大正のはじめ、九州の戸畑、祇園祭のさなか、祭にあやをつけたやくざを殺した若衆組頭の池上三次郎の身代りとなって、大島良平が罪をかぶり土地を出た。勿論、このことは二人だけの秘密となっていた。そして十三年の歳月が流れ、名を柏木竜次と改めた良平は、一匹渡世人として日々を送っていたが、金八、虎松という二人組の渡世人の話が気になり戸畑に足を向ける。祇園祭が数日後に迫った戸畑では若衆組に変って直方の炭鉱に力を持つ直政一家と、門司の港を仕切っている門司徳一家の二つのやくざ組織がこの祭りの主導権を握ろうと抗争がくり返されていた。馬力請負業を営むかたわら長年、祭りの総代を勤める三次郎は、数年前病にかかり失明寸前の状態にあった。十三年ぶりの再会を果した二人だが、竜次はやくざな自分がそばにいては、かえって祭りの進行がはかどらぬ事を悟り、大衆食堂“お多福”の娘お竹の好意で二階を借り、陰から三次郎を見守ることにする。暴力で圧力をかける直政に対し、門司徳は善を装い、祭りに使う山笠の修理費の工面に奔走する若衆組頭で三次郎の右腕である新次郎をだき込む事に成功する。これを知った三次郎は、自分の家を担保に金をつくり、門司徳、直政に祭りから手を引くように頼むが、新次郎が門司徳と通じていることを知った直政は、三次郎を叩きにしたうえ人質にする。一方門司徳の賭場に出向いた竜次はそこで壷を振っていた女博徒、火の鳥お仙と知りあうが、三次郎が直政一家の人質になっていることを聞き直政一家に向う。折よく、直政一家にワラジをぬいでいた金八、虎松を使い三次郎を救い出すことに成功する。しかし虎松は直政の用心棒鉄五郎に殺され、三次郎もまた直政一家の追っ手に重傷を負わされ死んでいく。三次郎、虎松の死、そして祭りの実権を握った門司徳の非道な手口に怒り、やくざ稼業から足を洗い竜次との所帯を夢にみたお仙もまた門司徳に刃向かって死んでいった。やくざの手によってすっかりすたれてしまった町にたたずむ竜次は、故郷の平和のため、また祇園祭を若衆組の手で成功させたいと願う気持を秘め、立ちはだかる鉄五郎を血祭にあげるや、単身門司徳一家に乗り込んでいくのであった。
Name | |
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Shigehiro Ozawa |
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