裏店の長屋で筆づくりの内職をして糊口をしのぐ浪人・小谷善左エ門は、 同じ長屋に住む船頭の吉蔵から、一緒に暮らすお峯の様子を見張るように頼まれていた。 元は船宿の女将と抱え船頭だった2人は、密通のうえ駆け落ちして ここで隠れるように暮らし始めたものの、やがてお峯は退屈な日々に虚しさを感じ始める。 気晴らしのため川向こうへと架かる橋を渡ってみたい⋯との思いに駆られるお峯と、 居場所が露見することを危惧して「橋を渡るな」と厳命する吉蔵。 すきま風が吹き始めた2人の様子を、善左エ門はかつての自分と、 自らの手に掛けてしまった妻の姿に重ねあわせて見守っていたのだが⋯⋯。 覚悟を決めたお峯、暴走する吉蔵、心の叫びを上げる善左エ門。 橋の袂で3人の切ない思いが交錯する。
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