浮世絵町一帯を縄張りとする妖怪一家奴良組は組頭の後継問題を抱えていた。三代目頭領に孫のリクオを据えたいぬらりひょん。だが、当のリクオはそれを拒み続けていたために未だ後継者が確定しないでいた。リクオは青田坊をはじめ、配下の者たち全員を屋敷の広間に集めていた。何か妖怪らしい仕事を任せてもらえるのでは? と胸躍らせる配下の者たち対してリクオが命じたことは、まったく逆のことだった。 この頃リクオが通う学校では、クラスメイトの清継が旧校舎には妖怪が現れると言い出したために、今夜肝試しが行われることになっていた。クラスメイトの目に妖怪たちを触れさせたくないリクオは、配下の者たちを屋敷に留めることで妖怪はいないことをクラスメイトに示したかったのだ。しかし、いざ肝試しが始まってみると旧校舎は妖怪だらけ。奴良組の者ではない妖怪たちがひしめいていた。必死に妖怪を隠そうとするリクオ。なんとか凌いできたものの、最後のチェックポイントである調理室に入った時に、リクオたちにせまる妖怪の影が……。
渦巻く羽根が瞬時にして雑鬼を葬り去る。放たれた先には一人の男が……。 その男は、毒の羽根を操る薬師の妖怪、鴆{ぜん}。薬、毒薬を司る妖怪として奴良組配下の鴆一派を束ねる頭領である。鴆は奴良組三代目を継ぐリクオの晴れ姿を一日も早く目にしたいと手下の妖怪・蛇太夫を従え奴良組へとやってきた。しかし当のリクオは三代目を継ぐ意志はなく、ぬらりひょんからはそれが悩みと告げられる。鴆は直接リクオにその意思を確かめようとするも、いい返事は聞けなかった。失望する鴆に蛇太夫は「跡継ぎがあのように腑抜けならば組の将来はない」と、組から離れることを提言する。 元は薬として備わっていた美しいまでの鴆の羽根。しかしその羽根も元服を境に毒へと変わる。もとより体の弱い鴆は自らの毒によって冒され、今ではその体も自らの毒に蝕まれている。その自分を慈しみ、一派を任せるほどに重用してきた恩のある奴良組を裏切るわけにはいかなかった。 「そう長くは生きられない」と苦悩する鴆に蛇太夫が反旗を翻した。組を見限った蛇太夫は鴆を葬り去り、一派を乗っ取った上で奴良組から離反しようと企てたのだ。弱っている鴆を追い詰めていく蛇太夫。まさにとどめをささんとするその時、一人の男がその前に立ちはだかる。
リクオのクラスに転校してきた花開院(けいかいん)ゆらは、なぜか妖怪に詳しい少女だった。 妖気を感じるという彼女の正体とはいったい……? 清継は自分が出した妖怪の質問にすらすらと答え、さらに注釈をもつけてしまうゆらに高い関心を示すと、突然思いついたかのように「妖怪探索を目的とする清十字(きよじゅうじ)怪奇探偵団を設立する」と言い出した。強引にメンバーにされてしまうリクオにカナ。さらに調子に乗った清継は、探偵団の結成式をリクオの屋敷で行うことを決め、さっそく実行に移すことに。 リクオの屋敷では今日も変わらず奴良組の妖怪たちがうごめき、あまつさえ宴会までをも始めていた。突然のクラスメイトの来訪からなんとかその状況を隠そうとするリクオであったが、ゆらはリクオの屋敷にただならぬ妖気を感じ、屋敷内をくまなく探索し始めてしまう。 ようやくのことで仏間にゆらたちをひと息つかせるリクオであったが、なんとその場に祖父・ぬらりひょんがひょっこり顔を出して……。
夜の帝王と異名をとるホストは仮の姿。その実態はネズミの妖怪である旧鼠は、かつては奴良組傘下の妖怪一家・旧鼠組の頭領であったが、ぬらりひょんによって破門をされていた。 その後奴良組系化猫組からシマを奪い、一番街で好き放題の限りをつくしていた旧鼠はカナ、ゆらをさらうと、今度はリクオに対して2人を返してほしければ、奴良組三代目襲名を放棄するよう求めてきた。もとより三代目を継ぐ意志のないリクオは旧鼠の出した条件を飲もうと回状をまわそうとするが、そんなリクオに旧鼠によって手下を殺され、シマを奪われた化猫組頭領の良太猫が、組が受けた落とし前は自分自身でつけると申し出る。 「負けると分かっていてもやらなきゃならねぇ時がある」と、悲壮な覚悟を決めた良太猫の出入に、リクオもまた“百鬼夜行”を従えて加わることに。旧鼠と対峙する良太猫。 無謀な出入りだと良太猫をあざ笑う旧鼠に、リクオはその宿りし力を示すことになる。
