ちを抱いていた。そんな中、来期の生徒会役員を決める説明会に瞳子が現れ、選挙に立候補した。瞳子が当選する事になれば祐巳、由乃、志摩子の誰かが落選する事になる。薔薇さまに憧れていたとはいえ、瞳子の行動は山百合会メンバーに動揺を与えるには充分すぎる出来事だった。やがてその波紋は学園中に広がっていってしまう。瞳子の気持ちが分からず落ち込んでいた祐巳は、廊下で娘の忘れ物を届けにきたという上品な婦人と出会う。娘は立候補しているお姉さま方を応援している…という婦人の言葉に、応援してくれている人がいるという事に気付かされ、その気持ちを胸に立会演説会へ望む。
選挙は祐巳、由乃、志摩子が見事当選したが、当選の瞬間、瞳子が負ける為に立候補をした事に祐巳は気付き愕然とした。そんな瞳子の真意を問い詰めに行こうとした乃梨子に対し、祐巳は微笑み、今はいいと告げた。乃梨子は祐巳に考えがあるのかは分からなかったが、急に祐巳が遠くに行ってしまったように感じた。そして祥子もまた、祐巳の変化を感じていた。帰宅した祥子はスキー帰りの柏木から、瞳子が12月に家出をしたときに祐巳の家へ行っていた事を聞かされた。リリアン女学園では、バレンタインデーイベントに今年も山百合会が協力する事に決定した。祐巳と由乃はお茶を淹れながらバレンタインデーイベントの事や、お互いの妹問題の話をしていたが、祐巳は、瞳子の問題があるにもかかわらず、妙に落ち着いていた。乃梨子が一人でいる所に帰ってきた祐巳は、乃梨子が一番聞きたかった質問に答える。
退部届をもらいに久しぶりに演劇部を訪ねた瞳子は、演劇部部長の高城典から姉妹(スール)の申し出を受ける。演劇部には瞳子が必要である事、そして祐巳に近づく度に傷ついている瞳子を守りたいと告げる。校門には、祐巳との間に何があったのかを探る為、瞳子を待ち伏せる柏木が居た。週末、宝探しがリリアンかわら版号外で告知され、クラス内が慌しくなっていた。瞳子は、帰り道で祐巳と偶然会い、駅まで一緒に行く事になるが、祐巳の話を聞いているうちに、自分の出生の秘密を知っていて哀れみを受けたのだと確信し、瞳子は祐巳を拒絶してしまう。しかし、それは誤解だった事を知り、自分の過ちに気付き一人崩れ落ちる瞳子の元に、帰宅したはずの乃梨子が現れる。