芝、西の久保の「壷屋」は、紙油、京白粉の評判もいいが、『桜紅』と名付けた口紅が女たちの人気を集めていた。その壷屋に奇妙なことが起こった。金蔵から三百二十両が盗まれたのだ。合鍵を使ったものと思われたが、金蔵の戸口に近づくには、一度店の中に入るしかなかった。だが、その形跡もなく、鍵を収める手文庫も錠がおりたまま。奉公人も誰ひとりとして欠けていなかった。話を聞いた平蔵(中村吉右衛門)は、その鮮やかな手口に、この盗っ人をどうやっても捕えてみたいと思うのだった。ところが、ほどなく金は元通りの場所に返ってきた。これは、壷屋の隣で扇子を売っている「平野屋」の主人・源助(坂上二郎)と番頭・茂兵衛(木村 元)の仕業だった。平野屋は、帯川の源助という元盗賊で十年前に足を洗っていたが、つい昔の血が騒いだのだ。平蔵は、壷屋の見取図から、金蔵にいたずらを仕掛けるなら、平野屋からしかないと見抜いていた。
Name | Type | Role | |
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Kei Tasaka | Writer | ||
Yoshiki Onoda | Director |