つひに完成せし一杯、香りは甘く、後味はやけに苦し。 飲めば昔の失敗も、逃げた恋も、売れぬ芸も、 みな霧のごとく薄れゆくと評判なり。 村人ら、こぞって求め、気づけば里全体ほろ酔ひにて、 明日の不安も忘れたり。 夏子ただ一人、醒めた目にて杯を見つめ、 「消すより残る後味こそ芸よ」と小さく笑ひたりけり。