都内にあるフレンチレストラン「ベル・エキプ」。その店内でこの店のオーナーシェフが、静かに息を引き取った。その死から数週間後、若者の原田禄郎(筒井道隆)に続き、エレガントさを漂わせる千石武(松本幸四郎)が店を訪れ、隅のテーブルについた。
活気の感じられない店内。メートル・ドテル(食堂支配人)の梶原民夫(小野武彦)は、たばこをふかし、コミ(ウェイター)の和田一(伊藤俊人)やソムリエ・大庭金四郎(白井晃)も手持ちぶさたな様子。バーテンダーの三条政子(鈴木京香)は一応グラスを並べている。厨房でもシェフの磯野しずか(山口智子)、畠山秀忠(田口浩正)、パティシュ・稲毛成志(梶原善)らが気力なく、下準備をしている。
おどおどする禄郎に対し、料理やワインを臆するところなく、次々注文していく千石。ワインも「どこの棚にほこりを被っているはず」と事もなげに言い当ててしまい、「何者?」と支配人兼オーナーの水原範朝(西村雅彦)ら店の関係者は二人に探りを入れ始める。騒ぎ出した客を手際良く追い出す千石。
千石から水原が腹違いの兄だと聞かされ驚く禄郎。父の死で、店のオーナーになった禄郎は、千石の協力で店を再び一流店に盛り立てようと考えていた。「“ベル・エキプ”の意味は良き、友」。自分を納得させるよう話した千石は「君!支配人を呼んできてください。大至急」き然とした声を響かせた。