旧鼠を葬り去り、少しずつではあるが真の妖怪の力に目覚めようとしているリクオ。しかしその反動は昼間のリクオの体に少なからずダメージも与えていた。 急な発熱で寝込んでしまったリクオのもとへ、清継、カナ、ゆらたちクラスメイトが見舞いにやってきた。友人たちの急な来訪に驚くリクオ。看病していた氷麗(つらら)は、カナと出くわし大あわて。一方カナは、氷麗が一人で先にリクオを見舞っていたことに動揺を隠せないでいた。――「2人の関係はいったい……」。 元気そうなリクオを見た清継が、清十字怪奇探偵団の新たな活動内容を告げる。その内容は探偵団第一回妖怪合宿と称して梅楽園へ行き、妖怪博士に会いに行くというものだった。そのころ奴良組ではぬらりひょんが、奴良組幹部の中に裏切り者がいると推測し、カラス天狗にその調査を命じていた。 こうした中でやってきた合宿当日。リクオたちが訪れた梅楽園は別の名前を捩眼山(ねじれめやま)といい、道に迷った旅人を襲う妖怪、奴良組幹部の牛鬼が棲まう場所であった――。
迷い込んだ旅人を襲う妖怪・牛鬼が棲まう地、捩眼山(ねじれめやま)。この地に足を踏み入れたリクオたちは、妖気漂う魔の山に、不気味さを感じないではいられなかった。 ただならぬ不気味さに怯えるクラスメートの巻と鳥居。2人の姿を見たリクオは、「やっぱり帰ろう」と清継に促すのだが、清継の方はおかまいなし。「これぞまさしく妖怪ツアー」と、妖怪博士の化原に案内されるままに旅館に入館してしまうのだった。 その頃、捩眼山では牛鬼の手下の妖怪、牛頭丸(ごずまる)、馬頭丸(めずまる)によりリクオを罠にはめるべく策が弄されていた。リクオを守るべく追ってきた青田坊を道に迷わせ、宿にはいったリクオたちを二手に分断。陰陽師ゆらのグループを馬頭丸が襲い、リクオのそばに仕える氷麗(つらら)のグループを牛頭丸が襲う。そして最後は孤立したリクオの首を取るというものだった。 奴良組に対して配下の牛鬼組が反旗を翻す、牛鬼組の叛乱であるのは疑いないものであったが、その意思は組の主である牛鬼の固い決心のもとにあった。 そして夜、叛乱決行の瞬間、“逢魔が時”が訪れる――。
牛頭丸(ごずまる)の策により分断されたリクオたち一行。氷麗(つらら)は1人になったところを牛頭丸に襲われ深手を負ってしまっていた。そこに助けに入るリクオ。しかしそれは牛頭丸の思うつぼでもあった。人間のリクオにはこの攻撃を止めることはできないと、強靭な刃がリクオに襲いかかる――。 そのころゆらは、クラスメイトとともに馬頭丸(めずまる)の襲撃を受けていた。入浴中の弱みに付け込まれたかっこうではあったが、式神を用い馬頭丸に反撃をこころみる。 「なぜ陰陽師がここに――?!」。驚く馬頭丸を前に、さらに新手の妖怪も姿を見せる。 牛頭丸の激しい攻撃を受けていたリクオであったが、牛頭丸はとどめを刺すことができないでいた。焦る牛頭丸が繰り出す必殺の“牛頭 陰魔爪(いんまそう)”でさえも、リクオの刀に止められてしまう。 ――「人間風情がどうして?」 その後、傷を負った氷麗をカナに託したリクオは、ついに牛鬼の待つ牛鬼組の屋敷へと足を踏み入れる。
ついに牛鬼と対峙したリクオ。刃をまみえる中でリクオは牛鬼から悲壮なまでの覚悟を告げられる――。 時は平安時代に遡る。京の都、羅生門近くの市街地に暮らす吉田少将惟房と妻、花子の間にはようやくにしてもうけた一児がいた。名前を梅若丸という。その後、梅若丸はすくすくと成長するのだが、惟房は政治的に失脚。母、花子は暮らしのため新たな夫を迎えることになり、梅若丸は幼くして比叡山へと入山することになった。 やがて剣術、学問に秀で、俊英な若者へと成長する梅若丸であったが、そんな彼のもとに悲報が舞い込む。母が病にふせり危篤だというのだ。急ぎ養生している屋敷のある捩眼山(ねじれめやま)へ向かった梅若丸の目の前には、悲しすぎるまでの母の無残な姿が……。土着の牛鬼によって母は尊き命を落としてしまうのだった。その後、怒りに我を忘れた梅若丸は、世を呪い、人間、妖怪を問わず殺戮の限りを尽くし、やがては自らが牛鬼と呼ばれるまでになっていく。そんなある日、一人の若者が牛鬼の噂を聞きつけ、その討伐に姿を現わす。
リクオと刃を交えた牛鬼は、リクオの力を身をもって見極めていた。そして自身が起した謀反への決意と、それにともなう自身のけじめをリクオに伝える。そして奴良組の屋敷へと戻ったリクオ。祖父が牛鬼を切腹させる意志を示す中、奴良組総会で居並ぶ幹部たちを前にリクオが取った行動とは?