北海道網走刑務所--激しい暴風雨の夜、脱獄を知らせる不気味なサイレンが鳴り渡った。当直看守は人情家の久保部長であったが、日頃模範囚として信頼している「オホツク不動」と異名のある坂田五郎がその首謀者であるということに、久保は腑に落ちないものを感じた。調べて見ると、兇悪な囚人「生疵の助」こと鎌田与助が、常に自分の脱獄計画を邪魔されるのに業を煮やして反対に彼を抱き込む計画を立て、伊達という囚人に、不動の妻のまさ江が、医師の北原と不義をしているとデマを飛ばさせたので、それを聞いた不動はその事実を確めたい一心で、脱獄の主謀になった事実が明らかになった。久保は、この事件の責任を取って辞職しようと決心していたが、そんな真相を知ると、何とかして不動に妻の潔白を知らせ、不動が重ねて罪を犯すのを防いでやりたいと、捜査隊に参加して、常に先頭に立って、不動たちの後を追った。まさ江は、夫の脱獄を知ると、二人の思い出の炭小屋へ不動が現われるに違いないと思い、一子誠を連れ北原に付き添われてそこへ赴いた。しかし、北原との関係を疑って兇暴になっていた不動は、山の飯場で盗んだ銃で北原を射ったので、まさ江たちは原始林の奥深くまで、逃げ込まなければならなかった。その上誠は急性肺炎を起して危険状態に陥ってしまった。まさ江たちが誠を看病しながら夜営しているところへ追いついた不動は、そこで初めて妻と北原のきれいな友情を確認することが出来た。脱獄以来、付近を荒しまわり、悪事の数々を重ねていた生疵の助を捕えて、よろめきながら不動が捜査本部へ辿り着いたのは、その次の日の美しい夜明けであった。
Name | |
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Senkichi Taniguchi |
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