「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」など、数々のヒット作を手がける細田。一貫してテーマに据えているのが、「人生の肯定」だ。実は細田は、燦々(さんさん)と光り輝く道を歩んできたわけではない。かつて超大作の監督を降板するという人生のどん底を味わった。それでも、あきらめずに挑戦を続け、絶望の底からはい上がってきた。「人生は捨てたもんじゃない」、自らの経験に裏打ちされた信念が細田を突き動かしている。 企画の種も、細田自身が直面したつらい経験から生まれている。かつて親戚と関係が悪かったことから発想した「サマーウォーズ」は、大家族が一致団結して、世界の危機を救う話。そして子どもについて悩んでいたことから、前向きに子どもを育てる母の物語「おおかみこどもの雨と雪」を生んだ。 絶望から生まれた映画は、今、多くの観客にとって希望となっている。 「映画を作るとか、見るとかっていうのは、希望を表明する行為でさ。その時の自分は幸せじゃないかもしれないけど、人生は幸せかもしれないって大声で言っているようなものなんだよ。幸せじゃない人だからこそ、作ったり、言ったりする権利があるってことだよ」