和食ブームの今、世界から注目されている“和牛”。 中でも日本最高峰との呼び声が高い「宮崎牛」の生産者に、神様と呼ばれる男がいる。 鎌田秀利、52歳。 5年に一度開かれる国内最大の品評会「和牛オリンピック」で肉質日本一に選ばれ、松阪牛や米沢牛など全国の肉牛農家から一目置かれる存在だ。 生み出す霜降り肉は通常の5倍もの値が付く。 芸術的な霜降りを生み出すその秘けつは、鎌田の徹底して牛に寄り添う飼育法にある。 一般的に牛の脂肪量は、体内のビタミン量の調節によって左右される。 成長に応じて与えるビタミン量を的確に減らすことで、脂肪を蓄えていくのだ。 しかし一歩間違えれば体調を崩し、食欲は落ち、思ったような霜降りにはならない。 だが鎌田は牛の体調を崩さず、通常の牛農家の半分以下までビタミンを下げ、見事な霜降りに仕上げることができる。 鎌田が貫くのは、「無理に食べさせず、牛に合わせる」という流儀。 鎌田は日に何度も牛を見回っては、一頭ごとの調子に合わせてエサの量や配合を変えていく。 さらに通常は朝夕2回のえさやりを鎌田は4回に小分けし、極力胃に負担をかけさせないよう心がけている。 「決して牛を作っとるわけじゃないからよ。 常に牛と相談して、牛が嫌がることはしない。 やっぱり牛と自分を常に重ねて、同じ立場で物事を考えてやることが私の仕事じゃ。 」