昭和14年。飯田布美枝(7才・菊池和澄)は島根県・大塚の呉服屋の三女である。布美枝は生来の引っ込み思案で、厳格な父・源兵衛(大杉漣)、控えめな母・ミヤコ(古手川祐子)、優しい祖母・登志(野際陽子)、そして兄弟たちという大家族の中で目立たない存在だった。安来の商家に嫁いだ叔母の輝子(有森也実)が体調を崩したという噂に、布美枝は輝子に会いたい一心で、たったひとり遠く離れた安来の町まで走っていく。
安来まで行ったその帰り道、布美枝は妖怪に追いかけられ、見知らぬひとりの少年に助けられる。一方そのころ、大塚の飯田家では、布美枝の姿が見えなくなったことで大騒ぎをしていた。布美枝が無事に戻り、家族はみな胸をなでおろす。生まれ育った町を初めて飛び出して体験した不思議なできごとは、布美枝に新鮮な気持ちをもたらした。