競走馬は、優秀な戦績を残している血統から生まれているかどうかで、その価値は大きく左右される。血統が良ければ、取引額も高く、大きな期待が寄せられる。一方、血統が悪ければ、・・・いうまでもない。競走馬は、血統が圧倒的にものを言う、厳しい“格差社会”で生きている。オグリキャップは、父親の競走成績が優れていなかったため、“二流の血統”と評価されていた。そのため、30年前、岐阜の笠松競馬場でデビューしたとき、活躍を期待する人は、ほとんどいなかった。 しかし、馬主の小栗孝一は、オグリキャップに自分の人生を重ね合わせ、期待を寄せていた。貧しい家庭に生まれ、幼くして叔母の家に養子に出された孝一。「恵まれない環境に負けてたまるか」と、自ら事業を興し、ガスバーナーの製造販売などで成功した。馬主となった孝一は、たとえ血統が良くなくても、きゅう舎を毎日訪ねるなど、家族の一員として馬に愛情を注いだ。馬に託した願いはただひとつ。「“血統”という格差を乗り越えて、走ってほしい」