家政婦・青山春子は、塚原家に住み込みで働くことになった。塚原礼司は年商150億円の「ななふく堂」社長だが、半年前に脳梗塞で倒れてから身体が不自由だという。彼を介護する嫁・弥生を気遣って、離れて暮らす姑・塚原志寿江が家政婦を依頼したのだ。 勤務初日の夕方5時、弥生が不審な電話に応答していることに春子は気付く。「どうして番号がわかったの?」「今夜?」と、弥生は狼狽している。やがて、急な来客があるという弥生の言いつけで、春子は自宅へ帰された。 その夜、塚原礼司が変死体で見つかった。自室のベッドで絞殺され、死亡推定時刻は午後9時半とみられる。第1発見者は弥生だった。遺産目当ての殺害だといって、姑・志寿江と礼司の前妻・平山信子は、弥生を激しく罵る。弥生の主張は、午後8時にレンタルビデオ店へ出掛け、午後10時に帰宅したら礼司の遺体があったというものだ。しかし鎌倉東署の刑事らも、弥生への疑いを晴らさない。 弥生の人柄を信じている春子は、彼女をかばうことにする。実は春子は弥生とは、10年前に面識があった。当時みすぼらしい身なりだった弥生は、幼い男児を連れて中華料理店で無銭飲食をしてしまう。料理店に勤めていた春子は、母子に同情してその場で代金を立替えた。そして弥生は後日、律儀に返済に来てくれたのだ。 志寿江は礼司の死亡届を提出した。その際、弥生と礼司とは、入籍をしていない内縁関係にあったことが明らかになった。遺産と会社を相続するのは前妻・信子の息子・克巳になるため、志寿江は露骨に喜ぶ。 「ななふく堂」専務・日下正幸が、所轄の根岸刑事を訪れた。日下の証言によると、塚原克巳は「ななふく堂」で使い込みをしていたらしい。激怒した礼司が克巳を呼びつけたのが、事件当夜にあたるという。克巳が礼司を殺害した可能性も濃厚である。克巳は詐欺および殺人容疑で任意同行された。しかし使い込みについては認めたものの、殺人について克巳は黙秘を続ける。 事件後も塚原家で働く春子は、弥生の不審な行動にも気付いていた。夜8時になると弥生は1人でどこかへ出掛け、電話では「しばらく会えないの」と誰かと話している。電話の相手は誰なのか、春子だけでなく志寿江や日下も気にしている様子だ。 弥生を憎む姑・志寿江は、ある書類を目にする。それは生前の礼司が書いた『死因贈与契約書』、ある条件を弥生が守れば5000万円の遺産