中卒で丁稚の世界に飛び込み、一流の職人を目指していた16歳の松下の姿が消えた… 横浜市にある家具製作会社「秋山木工」。かつては入社すると男女問わず、住み込みで5年間の修業。スマホを持つことも許されず、タバコも恋愛も禁止、丸刈り姿の丁稚生活だったのだが、ここ数年、新人が次々と辞めてしまうため、自由な生活ができる「外弟子」制度を設けた。変わりゆく秋山木工に、2024年春、入社したのは7人の新入社員…寮に住み込む内弟子を選んだのは、高校を卒業し上京してきた18歳の新人ただ一人だった。 そんな新人たちを指導するのは、1期先輩の内弟子・松下（16）と友添（26）の2人。中学を卒業し、秋山木工の門をたたいた松下にとって、新人たちは全員が「年上の後輩」となり、兄弟子として指導をすることが、松下にとってプレッシャーになるのではないかと周囲は心配していた。この年の始まりに、松下は心身の不調で、しばらくの間、実家に帰っていたからだ。 そんな中、職人の世界に足を踏みいれた7人の新人たちも、時がたつに連れて、少しずつ遅刻や欠勤が目立つようになる…「技能五輪で金メダルを取る」ことを目標に、15歳から秋山木工で働く松下は、大会に向けて地道な自主練習を続けていたのだが、ある日、その姿が寮から消えてしまった… 一流の職人を目指して丁稚奉公の世界で生きる若者たちの夢の行方は… 【語り】野呂佳代