北鎌倉の山間に佇む『くわの』は「密会の宿」と呼ばれ、人目を忍ぶ男女が多く訪れる。ある日、宿泊客の田中一郎・明子夫妻が荷物を残していなくなり、女将・桑野厚子や番頭・久保隆らは首を傾げる。 やがて箱根・芦ノ湖で胸を刺された男の変死体が発見された。『くわの』に宿泊した男性と判明するが、「田中一郎」は偽名で身元不明。夜間に宿を出て、タクシーで鎌倉から箱根へ移動した後に殺害されたものとみられる。北鎌倉署刑事・番場周平、箱根中央署刑事・山村富雄らが『くわの』にも聴きこみに来た。訪れたついでに、署員は数枚の指名手配書を残していく。その中に14年前に京都の旅館で起きた、ある殺人事件の手配書もあった。 同日、松田俊一と井上琴美のカップル、本宮琢磨・小雪夫妻が『くわの』にチェックインした。間もなく宿に、注文していない宅配ピザ80人前の出前が届き、さらに嘘の通報で消防車がかけつける。あまりの騒ぎに、宿泊客らも飛び出してきてパニックに。何者かの嫌がらせだった。厚子はお詫びに、宿泊客を後日あらためて宿へ招待することにした。 数日後、『くわの』の風情に魅せられたと言う女性が1人で宿泊に来た。宿帳に「江田和代」と記す彼女の指の子供っぽい指輪に、厚子はふと目を留める。その日は、俊一と恋人の琴美、本宮琢磨・小雪夫妻も宿を訪れた。琢磨と小雪に気付き、表情を曇らせる俊一。素知らぬ顔をしながら、俊一と琴美に憎悪の視線を向ける小雪。2組の客は、何か関係がある様子だ。そして、宿の外では、何者かが宿の様子を窺っていた。同夜、琴美が誰かに階段から突き落とされて足を挫く。そこに和代が通りかかり、琴美に気付いて愕然とした表情になる。 仲居の古谷勝江と岡野珠子が、ぎっくり腰で働けなくなってしまった。人手不足で困ってしまう厚子。すると和代が、自分を雇ってほしいと申し出る。隆は難色を示すが、厚子は和代を信頼して仕事を頼むことにした。真面目で有能な和代は、周囲の評判も上々。和代はかつて仲居の仕事をしていたらしい。 琴美が店主をつとめる小物屋は、オーナーの俊一が親から受け継いだ店だ。ゆくゆくは2人でやっていきたいというが、身寄りのない琴美は、地元の名士である俊一の親に認めてもらえない。だから2人は人目を気にしながら『くわの』で会っているらしい。そんな琴美を厚子は暖かくもてなす。 数日後、本宮琢磨・小雪夫妻が、また『