浪速大学病院第一外科の助教授・財前五郎（唐沢寿明）は、類まれな技術と傲慢な人格を併せ持ち、時期教授の座を狙っている。一方、第一内科助教授・里見脩二（江口洋介）は、学究肌で財前とは対照的な性格である。里見は、医学部長・鵜飼（伊武雅刀）が胃がんと診断した患者の症状に疑問を抱き、財前に診断を頼む。大阪府知事の手術を無事終えた財前は、愛人のケイ子（黒木瞳）のマンションを訪れた。医学部中退のケイ子は、マスコミに注目される財前を「目立ちすぎ」と揶揄する。
財前は、里見に依頼された膵臓がんの患者の手術を一度は降りたが、意欲を抑えきれず、現第一外科教授・東（石坂浩二）の出張中に緊急オペとして執刀してしまう。財前と里見は、互いの医者としての技術を素直に讃えあった。しかし、東に無断で手術をしたことで、舅・又一（西田敏行）になじられた財前は、鵜飼に取り入るため妻・杏子（若村麻由美）と共に画廊へ向かった。
財前が贈った高級な絵に対し、鵜飼医学部教授は微妙な返事をする。財前の舅・又一は、教授選の参謀として地元医師会会長で鵜飼の親友・岩田（曾我廼家文堂）を財前に紹介した。一方、東教授は、財前が行った緊急オペについて教授会で査問すると財前に告げる。ショックを受けた財前は、里見が東に進言したことを知り、里見を呼び出す。
製薬会社の営業・加奈子（木村多江）は、末期のがんで倒れた。里見は財前に手術を頼むが、財前は手術は無意味だと拒否する。東から回ってきた関西経済界の大物・五十嵐（大林丈文）の手術に全力を注ぐことにしたのだ。一方、医学部内での権力構造がそのまま反映される教授婦人会「くれない会」では役員改選が行われていた。鵜飼医学部長の妻・典江（野川由美子）は会長を続投するが、東の妻・政子（高畑淳子）は、副会長を外されてしまう。
財前は、東教授が後継教授にと白羽の矢を立てた石川大学の菊川教授（沢村一樹）と出会い、教授選に向け不安を募らせる。その対抗策として、関西経済界の大物・阪陽建設社長五十嵐からの１億円の寄付を餌に鵜飼医学部長に近づく。また財前の舅・又一ら医師会グループも、教授選考会の委員として有力な教授たちに“実弾攻勢”を始めた。
教授の座を狙う財前の前に、大きな壁が立ち塞がった。謹厳な病理学教授・大河内（品川徹）が、学内の腐敗を見かね、教授選考委員長に就任したのだ。財前は里見に、末期がんの加奈子（木村多江）の手術を条件に、大河内教授への口利きを申し出るが拒否される。大河内は次期教授の選出方法として全国公募を提案する。
全国公募で教授が選出されることになり、緊張の色を高める財前は、自ら申し出て東教授の手術の助手を務めるが、東はその真意を問いただす。教授選考委員会では、財前を含む３人で最終投票が行われることに決まった。そんな折、愛人ケイ子の存在に気付いた杏子は、ケイ子の家に乗り込む。
財前は、教授選の壁である大河内教授を丸め込もうと直訴に及んだが、完全に無視される。財前は、クラブ・アジアンに医局員・佃（片岡孝太郎）、安西（小林正寛）らを集め、結束と意思統一を図る。鵜飼医学部長を中心とする財前派、菊川を擁する東派ともに、最後の票読みに入るも、確実な数が読みきれない。
教授選考会は、財前、菊川の決選投票に持ち越された。舅・又一は現ナマ攻勢、東都大教授・船尾（中原丈雄）はポスト攻勢で、浮動票を操る野坂教授（山下賢治）の懐柔に出た。また、佃、安西は独断という形で金沢に赴き、菊川に辞退を求める。そんな中、財前は、里見が担当した患者・佐々木庸平（田山涼成）の手術を行うことになった。
医局員が菊川に対して敢行した教授選辞退を求める直談判の影響に、東や鵜飼は動揺する。そしてついに教授選の決選投票が行われた。一方、里見が財前に依頼した患者・佐々木は手術嫌さに駄々をこね、妻・よし江（かたせ梨乃）を困らせる。医局員・柳原（伊藤英明）は佐々木のレントゲン写真を見て、肺に影があることに気づき財前に進言するが、財前はとりあわない。
第一外科の教授に就任した財前五郎（唐沢寿明）がポーランドで開かれる国際外科医学会の準備に追われている所、里見脩二（江口洋介）は財前が執刀した患者・佐々木庸平（田口涼成）の再診を求める。財前はそれを無視し、術後肺炎と断定、担当医・柳原（伊藤英明）に抗生物質を処方するよう指示し、機上の人となる。公開手術も公演も成功させた財前がアウシュビッツを見学し、人類の「負の遺産」を実感している頃、庸平の容態はさらに悪化した。
