あれから五日が過ぎ、純の不満はどんどん増すばかりであった。おかむろづくりのためにネコで石運びをすることになる。蛍はよく働いていたが、純は怠けてばかりであった。(草刈りの時に、クマさんが言った、「こつこつ働いていれば、人間はだんだん謙虚になる。」の一言に「なるほど」と思ったのは私だけだろうか。) その夜、蛍が五郎に純が母親に手紙を書いていることを告げ口するが、純が蛍のことを信用して話したのだから、その秘密を漏らすようなことはしてはいけないと言われる。 翌日、五郎は純と蛍のことを頼みに中の沢の分校へ行った。しかし、先生は即答を避けた。五郎は、学校に近い北村清吉の家へ寄った。すると、そこに東京から令子の妹の雪子が来ていた。そのころ、家では純が蛍に母への手紙を町へ出しに行くように頼んでいた。はじめは、いやだと断っていたが、引き受けてしまう。 町へ行く途中、橋の下に、綺麗な花を見つけた蛍は、橋の欄干の上に手紙を置いて、川へ降りていった。そのとき、橋の上を車が通り過ぎ、置いてあった手紙が川に落ちてしまった。蛍はそれを追いかけていったきり、夜の7時を過ぎでも戻ってこなかった。純は、初めはとぼけていたが、自分が令子への手紙を出してくるように頼んだことを五郎に話した。夜遅く、蛍は無事に発見された。蛍は、手紙のことは誰にも言っていないからと純に話した。それを聞いた純は、心の奥にあついものを感じていた。