長距離バスの運転手をしながら、女手ひとつで育ち盛りの息子2人を育てる仁美。 ある日、長男・駿のリトルリーグの練習へ、隣に越してきた有馬とその娘のゆかも連れて行くことに。球場に着くと『仁美のこと』を知ったチームの父母たちが「子供の教育上よくない」と仁美と駿にチームの退会を迫る。性同一性障害は病気であると説明するも、聞く耳を持たない父母たち。仁美がいる限り、チームの練習は再開しない、との監督判断にショックを受ける駿。状況が分からない有馬は、仁美の過去を知り、言葉を失う…。
チームから退会を迫られた駿は、翌日自宅に戻らなかった。地方での仕事で家を空けていた仁美は、弟・亮からの連絡で、急遽東京に戻る。産みの親であり元母親の牧子のところだろうと、早朝牧子宅を訪ねる。そこにはやはり駿が…。仁美は安堵と怒りで駿を叱り付け、牧子を責めるが、駿が自分の意思で牧子のもとを訪ねた事を知る…。駿は、野球チームでの問題は、仁美ではなく、牧子の息子となれば解決すると考えていたのだ。
駿も無事小谷家に戻った。子育てには牧子の協力が必要と実感する仁美。そんな中、仁美を「性倒錯者」と誹謗中傷する記事が雑誌に載った。記事を見た同僚たちからの嫌がらせがエスカレートする。堪りかねた仁美は休職を申し出る。落ち込む仁美を見かねた有馬は旧友の人権弁護士・菊池を紹介。男性籍で生活を続けていた仁美は、戸籍の性別を変更する術を菊池に相談することに…。その晩、父・聡史から佐和子が倒れたとの連絡が入る。
仁美の母・佐和子が緊急入院した。駆けつけた仁美は、佐和子が末期がんによる危篤状態であることを知る。性転換以降、仁美を否定し続けた佐和子は、混濁する意識の中「ごめんね」とだけ告げて他界する。職場も失い、母までも失った仁美は『自分らしく生きる』ため、菊池に子供がいても戸籍の性別を換えられる法改正を目指すと訴える。菊池は家庭裁判所への申し立てと同時に、仁美の考えを広く訴えるため、記者会見を開くことに…。
加山慎一郎が仁美を訪ねる。彼もまた性同一性障害に苦しむ一人で、記者会見を見て、救いを求めてやって来たのだった。慎一郎は厳格な祖父・茂一に、自身の病気を告げられずにいた。そんな慎一郎の姿に仁美はかつての自分を重ね、協力を申し出る。一方、仁美自身も法改正を目指して精力的に活動していた。新聞やテレビの取材、街頭でのビラ配り、署名集め…。必死に活動を続ける仁美に対し、次第に周囲の眼差しも変化し始める。
仁美が起こした運動に、当初は反対していた人々も賛同しとうとう法務大臣を動かした。国会内に、性同一性障害に関する勉強会が設けられ、法改正に対する賛成派・反対派双方の意見交換が始まった。仁美はもちろん、菊池弁護士や、既に性適合手術によって女性に戸籍を変えた美羽子(慎一郎)も意見陳述を行い、この問題への理解を求めた。しかし、戸籍制度重視の議員からは、依然として根強い反対意見が聞かれ…。