里見は、帰国した財前に、庸平の亡骸が大河内教授（品川徹）の手で病理解剖され、死因は術前から存在したとみられる肺がんの転移による「ガン性リンパ管症のための呼吸不全」と断じられたことを伝える。だが、財前は自分の診断に一切誤りはないと突っぱねる。一方、佐々木の妻・よし江（かたせ梨乃）と息子・庸一（中村俊太）悲しみと悔しさにより財前を訴えることを決意した。二人は偶然、佐枝子（矢田亜希子）がアルバイトをする関口弁護士（上川隆也）に依頼することになった。関口は、直ちに病院に対する証拠保全手続きをとった。
関口弁護士（上川隆也）は、財前五郎（唐沢寿明）の手術にからみ夫を亡くした佐々木よし江（かたせ梨乃）の依頼を受け、浪速大学病院に乗り込んだ。だが周到な準備により思うような証拠が得られない。病院側は、さらに若手ややり手弁護士・国平（及川光博）らの指示で意思、記憶の統一、カルテ書き換えなどを進めた。関口は裁判をあきらめかけたが…。
財前の医療過誤を問う裁判が始まった。第一回証人尋問には大河内教授（品川徹）と第一外科講師・佃（片岡孝太郎）が出廷。大河内の「臨床医の自覚に欠けている」という一撃は、財前側を震撼させた。鵜飼教授（伊武雅刀）は、３回目証人尋問で証言する予定の里見脩二（江口洋介）に、海外でのシンポジウムの話を持ち掛け、出廷できないように画策するが里見の意思は固い。第二回証人尋問では、医務局・柳原（伊藤英明）が、カルテ改ざんを関口弁護士に問い詰められ…。
よし江は国平弁護士の冷静で挑発的な質問に激昂し、第二回証人尋問を終えた。財前と里見の尋問を控えたある日、緊急手術を要す患者が運び込まれ、里見は財前に執刀を頼むが、財前はそれを拒否する。一方、里見の妻・三知代（水野真紀）は里見に証言はやめて欲しいと切り出した。
里見脩二（江口洋介）は国平弁護士（及川光博）の厳しい尋問をかわし医者の倫理を説いた。裁判は鑑定医報告を受け終審することになった。洛北大学の唐木教授（平泉成）は財前五郎（唐沢寿明）に有利な所見を述べた。
よし江（かたせ梨乃）らは国と財前を相手に控訴したが、時はいたずらに過ぎていった。１年後、財前はガンセンターの着工式に立ち会い、浪速大学を去った里見は大河内教授（品川徹）の紹介で患者本位の民間病院で働いていた。関口弁護士（上川隆也）は、最後の頼みと第一外科前教授・東貞蔵（石坂浩二）に証言を請う。
財前は手術中、手元を狂わせ患者が大出血。処理もうまくいかず、術時間は６時間を超えやっと終わった。財前の身体に異変が起きていた。一方関口は、東の紹介で高名な専門医に鑑定を頼めるかに思えたが財前の手回しで失敗。さらに第一審判決直後に浪速大学を辞めた看護師・亀山君子（西田尚美）の証人出廷も頓挫する。万策尽きたかと思われたが…。
法廷に立った東貞蔵（石坂浩二）は、病院長の職を辞す覚悟で医師の倫理を説いたが、東都大・船尾教授（中原丈雄）の学術的な反証に比べ説得力を欠いた。財前五郎（唐沢寿明）や舅の又一（西田敏行）たちは勝利を確信した。だが、財前の気になる咳は、頻度を増していた。次の審理で、関口弁護士（上川隆也）は、インフォームドコンセントを争点としてくるが、財前は「担当医が説明したはず」と責任を柳原（伊藤英明）に転嫁する。
本人尋問で財前に、説明不備の責任を押し付けられた柳原は、傍聴席から「嘘だ」と叫び、退廷させられた。しかし、浪速大病院の看護婦だった亀山君子（西田尚美）は、それを見て証人になることを決意した。最後の証人尋問で君子は新証拠とともに証言に立ち、財前を追い詰めた。 第二審の判決が下された。
財前の手術が東によって始まった。ところが、東はすぐに閉胸した。ガンは、すでに手の施しようがない程進行していた。財前に病状は伏せられたが、脳への転移を疑った財前は、里見脩二（江口洋介）に診察を求めた。数週間後、杏子（若村麻由美）に呼ばれたケイ子（黒木瞳）に財前は無念の気持ちを伝えた。財前の容態が悪化、急を聞いた里見は病床に駆けつける。
