地平のすべてを恐怖させた魔王が打ち倒され、 破滅に怯える必要がなくなった時代。 未来に夢を見ることができるようになった今、 少女は理不尽な暴力の渦中にいた。 素晴らしかった景色はもはやなく、都市も、草花も、 全てが燃えている。 生きながら解体されていく親友の 苦悶の断末魔を聞きながら、少女は逃げ出した。 親しい誰かが死にゆくとき、自分が無力でいること 以上の絶望があるだろうか。 しかし、少女の前にふらりと現れた一人の剣士が、 絶望を、抗うことのできなかった理不尽を、 たった一振りのなまくらで、いともたやすく斬り伏せ てしまった。 「――柳生宗次朗。このオレが、地球最後の柳生だ」 この世界には、あらゆる“力”の頂点を極め、 「最強」の名を戴く者たちがいる。 剣士もまた地平に蠢く無数の、“修羅”の一人。 魔王亡きこの世界で、なおも闘争を求める、 その一人目に過ぎない。 ――そうか、私はこの男が、“強者”が許せないんだ。 幾度も命を救われたにも関わらず、少女に芽生えた 見当違いな感情。 しかし、すべてを失った少女には 自分自身を支えていく理由が必要だった。 ――この男を殺す。この世界には、それができる“強者”がいる。 理不尽な“強者”たちへの憎悪を支えに、 少女は剣士と共に歩き出す。 「最強」を殺す旅路は、そうして始まりを告げた。
辛酸・後悔・恥辱 人間が生む負の感情は呪いと化し日常に潜む 呪いは世に蔓延る禍源であり、最悪の場合、人間を死へと導く そして、呪いは呪いでしか祓えない 驚異的な身体能力を持つ、少年・虎杖悠仁はごく普通の高校生活を送っていたが、 ある日“呪い”に襲われた仲間を救うため、特級呪物“両面宿儺の指”を喰らい、己の魂に呪いを宿してしまう 呪いである“両面宿儺”と肉体を共有することとなった虎杖は、 最強の呪術師である五条 悟の案内で、対呪い専門機関である「東京都立呪術高等専門学校」へと編入することになり…… 呪いを祓うべく呪いとなった少年の後戻りのできない、壮絶な物語が廻りだす―