旅行作家・茶屋次郎は千曲川のほとり、小諸を訪れる。戸倉上山田温泉「清風園」の女将・君島恵子と会うためだった。恵子はかつて新人編集者として茶屋と関わり、結婚寸前の仲になったものの、生家の老舗旅館を継ぐために別れてしまった女性だった。茶屋に相談に乗ってほしいことがあるという恵子。 戸倉駅に着くと「温泉天国・湯の花本館」の総支配人・亀山哲司が、茶屋に自分の宿を取材するよう取り入ろうとする。そこに「清風園」の従業員・下田久作が迎えに来た。久作は「湯の花本館」への嫌悪を露わにする。3年前に開業したばかりの「湯の花本館」は、いかがわしいサービスの噂や、温泉成分の調査拒否など、地元では悪い評判ばかりだった。 「清風園」では若い芸者・泉香と、年配の芸者・梅若とが、茶屋をもてなす。カラオケスナックへと繰り出す茶屋と泉香ら。恵子も「一段落したら合流する」と約束して見送った。カラオケを楽しんでいると、泉香が携帯電話の呼び出しで「別のお座敷がかかった…」と中座してしまう。夜11時をまわっても恵子は来ない。いぶかりながらも「清風園」に戻ると、部屋には2つのグラスと酒が用意されていた。茶屋が酒を口にすると、急激な睡魔に襲われる。 目覚めると、茶屋の隣には恵子の死体があった。後頭部から布団に広がる血。茶屋は悲鳴を上げて飛び起きる。茶屋にとって状況は極めて不利であり、千曲東署で重要参考人として取り調べを受ける。調べが進み、茶屋の飲んだ冷酒から睡眠薬が検出された。また恵子の死亡推定時刻は午後10時前後と判明し、カラオケスナックにいた茶屋のアリバイも立証される。だが、撲殺に用いた鈍器は特定できず、恵子の足袋の裏には不自然な土汚れが見つかった。 やがて千曲川の河原で、血液と髪のこびりついた石と、女物の草履が発見される。恵子は河原で殺害されたのか?だとすると、死体はどうやって運ばれたのか?捜査は難航し、茶屋への疑いは完全に晴れない。恵子の死もあって落ち込む茶屋を、「週刊ロイヤル」の副編集長・山倉が励ます。茶屋と山倉はしばらく「清風園」に滞在して、事件の顛末を書き上げる決意をした。次第に二人は、恵子の夫・雅彦の妙な冷静さに違和感を抱き始める。 雅彦は典型的なダメ婿だった。恵子と結婚して板長となったが料理の腕はいまいちで、ギャンブルに明け暮れる日々を送っていた。さらに商売敵「湯の花本館」のショーパブ