全国各地を渡り歩くさすらい署長・風間昭平は、新潟中署に赴任する前に立ち寄った佐渡市小木の旅館で、仲居の吉岡春子と世間話に興じていた。彼女は内職で竹細工の風車も作る働き者だ。突然、慌しいパトカーのサイレン音が響く。18歳の少女、北沢由岐の岸壁からの投身自殺だった。 そして数日後、今度は新潟市で事件が起きる。予備校講師・武本洋平の刺殺体が海辺で発見されたのだ。捜査員たちは、武本の遺留品の携帯電話に引っ掛かりを感じる。電話番号の登録名が「AKE」「DMY」…と暗号めいたアルファベットだったからだ。不意にその携帯が鳴り出すが、すぐに切れてしまった。 鑑識の所見で、頭部と腹部を刺した凶器は特殊な刃物であることが判った。捜査を進めるうちに、武本の派手な女性関係が明らかになる。捜査本部では、仕事のトラブルと痴情怨恨の両面から捜査を開始する。 遺留品の携帯は相変わらず断続的に鳴り続けていた。アルファベットの登録番号は武本が関わった女性たちだと目星をつけた刑事たちは、まず「AKE」がホステス・相川菊恵であることを突き止める。相川は、武本が女性たちと逢引するためのマンションを持っていたと供述。武本の分不相応な金回りの良さに、風間は不審を感じる。さらに彼女は、赤い車に乗った眼鏡の男が武本のことを付け狙っていたと証言する。 一方、「DMY」は伊達真弓、予備校に通う生徒の母親との見方が濃厚になった。歯科医の夫・敬一との仲が冷え切っている真弓に、武本と不倫関係にあったのではないかと問い詰めるが、彼女はそれを否定する。 その後、捜査員が尾行の目を離した一瞬の隙に、真弓は武本のマンションから飛び降り自殺をしてしまう。真弓の夫・敬一が駆けつけるが、彼こそが、妻の不倫相手の武本を狙っていた「眼鏡の男」だった。 事件は解決するかに思われたが、敬一は容疑を否定する。武本を殺したいと思い、様子を窺っていたのは事実だが、殺害には関与していないという。だが、武本の遺留品の携帯に電話を掛けていたのは敬一だったことが判る。彼は自分を裏切った妻を憎んでおり、警察の目を真弓に向けるための工作であった。 携帯電話、不倫相手、ともに事件解決の糸口は断たれてしまった。しかし、敬一から新たな証言が得られる。武本を狙うもう1人の人物、予備校生・吉岡孝太郎の存在だった。 孝太郎のアパートを訪ねた風間たちは、彼が小木の旅館の仲居・吉