東京湾上に浮かぶ東京零号埋立地。その島と本土をつなぐのは一本の海底トンネルだけ…。誰が何のために建設したのか。国や全ての関係者が沈黙を守っていたその島の所有者が、今日…ついに姿を現わしたのです。
世間は吸血鬼の話でもちきりで——でも彼は、その話題が出るたびになぜか不機嫌になっていました。そう、彼自身忘れていたんです。二人の物語はもっと昔。——私が彼と出会うずっと前から、始まっていたことを——。
それは青天の霹靂でした。あのときの私は彼のことで頭がいっぱいで——でも、あのとき彼女と一緒に帰っていたら…。この日を境に私たちの学園は、吸血鬼たちが踊る、めくるめくロンドの舞台の一つとなったのです…。
世界はこの日ヴァンパイアを知りました。誰もが否応なしに、その存在を信じざるを得なくなったのです。そしてその静かな衝撃が産み出した波紋が、ひっそりと着実に私たちのすぐそばに迫ってきていたのです。
人々から畏怖の念と好奇の視線をもって迎えられたヴァンパイアの女王…。傲慢、自信家、そして時折みせる可憐な儚さ…。でも、私はまだ気付いていませんでした。彼女の本当の怖ろしさにも。本当の、哀しみにも——
あの夜、恋の終わりを知りました。人を好きになるのは幸せなことだと信じていました。それは無邪気でいられた子供時代の終わり。——この頃の私たちは、その黄昏の中で迷い続けていました。いつか来る朝を信じて…。
お前が私の望を適えると約束するなら哀しむのをやめよう。誓いを破れば私はお前を食ってしまうだろう。約束すると、少年は力強く頷いた。孤独な魔物の女王と、彼女に全てを捧げた一人の少年の小さな恋の、お伽噺…。
総集編
学園の傷跡は校舎だけでなく、生徒たちの心の中にも深く…。私もまた、彼との間に大きな距離を感じるようになっていました。彼の中にはずっとあの人の存在が…。そしてこのときすでに、事件は始まっていたのでした…。
永遠とは何か? 少年は魔物の女王に尋ねた—。それらはどれも素晴らしく思えるけれど、同時にとても残酷なこと。永遠とは果てなき大河の流れのようなもの。しがみつくものがなければ、たやすく押し流されてしまう…。
ようやく全てが終わり…平穏な日常が戻ってくる。そんなことを考え始めていたあの頃。—けれど、物語は残酷にページを進め—この時から翌日の朝日を迎えるまでの出来事は、忘れえぬ傷を残すことになるのでした…。
一つだけ彼が思い出せなかった出来事。それが何故なのか、その記憶に眠るものはなんなのか。私も彼女も、まだ知るよしはありませんでした。私たちは、ただ、彼の無事を祈りながら—遠い夜明けを待っていたのです…。
ヴァンパイアの女王が作り上げたもの…。そして守ろうとしているもの…。彼女の秘めたる想いと多くの人々の想いを受けとめ、彼は全ての決着をつけるため戦いの場へと赴き…そして最後の舞台の幕が上がるのでした…。