有数のコレクションを誇る美術館の副館長の菜穂(高畑充希)は、老舗画廊3代目の夫・一輝(風間俊介)との子を身ごもり、東京の喧騒を避け京都に長逗留していた。母・克子(森口瑤子)の計らいだったが、慣れない地での暮らしは、菜穂を異邦人のような心地にさせる。そんなある日に立ち寄った美濃山(松尾貴史)の画廊で、一枚の無名画家の絵に心を打たれる菜穂。それは、知られざる京都画壇の闇に彼女をいざなう出会いとなる。
心をとらわれ話すこともできない画家・樹(SUMIRE)からの菜穂への訴えは、師匠であり京都画壇の大家である照山(松重豊)との因縁を感じさせるものだった。事情通の記者・木戸(マキタスポーツ)は、樹の生い立ちにまつわる危険な噂を語る。一方、経営する画廊が突如倒産の危機にひんした一輝と父・智昭(菅原大吉)は、菜穂の美術館が所蔵するモネの「睡蓮」を穴埋めの売買に利用するため、克子に禁断の接近を試みる。
モネの「睡蓮」をめぐる親族の裏切りに沈む菜穂を奮い立たせたのは、新たなすみかを与えた亡き祖父の知己で書道家の鷹野せん(梶芽衣子)と、樹が描いた新たな絵だった。覚悟のもと、その絵を意外な形でお披露目した菜穂は、樹を縛る照山の邪心と本格的に対峙することに。一方、菜穂との隔絶に心を痛める一輝には、他ならぬ菜穂の父母から、美術館経営に絡む厳しい知らせが。それは菜穂を再びの絶望に陥れかねないもので……。
蚊帳の外で決定された自身の美術館閉館と、照山による狂気的な樹への束縛。菜穂はすべての厳しい現実を振り払うように、身に宿る新たな命、そして樹とその絵を世に出すことへの想いを胸に、周囲の京都人の理解と助力を得て、誰もが驚嘆する大胆な一手に打って出る。それは菜穂と亡き祖父、そして京都との縁にもつながる運命的な策だった。夫、父親、経営者として、菜穂との復縁を焦る一輝に、菜穂は衝撃的な事実を告げる。
菜穂に出生の秘密を打ち明けられた上、一方的に絶縁された一輝。菜穂を取り戻さんとした執着はいつしか狂った対抗心となり、一輝を無謀な策へと駆り立てる。菜穂は京都で生きていくための準備を万事整えて、忌まわしい過去を乗り越え照山の束縛から決別しようとする樹を一途に待つ。欲望と嫉妬にとらわれた照山、一輝、克子、それぞれの結末。そして美への信念を貫く菜穂と樹の2人がたどり着いた、もう一つの真実とは——。