三代将軍家光が逝去し、その期を狙った由井正雪の謀叛が老中松平伊豆守のために失敗に終った動乱のころ。紀伊五十五万五千石頼宣は、秘かに鉄砲火薬を集め、甲賀忍者に守らせ、虎視耽々と将軍家を狙っていた。だが、これを察した伊豆守も、甲賀者を迎えた紀州家の謀略の狙いを、諸大名が江戸に集まる御代替りの大評定の日と考え、それまでの十日間に紀州の火薬鉄砲を破壊するように伊賀半蔵に命じた。しかし、この伊賀と甲賀の大血戦を前にしても伊賀忍者弓削新三郎は、ふと知りあった甲賀の頭目甚左衛門の娘結香が忘れられず、結香もまた新三郎に恋こがれていた。しかし、忍者の世界で他組との縁組が許されるはずはなかった。そんなうちにも、すでに伊賀と甲賀の和歌山城をめぐる血で並をあらう忍者合戦は始められていた。そしてある日半蔵は、暗闇にまぎれて大手堀を押渡るすて身の攻撃を敢行した。だが、これは甚左衛門にいち早く見破られ、罠におちた伊賀組は、攻めいった大部分が斬られ、半蔵は捕えられた。勝った甚左衛門は、さらに絶対の備えを期して、太鼓櫓の火薬鉄砲を墨館に移した。大評定の日はあと三日後に迫り、新三郎は火薬の有りかを探る窮余の一策として、くノ一下柘植の小猿を城に潜入させた。小猿は見破られ斬られながらも、死力を尽して半蔵に近づき、火薬が墨館に移されたことを告げた。一方新三郎へのつのる恋情を押えきれなくなった結香は、盲目の甲賀忍者大原三右衛門の助力で半蔵に会ってわけを話した。この盲目の忍者は、実は新三郎の実父だったのだ。結香は半蔵から、彼女の心の偽りがないことを証明する守り袋をもらい、新三郎のもとにかけつけた。守り袋には城の見取図と墨館の有りかが刻明に記されていた。新三郎はただちに手勢を引きつれて甲賀組を奇襲した。半蔵も、自ら得意の忍術で手枷の錠を外し、甚左衛門を斬り、爆薬を城に仕掛けた。この死闘で、甲賀組は全滅し、勝った伊賀組もその大半を失った。
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